恋、しちゃおうかな

ももくり

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ああ、美しいな

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 モジモジしながら鈴木さんの方を見ると、いつの間にか花束を抱えていて。見とれるほどの真っ赤なバラは、そのまま私へと渡される。
 
「きれい…。鈴木さん、有難う」
「ど、どういたしましてッ」
 
 うう、やっぱり鈴木さん、緊張してる。それもどうやらMAXの状態だ。
 
 来るぞ!そろそろアレが来る!
 プロポーズ大明神が、降臨なさるぞおおッ。
 
「鈴木美玲さん、俺と結婚してください」
 
 キターーッ!!…っていうか、
 シンプルーーッ!!
 
 次の言葉を待ってみたものの、どうやらこれ以上は無いらしく。続けて差し出された指輪ケースを持つ彼の手が、微かに震えていて。
 
 …それだけでもう、限界だった。

「え、何、美玲??泣くなよ。おい、もう、なんで泣く??」
「だって、こんなにこんなに思ってもらって。すごく嬉しいんだもん。絶対に最後まで笑っていようって決めたのに、無理っ。涙、出ちゃうもんッ」
 
 周囲の目も気にせず泣きじゃくる私を、鈴木さんは笑いながらそっと抱き締める。
 
「なあ、泣くなよ。俺、お前が泣くと、どうすればいいか分からなくなる。えっと、あのさ、まだ返事貰ってないんだけど、俺の嫁さんになってくれるってことでいいのかな?」
「んぶ、ぐ、うええん。な、なる。お嫁さんになる~~」
 
 右手に私、左手に花束を抱えた鈴木さんはそのまま外へ。既にタクシーを待たせていたようで、後部座席に私だけ乗せて彼は再び店内に入って行く。
 
「美玲、会計してくるし、ちょっと待ってて」
「う、はい」
 
 フットワーク、軽いなあ。
 
 というか、本日の任務を全て完了させてスッキリしたんだろうなあ。…などと冷静に分析していたら、満面の笑みで鈴木さんが戻って来て。隣りに座ったかと思うとすぐに私の左手首を持ち上げ、流れるような動作で薬指に指輪を嵌めてしまう。
 
「どうだ、この指輪。素敵だろう?」
「え、ああ、はい。すごく素敵です」

「米国の格付け機関で『世界No.1のダイヤモンドブランド』と認定された実力派ブランドの指輪なんだぞ。なあなあ、ダイヤモンドの品質を決める4Cって何か知ってるか?」
「えっと。カラットとカラーと、カット…。あと1つは何でしたっけ??」

「クラリティだよ。この4Cが全部高評価で、英国とかベルギー王室にも愛用されてんの。世界で最も美しいダイヤモンド。くう、いいよなあ」
「へえ、言われてみれば、すごくキレイ」
 
 正直言うと外も車内も暗いので、手を翳しても、そんなに輝きは分からない。だけど、私のために一生懸命選んでくれたのかと思うと。その気持ちがこの指輪を、とびきり輝かせているなって。そう思ったら、また泣けた。
 
 ああ、美しいな。
 指輪も、バラも、鈴木さんの瞳も。
 
 そのすべてに、
 優しく包み込まれているようだ…。
 
 
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