恋、しちゃおうかな

悔しいなあ

　
　
　覚悟はしていたはずなのに、実際に言われると意外とダメージは大きくて。
　
　そっか、三ツ谷さんを選ぶんだ。
　そして、私を捨てるんだ。
　
　うん、大丈夫だよ。
　恋がひとつ終わるだけ。
　
　失恋したからって、死ぬワケじゃない、
　また次の恋をすればいいだけだから。
　
　うん、大丈夫、大丈夫。
　軽く深呼吸して、私は答える。

「はい、分かりました。でも、このまま仕事仲間なのは変わりませんし、今後も宜しくお願いします」
　
　それを聞き、鈴木さんは嬉しそうに笑った。
　
「うわ、なんだよお前。予想外にすんなり返事しやがったな。ああ、もう緊張した～っ。手汗グッショリだし」
　
　そっか、安心したんだね。私がもっとゴネると思ってた？じゃあ、もう少しゴネようかな…って嘘ですよ。結婚を考えるほどの相手に出会えて、良かったですね。
　
　願わくば、私がその相手になりたかったな。でもそれは叶わないみたいだから、もう諦めます。だって、これは最初から分かっていた結末。大丈夫、この気持ちはいつか薄れて消えるから。
　
　傷ついていないフリをして席を立つと、同時に鈴木さんも立ち上がり。両手をズボンのポケットに突っ込んだまま、顔だけを傾け触れる程度のキスをしてくる。
　
「な、なに？！職場で何するんですかっ」
「…ん。記念のキスのつもり」
　
　ああ、悔しいなあ。
　
　全然まだ好きで。
　こんなにこんなに好きで。
　
　それでも忘れなくちゃいけないなんて。
　
　『大丈夫、大丈夫』
　私は必死でその言葉を繰り返した…。
　
　
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※短いですが、次から鈴木Sideです。本日二話投稿しますので、続けてお読みくださいませ。