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迷子の竜、お城に行く
お城に行こう!
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Sideポチ
コニーの両親を始めとした村人たちに見送られ、一行は城へと向かった。優雅に空を飛ぶ青い竜を、村人たちは羨ましそうに眺めていた。
しかしポチは城までの空の道のりを、単独飛行をすることになった。何事も練習だそうだ。
「ポチがんばれー!」
青い竜の背中で、コニーが応援してくれている。
しかし、風に巻かれてくるくると回っているポチは、正直コニーの声援など聞こえてはいなかった。
「目が回るうぅ……」
特訓の成果で高い場所を飛べるようにはなったのだが、いかんせん風に遊ばれてしまう。はっきりいって風になめられていると言ってもいいだろう。
「竜としての威厳が足りないのではないか?」
青い竜はそんなポチの飛びっぷりを見て、かわいそうな子を見るような目をする。
「吐きそうなのである……」
回り過ぎて風に酔ってしまったポチなのであった。
そんな調子だったので、一行がお城にたどり着いたときには、ポチはべっちゃりと地面につぶれてしまった。
「死ぬ……」
ポチはこんなにたくさん飛んだのは初めてであるが、お城まで飛びきったのだ。
「やればできるではないか」
青い竜がポチを褒めてくれているが、今は正直褒め言葉より水がほしいポチであった。
「ポチすごーい! あのくるくる回るのかっこよかったよ!」
ポチが目を回していたのを知ってか知らずか、コニーがそんなことを言ってくるが、それにも抗議する元気がない。
「ほらポチ、水だよ」
そんなとき、空気を読んでくれるのはいつだってピートである。ポチの言葉が分からずとも、気持ちを察してくれるありがたい存在である。
「あ、そうだ。ポチおやつ食べる?」
コニーが自分の背中のリュックから、りんごのパイを出した。コニーたちは青い竜の背中で食べたらしい。
運動をしてお腹が空いたポチは、コニーにもらったりんごのパイを有難く食べた。そんなコニーとポチの様子を、五メートル離れたところで王子様が見ていた。
ちなみに、対人恐怖症の王子様は、コニーたちと一緒に青い竜の背中に乗ってきた。巨大な竜の背中とはいえ、五メートルの距離をとるのは無理である。それゆえに近距離での長時間の他人との接触に疲れた王子様も、ポチと似たり寄ったりな状態であった。
こうして、一名と一匹がグロッキー気味な状況で、一同は城に到着したのであった。
Sideコニー
お城は広かった。
都のおじさんの家に行ったときも、そのお屋敷の広さにビックリしたが、お城はそのおじさんの家がいくつはいるのか数え切れない大きさであった。
青い竜で着陸したのはお城の裏手であったが、せっかくなので正面の門から入城しようということになり、わざわざ正面門まで回ってきた。いわばお城を半周ぐるっと回ったわけであり、非常に遠かった。
コニーはものめずらしさにお城の門の辺りをきょろきょろと眺めていた。
「大きいねぇ、ポチ」
コニーはおやつを食べて復活したポチに話しかける。
「建物内を移動するだけで日が暮れそうである」
ポチもお城の広さに驚いたのか、あんぐりと口をあけている。
そんな一行の様子を、門番の二人が興味深そうに観察している。この時対人恐怖所の王子様は、もうすぐ死にそうな顔をしていたので、既にお城に入っていた。
コニーは城の敷地内に何かを見つけた。
「にーちゃん、あそこに何かある」
コニーがたたたっと走り寄った先には、厳ついひげを生やしたおじさんの銅像があった。
「おひげふさふさー、あたまぴかぴかー」
コニーとポチが、銅像を台座の下から眺めている。
「初代国王の銅像だそうだよ」
ピートが門番たちから聞いたらしい情報を教えてくれた。
「このぴかぴかが、いちばんはじめの王様だって」
「光り輝いているのである、頭が」
微妙に失礼なコニーとポチである。
この時コニーは台座の上に、ポチは銅像の頭によじ登っていた。子供のすることだから、と門番たちも細かいことを言わずにいた。
それがいけなかったのだ。
「握手握手」
手を差し出したポーズの初代国王の銅像の手を、コニーが握った。
バキッ!
小気味良い音がした。
門番たちが音に気付いて振り返った時には、コニーの手には肩からもげた銅像の腕が握られていた。
「な、なっ……!」
門番たちが声にならない声を上げる。
「……」
「……」
コニーとポチはちょっと考えた。
そしてピートを振り返る。
「にーちゃん、銅像が壊れてた」
「うむ、壊れていたのだ」
コニーはもげた銅像の腕をぶんぶん振り回す。それを見た門番たちの表情は青くなった。
ピートも、ちょっと考えた。
「すみません、壊れていたみたいです」
さわやか笑顔で門番たちに報告する。
「今のは、あの少年が壊した……」
「「「壊れていました」」」
当然、こんな言い訳が通るわけもなく。コニーに、銅像接近禁止令が出された。
コニーの両親を始めとした村人たちに見送られ、一行は城へと向かった。優雅に空を飛ぶ青い竜を、村人たちは羨ましそうに眺めていた。
しかしポチは城までの空の道のりを、単独飛行をすることになった。何事も練習だそうだ。
「ポチがんばれー!」
青い竜の背中で、コニーが応援してくれている。
しかし、風に巻かれてくるくると回っているポチは、正直コニーの声援など聞こえてはいなかった。
「目が回るうぅ……」
特訓の成果で高い場所を飛べるようにはなったのだが、いかんせん風に遊ばれてしまう。はっきりいって風になめられていると言ってもいいだろう。
「竜としての威厳が足りないのではないか?」
青い竜はそんなポチの飛びっぷりを見て、かわいそうな子を見るような目をする。
「吐きそうなのである……」
回り過ぎて風に酔ってしまったポチなのであった。
そんな調子だったので、一行がお城にたどり着いたときには、ポチはべっちゃりと地面につぶれてしまった。
「死ぬ……」
ポチはこんなにたくさん飛んだのは初めてであるが、お城まで飛びきったのだ。
「やればできるではないか」
青い竜がポチを褒めてくれているが、今は正直褒め言葉より水がほしいポチであった。
「ポチすごーい! あのくるくる回るのかっこよかったよ!」
ポチが目を回していたのを知ってか知らずか、コニーがそんなことを言ってくるが、それにも抗議する元気がない。
「ほらポチ、水だよ」
そんなとき、空気を読んでくれるのはいつだってピートである。ポチの言葉が分からずとも、気持ちを察してくれるありがたい存在である。
「あ、そうだ。ポチおやつ食べる?」
コニーが自分の背中のリュックから、りんごのパイを出した。コニーたちは青い竜の背中で食べたらしい。
運動をしてお腹が空いたポチは、コニーにもらったりんごのパイを有難く食べた。そんなコニーとポチの様子を、五メートル離れたところで王子様が見ていた。
ちなみに、対人恐怖症の王子様は、コニーたちと一緒に青い竜の背中に乗ってきた。巨大な竜の背中とはいえ、五メートルの距離をとるのは無理である。それゆえに近距離での長時間の他人との接触に疲れた王子様も、ポチと似たり寄ったりな状態であった。
こうして、一名と一匹がグロッキー気味な状況で、一同は城に到着したのであった。
Sideコニー
お城は広かった。
都のおじさんの家に行ったときも、そのお屋敷の広さにビックリしたが、お城はそのおじさんの家がいくつはいるのか数え切れない大きさであった。
青い竜で着陸したのはお城の裏手であったが、せっかくなので正面の門から入城しようということになり、わざわざ正面門まで回ってきた。いわばお城を半周ぐるっと回ったわけであり、非常に遠かった。
コニーはものめずらしさにお城の門の辺りをきょろきょろと眺めていた。
「大きいねぇ、ポチ」
コニーはおやつを食べて復活したポチに話しかける。
「建物内を移動するだけで日が暮れそうである」
ポチもお城の広さに驚いたのか、あんぐりと口をあけている。
そんな一行の様子を、門番の二人が興味深そうに観察している。この時対人恐怖所の王子様は、もうすぐ死にそうな顔をしていたので、既にお城に入っていた。
コニーは城の敷地内に何かを見つけた。
「にーちゃん、あそこに何かある」
コニーがたたたっと走り寄った先には、厳ついひげを生やしたおじさんの銅像があった。
「おひげふさふさー、あたまぴかぴかー」
コニーとポチが、銅像を台座の下から眺めている。
「初代国王の銅像だそうだよ」
ピートが門番たちから聞いたらしい情報を教えてくれた。
「このぴかぴかが、いちばんはじめの王様だって」
「光り輝いているのである、頭が」
微妙に失礼なコニーとポチである。
この時コニーは台座の上に、ポチは銅像の頭によじ登っていた。子供のすることだから、と門番たちも細かいことを言わずにいた。
それがいけなかったのだ。
「握手握手」
手を差し出したポーズの初代国王の銅像の手を、コニーが握った。
バキッ!
小気味良い音がした。
門番たちが音に気付いて振り返った時には、コニーの手には肩からもげた銅像の腕が握られていた。
「な、なっ……!」
門番たちが声にならない声を上げる。
「……」
「……」
コニーとポチはちょっと考えた。
そしてピートを振り返る。
「にーちゃん、銅像が壊れてた」
「うむ、壊れていたのだ」
コニーはもげた銅像の腕をぶんぶん振り回す。それを見た門番たちの表情は青くなった。
ピートも、ちょっと考えた。
「すみません、壊れていたみたいです」
さわやか笑顔で門番たちに報告する。
「今のは、あの少年が壊した……」
「「「壊れていました」」」
当然、こんな言い訳が通るわけもなく。コニーに、銅像接近禁止令が出された。
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