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美香編

まだまだ続くよ、柴崎さんの攻撃

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「むーっ、んーっ」
 
 ドンドンとその胸板を叩くが、所詮は女の細腕。唇を離すどころか余計に深く舌を挿入されてしまう。 
 
「はわわ…」
 
 間抜けな声を出しているのは荒木田だ。おいこら、止めてくれ!…じゃなくて、お願いどうにかしてコレを止めてちょうだいッ。やだやだ、私の体は望月のものなのに。この唇はもちろん、髪の1本まで全部全部…。
 
 チュパッという卑猥な音を立ててようやく唇が離され、それと同時に私は激しく手の甲で自分の唇を拭う。
 
「おえっ、やだもう気持ち悪い!嫌がってる女に無理矢理キスするとか最低です。それに柴崎さんのキスって乱暴なだけで下手!」
「はあッ?!なんてことを言いやがる!じゃあ何か?お前の婚約者がこの俺よりも上手いとでも言うのかよッ?!」
 
 拒絶するつもりが、逆にこれで私は柴崎さんの闘争心に本気で火を点けてしまったようだ。『なんだかスゴイものを見せられちゃいました。純な私には目の毒ですよ~、お二人さん』とかなんとかブツクサ呟き続ける荒木田を無視して宴席に戻ると、柴崎さんが強引に隣席へと移動して来て。気のいい40歳バツイチでオスとしての生命力が弱そうな滝さんは遠くに追いやられてしまった。
 
「えっ、じゃあ私、滝さんから結婚を失敗した原因と対策について話を伺っていた途中だったので、滝さんの隣りに移動しますね!」
 
 滝さんと元奥様は、我らと同じタイプの組み合わせだったので参考になると思ったのだ。気が強い年上女と利口で上手く立ち回る年下男。なぜ、彼らは結婚10年という節目で別れるという選択をしてしまったのか?!
 
 すっくと立ち上がろうとしたその時、左手首を強く引っ張られてよろめく。はい、良い子の皆さんは何が起きたか分かりますよね?じゃあ、一斉に答えてみましょ~!
 
 >っせえの、柴崎さんが引き留めた~!
 
 正解!!さすがね~、スゴイわ~。…とか脳内で遊んでる場合じゃない。ああ、面倒臭いなあ。どうして今日はこんなに絡んでくるのだろうか。
 
「待てよ、朝日」
「待ちませんよ、柴崎さん」
 
 痛いッ!女相手にその力加減はおかしくない?手首が千切れそうなんですけどッ。
 
「とにかく座れって!」
 
 賑やかな宴席のお陰で柴崎さんの声はそれほど目立たなかったが、それでも数名の人が反応し、こちらをチラチラ見ている。
 
 
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