恋、しちゃおうかな

ま、まさかソレのこと？（鈴木Side）

　
　
　※引き続き鈴木Sideです。
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「そっか、なら安心だな。まあ、美玲の方も営業部の大沢課長と最近、頻繁に会ってるみたいだし。お前、今度こそちょっかい出すなよ」
「は？」
　
　思いっきり、間抜けな声が出た。
　
　プロポーズから２週間が経過したというのに、美玲は以前よりも余所余所しくなってしまい。しかも、俺のマンションにも来なくなって。てっきり忙しいからだと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。
　
「で、鈴木の結婚相手って、例のアイツか？」
「アイツ？？」
　
　俺にそんな噂があるのか？
　ったく、なに勝手にデマを飛ばしてるんだよ。
　
　苛立つ気持ちを落ち着かせるため、２杯目のビールを一気に飲み干す。

「三ツ谷と付き合ってるんだろ？お前、ほんとよくアレの相手が出来るな」
「はあん？！付き合ってないけど」
　
　即答しながらも右手を上げて、追加のビールを注文する。
　
「嘘吐け。三ツ谷本人が言ってたぞ。鈴木に告白して、ＯＫ貰ったって。えっ、そうじゃないのか？」
「いやいや。アイツは対象外だろ？それって、いつの話だよ」
　
　山川はキョトンとした顔で答える。
　
「オレが美玲に告白した、あの日だと思うけど。ほら、お前と三ツ谷が一緒に洋食屋に来た時があっただろ」

「あんとき？待てよ、思い出してみるぞ。俺、昼飯のときって結構、『無』の状態になるんだよな。うーん、そういやなんかゴチャゴチャ言ってたかも。
　
　あ、そうそう。三ツ谷に『これからも付き合って下さい』とか言われて、時間の都合がつけば相手するよって答えたはず。えっ、まさかソレのこと？！いや、だって、てっきり昼飯に付き合って欲しいのかと…」
　
　なるほど、合点がいった。そのせいで三ツ谷が妙に馴れ馴れしくなって、俺と個人的に会いたがったり、携帯の電話番号を知りたがったというワケか。

「アイツ、俺と付き合ってるつもりだったのか」
「なんだよそれ。相変わらず罪なコトするなあ～。お前さ、そういうイイ加減なところを直せよ。職場の女のコをこれ以上、潰してくれるな」
　
　みっ、耳が痛い。

　だが、しかし。言い訳をさせて貰うと、今までのは全部オンナの方からグイグイ迫って来て。『一度だけ相手をしてくれたら諦めます』っつうから、仕方なくヤッたんだけど。それでも毎回諦めずに付き纏われて、むしろ俺の方が犠牲者じゃないか？
　
　…と言いたいけど、言わない。
　なんかモテ自慢みたいだし。
　　
「前にシステム部門にいた真衣ちゃんだってさ、ただでさえ激務で疲れていたのに、お前にヤリ逃げされてメンタルぼろぼろになっちゃって。俺、あのコからの電話、深夜の３時とかに相手してたんだぞ？お前が冷たいとかそんな愚痴を延々聞かされて。
　
　インフラ部門にいた高崎さんだってそうだよ。一日中、『鈴木さんが、鈴木さんが』って。ったくお前、女をなんだと思ってんの？結婚したら絶対に奥さんを泣かせるなよな。で、三ツ谷じゃないなら相手はいったい誰なんだ？」
　
　この流れで美玲だとは、さすがの俺でも言えなかった。