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荒木田編
勝手に体が…。
しおりを挟む「いやあ、最初はこんなお嬢さんに仕事頼んで大丈夫かなと思ったんだけどさ。こちらの要望をすぐに把握してくれるし、データ作成も正確、誤字脱字も無いし期限内に必ず仕上げてくれる。ウチのアシスタントの中じゃ多分、一番優秀だ。朝日さんもそう言って褒めてたよ。なあ柴崎!」
「え、ああ、はい…」
朝日さんの名を出したりするから、柴崎さんの表情が暗くなっちゃったじゃないですか。って、しょうがないか、滝さんは知らないんだもんね。
トイレの前で起きたあの事件を。
あれほど熱烈に迫ったのに、約束ブッチされるってどんな気分ですかあ?プ、プププ。なんだか愉快になってきたぞ。
今まで女を軽く見て適当に扱ってきた罰が当たったんだよーだ!!よし、これはもっと虐めてやらねばッ。
「柴崎さんってもしかして見てないんですか?朝日さんの婚約者が宴会の後、迎えに来てて。あの朝日さんがまるで恋する乙女って感じで頬染めてたんですけど」
「ふうん、そっか。そうなんだ。じゃあ婚約者に邪魔されてココに来たくても来れなかったというワケか…」
「いえ、そういうワケじゃないと思いますけど。私の話、ちゃんと聞いてました?朝日さんは婚約者にベタ惚れだったんですってば」
「お前、もしかして俺に気があるのか?そっか、だから朝日のことを諦めさせようと…」
ち、ちげーし!!
どうしてそうなるんだっつうのッ。
助けて滝さん、いや、ダメだ。そういえばこの人も私が柴崎さんのことを好きだと勘違いしているんだった。
「そう、そうなんだよ、柴崎!!もう朝日さんのことは諦めろ。彼女がもうお前を選ぶことは無いんだから、新しい恋に目を向けるんだ!!で、いきなり話は変わるんだけど、俺、最近、荒木田さん…いや千波と付き合い始めたんだよ」
「えっ、滝さんと荒木田が?!」
何を言い出すの、滝さん?!驚き過ぎて目玉が落っこちそうな私の耳元で、滝さんはコショコショと囁いた。
>柴崎はとにかく人の女を欲しがるから。
>俺と付き合ってるってことにしとけば、
>きっとコイツ荒木田さんに食い付くぞ。
>後はキミの頑張り次第だからね!
滝さんの吐息が喋るたびに強弱をつけて私の耳を擽り、背中をゾクッとさせる。…だってほら、耳も立派な性感帯だと言うじゃない?こんなのちょっとした拷問だよお。それに滝さんったら凄くイイ匂いがする。香水?いや、違うな。オス特有のフェロモン的な何かかもしれない。
ああ…ん。も…ダメ…。
アルコールまで急に回り出したよおお。
もう勝手に体が動き出してるよおおお。
「えッ、あっ、荒木田…さ…ん??」
気付いた時にはもう遅い。私は滝さんの首に両腕を回し、思いっきり濃厚なキスをしていた。
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