『お告げの西田』の色診断〜地味女子と元不良男子と、時々トラブルの日々

黒辺あゆみ

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第二話 噂の「ハルカ」

43 奮闘する、近藤が

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というわけで。
 開店から近藤がひたすら氷を削って由紀がひたすらシロップをかける、というエンドレス作業がずっと続いていた。シロップが無くなり次第終了なのだが、氷を削り続ける近藤の腕力に限界が来るため、ちょいちょい休憩を挟むことにしている。

「クッソ、明日ぜってぇ腕上がらねぇぞ」
「ご愁傷様」

テーブルに「削り役ただいま休憩中」という急遽作った札を下げてから、げっそりとして愚痴っている近藤に由紀が手を合わせて拝んでいると。

「お~、やってんなぁ」
「似合わねぇなぁ、かき氷が!」
「ぎゃははは!」

賑々しく顔を見せたのは、近藤のツーリング仲間だった。

 キュピン!

 その三人を、由紀と近藤は猛獣のような目で捉えたのは同時だった。周りにはかき氷削り再開を待っているお客さんたちがいる。

「氷削りの交代要員が到着しましたぁ、営業再開しまぁす!」
「よろしくな」
「なんでだよ!?」

由紀と近藤のコンビプレーと、わっと囲む客に囚われた三人組はもう逃げられない。そうして近藤が腕を休めている間、三人でひぃひぃと文句を言いながらも削ってくれた。持つべきものは友である。
 三人の腕力分だけ休めた近藤の顔色がかなり回復出来て、代わりに三人がげっそりして逃げ去って行った。

「結局かき氷を食べないまま、本当に手伝いだけをして去って行った彼らの雄姿は忘れないだろう……」
「本のモノローグみたいな言い方やめてやれ、まるでアイツらが死んだみたいだろうが」

そんな風で賑やかな騒動からしばらくした頃。

「「「やっほ~!」」」

今度は由紀の田んぼ仲間がやってきた。

「西田さん、浴衣だぁ」
「珍しいじゃん」
「制服とパジャマしか着ない女だと思っていたわ」

柴田、下田、中田がそれぞれに由紀の格好を評する。そう、実は由紀は金魚柄の浴衣を着ていた。

「これね、由梨枝さんに無理矢理着せられた」
「「「だろうね」」」

由紀が浴衣の理由をバラすと、三人から納得の頷きを貰った。背後で近藤が「ブッハ」と吹き出すのが聞こえたが、まるっと無視だ。その近藤も祖父から借りた浴衣姿で、加えてあちらは髪を纏めるために頭にタオルを巻いている。

「皆なに味にする? シロップはレモンがもうすぐ無くなりそうだけど」
「じゃあ、私レモンにする」
「いちごで」
「こっちもレモン」

それぞれから注文を受けて近藤がガリガリし始めると、「筋肉ヤバッ」と三人でヒソヒソしているのが聞こえる。浴衣の袖が邪魔になってまくり上げているからだろう。三人から腕に注目されている近藤は、かなり居心地が悪そうだけれど、由紀には助けてあげられない。

「……ん?」

すると一人、中田が不審そうな目を近藤に向けていた。

 ――なんだろ、近藤はちょっとヤクザ味があるよねって?

 確かに由紀も近藤は浴衣姿だと不良というよりもヤクザ味があるとは思う。目力があり過ぎるからだろう、たぶん。けれどそこは当人も気にしているので、スルーしてあげてほしい。
 まあそれはそうとして。
 田んぼ三人組はこれから盆踊りにちょっとだけ参加しに行くらしく、「じゃ~ね~」と向かった。
 かき氷の方は、先程三人に売った分でレモンシロップが売り切れて、完売までの道のりが見えてきた。そしてしばらくして――

「完売~!」

無事に全てのシロップを使い切って、かき氷は売り切れとなった。周囲で特に近藤の奮闘を見守っていた喫茶店常連の人々が、「よくやった!」と温かい拍手で称えてくれる。その様子はまるでマラソンランナーがゴールをした直後のようで、ぐったりしている近藤の姿もまさにソレである。
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