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恋の結末
しおりを挟む「何度も言うけどな美玲、鈴木だけはヤメておけ。ほら、あれだ、営業の大沢課長はどうだ?お前のことスゴク褒めてたぞ」
「私のことより、山川さんはどうなんです?自分のことを先に心配してくださいよ」
一瞬その表情が泣きそうになって、それから山川さんは笑いながら答える。
「ほら、俺はこんなだし、恋愛対象として見て貰えないっていうか。好きなコはいるが、望みは薄い」
「山川さんの良さは、私が太鼓判を押しますって。一緒にいてこれほど和む男は貴重ですし、いつか作務衣でも着て民宿経営でも始めてくださいな」
「バーカ、お前はなに適当なことを」
本当はなんとなく分かってて。
山川さんは私のこと、好きなのかなって。
でも、そういう対象には見れないし、かと言ってこの関係も失いたくない。ズルイかもしれないけど、たぶんそれは山川さんも気づいていて。敢えてその部分には触れず、私たちはこうして続けていくのだ…と、勝手にそう思っていたのに。
食後のコーヒーを一口飲んで、山川さんは言う。
「ああ、もうバラすぞ。俺、美玲のことが好きなんだ。その、後輩としてとかじゃなく一人の女性として。出来ればこの関係をもう少し進めたいんだけど、イヤかな?」
思わずカチコーン、と固まってしまう。
そ、それを言っちゃうんだ?
しかも、何故こんなところで?
ふと横を向けば鈴木さんが立っていて、なんとなく理由を察してしまう。
「えっ、鈴木さん、ど、どうしましたか?」
「俺、経理部長に呼び出されたからこのまま行く。美玲、午後から三ツ谷さんのこと頼んだぞ」
そっか、鈴木さんに聞かせたかったんだな。いわゆる『牽制』ってヤツ?そんなの彼には必要ないんですけどね。だって、あの人は私のことなんかなんとも思ってなくて。次の恋愛が始まるまでの、繋ぎのセフレくらいにしか思ってなくて。
だから、そんなの効果無いのに。
山川さんに『返事は待つ』と言われて、混乱したままオフィスへと戻り。かなり遅れて戻った三ツ谷さんを軽く叱りながらも仕事の指示を出そうとしたところ、勝ち誇ったようにこう宣言された。
「美玲さんにご報告です。私、お昼休憩のときに告白して、鈴木さんと付き合うことになりました!」
それは聞きたくなかったな…などと言えるワケもなく、かといってオメデトウとも言えず。興味無さそうなフリして、『へえ、そうなんだ』と答えるのが精一杯。
──ああ、ほらやっぱり、
この恋はこんな結末になってしまうんだ。
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