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ケジメをつけないか?
しおりを挟む決心すると、実行に移すのは簡単で。
そう、金曜に彼の部屋へ行かなければイイのだ。
まずは1回、試してみる。
特に鈴木さんから連絡は来なかった。そっか、あの人も忙しいんだろうな。三ツ谷さんと会って、イチャイチャしたり。きっともうヤッちゃったよね。だって、鈴木さんだもん。
ふふ。
仕事中なのに、乾いた笑いが出る。
さすがにもう、山川さんと2人きりで食事するのは心苦しいし。鈴木さんとの関係も断つとなると、今まで足りないと思っていた時間が余るほどになってきて。仕事漬けの生活がリセット出来ず、一日中ずっと仕事をしている気分だ。
ここ最近、私の空き時間は平日の夜10時以降。そんなヘンな時間帯に、付き合ってくれる人などいるワケないと思っていたら。
「俺、管理職だから毎晩10時頃に帰宅するんだけど。ひとり飯が寂しくてさ、良かったら食事相手になってくれないかなあ」
営業部の大沢課長がそう言った。
いや、待て待て。これは社交辞令だ。『では日時を決めましょうか』と身を乗り出した途端、『えっ、本気にしちゃったの?』と困らせてしまうパターンのヤツだ。
「じゃあ明後日の金曜とか、どう?美味しいもの奢るよ。日頃、無理させてるしさ」
「…は?」
それは疑問形の返事だったのだが、彼には『ハイ』と聞こえたらしく。待ち合わせ場所や時間が、どんどん決められていく。
おっ、男らしいですね、課長。
などと感心しながら自分のオフィスへと戻り。頭の中を必死で整理していたところ、鈴木さんから『打ち合せをするぞ』と声を掛けられてしまい。しかも、今回は珍しくミーティングルームまで行くのだと。
「え、自席じゃダメなんですか?」
「ああ。暫く三ツ谷さんに留守番して貰おう」
なぜか、彼女は残していくのだと。
話の内容はシステムの仕様変更で、10分も掛からずに終了。
「はい、じゃあもう自席に戻りますね」
「あ、待て美玲」
向かい合って座っていた鈴木さんが、私の隣りへと席を移動する。ハッ、もしや本題はココからなのかも。
「お前にきちんと話しておきたいんだ」
「はい?」
それから彼はわざと視線を逸らし、慎重に言葉を選びながらポツポツと語り出す。だからこちらも視線を合わせまいと、そのネクタイの結び目あたりをジッと見つめることにした。
「う、えっと、あのさ。こんな俺でも最近、結婚を考え出しちゃって。きちんとしなきゃなあ…なんて思ってる。
それで、美玲とはもう、半年くらいになるか。
そっ、そろそろケジメをつけないか?
うう、あの、言ってる意味、分かるか?
俺と、その…」
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