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抗う父
しおりを挟むこの状況でも内藤さんは怯まず、むしろ積極的に説得を試みようとする。
「人の生き方は環境に左右されると思うんです。普通の一般家庭に育ち、サラリーマンにでもなっていればこんな俺だって品行方正になれたかもしれません。だけど、残念ながら我が家は工務店を生業にしておりまして。
幼い頃から家にはしょっちゅうイカツイ男たちが出入りし、大学卒業後にはスグ修業だからと建設現場に放り込まれました。そして、そこでは一人前の男になるために女遊びをしまくれと教わったのです。彼らが言うには、それが当たり前なのだと。
いずれ父の跡を継ぐ身としては、舐められてはいけない、現場の彼らにどうにかして気に入られようとして抗うこともなく“当たり前”を受け入れ、流されてしまった。弱いと言えば弱かったのかもしれません。
過去は変えられませんし、後悔もしていません。多くの女性と付き合えば男の価値が上がる…そんなバカな考えも抱いていませんが、ただ、これだけは言えます。
俺は確実に何かを手に入れているはずなんです。
だって今の自分がそんなに嫌いじゃないから。バカな自分を愛おしいと思うし、そんな自分を許してくれる香奈さんはもっと愛おしいと思う。
バカなりに大事なものが何かは理解しています。だからもう、他の女性には目もくれません。一生、香奈さんだけを見つめて生きていくつもりです。だからこの交際を許してくださいませんか?」
「いいわ!」
勿論、そう答えたのは母である。それに対して『ぐぬぬ』と低く唸った父は、間髪入れずに反論してきた。
「ダ、ダメだ!今後は気を付けると言っても、もしかして過去の行ないのせいで誰かから恨みを買っていて、香奈がその誰かから攻撃を受けるかもしれないじゃないか!…いや、それだけじゃない。あちこちに隠し子がいるかもしれん。香奈、やっぱりこの男は諦めろ、いいな?!」
「やだなあ~、そんなの考え過ぎだよお父さん」
窘める私を無視して、父の勢いは更に加速する。
「そうじゃなかったとしても、そんなに大勢の女と付き合ってきた男だから…そうだな、例えばこんなことも有るかもしれないぞ?休日、香奈がその男と2人きりで歩いていたとする。するとあちこちに昔の女がいてお前を心の中で蔑むんだ。『おほほ、その男は私の御手付きよ~。お古で良ければ譲ってあげるわ~』…って。
うわああ、そんなの父さん許せないよ!
香奈には一点の曇りも無いというのに、そいつのせいで後ろ指をさされて笑われるんだぞ?!香奈だってそんなの嫌だろう?だから、もっと誠実で真面目な青年を探しなさいッ」
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