チート奴隷使いですが文句ありますか

無謀突撃娘

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騎士団の悪夢

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~牙龍騎士団陣営~

「ひいっ、こんな強力なモンスターとなど戦えない!」

「ぎゃぁ~~!」

「こんなのは嫌だ~!」

騎士団は多数の強力な魔物を相手にほぼ壊滅状態となっていた。自分はナルダーに派遣された騎士団の一人であるミゼルと言う者だ、最初は簡単にこなせると思われた依頼に味方だけが負傷者や戦死者を続出させる今の状況になる少し前から話し出そう。

ナルダーに派遣された騎士全員が中央騎士学校などを卒業し貴族などから未来を担う若者として多大な期待を背負っていた。日々パーティなどに出席し人々の覚えが良くなるように、立派となるために高価な装飾品で身を揃えていた。ベルーナの貴族や家族からも将来は元帥となれるかもしれないと言葉が出るほどだった。

だが、その評判に影が差し込む事になった理由、それは傭兵らである。金で依頼を受けている彼らは騎士にとって絶対に相容れぬ存在であり戦果を横取りする敵でしかない。自分ら騎士より傭兵のほうが高い評価を受けているのが気に入らず何度と無く対立していた。

ナルダーにとても優れた傭兵がいると聞いてそいつを呼び出し実力を確かめようとしたが、

「白狼と騎士団を交換?ハッ、夢物語は夢の中で言っておれ、お前達騎士団には失望しか存在しない。見栄えだけしか能が無く無駄に金と物資を消費するお前達は害悪以外表現できない」

傭兵ギルド長から痛烈に非難された。

「お前らの無能さは最悪としか言いようが無い、騎士が無能だから傭兵が活躍していると言う現実すら身勝手に捻じ曲げ賄賂を取る事に熱中し派閥で自己防衛して何の罪も無い人々を苦しめるお前達などこの世から消えてもらうほうが民の幸せだ。それなのに傭兵の方が悪いなどとほざくその口はよほど手馴れているのだな。それほどに無責任な答えなど誰も必要としてはいない」

相手から非難されて派遣された貴族は激怒しこの都市に派遣してその評価を改めさせると断言して騎士団の派遣を決定した。

3000人もの大部隊を派遣させるとなればその準備も大変だった、装備や物資などなど大量に必要でありその準備を半月ほどで終えて出発の日となる。この辺り近辺のモンスターとは戦闘をこなしていてこれだけの人数ならばあっと言う間にモンスターを殲滅できるとほぼ全員が確信していた。

ちなみに自分には恋人がいた、素朴な人柄で目立つような姿ではないが性格が良いのでこの派遣が終わったら結婚を申し込もうと考えていたのだ。

都市に向かう最中モンスターの襲撃は無く気楽な時間となる。

「ナルダーに着いたら美味い飯と酒だな」

「いや、女だ」

「それよりもベッドで寝たい」

全員が気楽でありそれだけ平和なのだと思う、それなのに各地では正規軍や騎士団が敗走を重ねていると言う話は信じられなかった。もし、自分が指揮を執れば必ず勝利してみせる、そんな考えを持つ者も少なからず存在していた。

ナルダーに到着し休息の時間を与えられる、数日後に依頼を受けて魔物の排除が仕事として正式に与えられる。この近辺では傭兵が殆どの戦力であるが、

「我々が来たからには今後傭兵の仕事は無い、全ての依頼を受け達成しようぞ」

隊長の宣言、それが後になってどのような意味を持つかなど考えもしなかった。それだけ自惚れていたのだ。

白狼などが引き受けていた依頼を全て横取りし依頼場所までむかう、全員にあったのは仕事の後どのように楽しむかだけだった。色々な考えを浮かべる他の仲間とは違い恋人に何を贈ろうかと考えていた自分は出来るだけ戦果を稼ぎ帰る事だけしかなかった。

そして魔物を発見する、数は400ほど。

「全員抜刀による突撃~!」

全員の頭が一色に染まり戦闘を開始する。むこうはこちらの10分の1程度、精鋭である自分らとこの数ならばすぐさま殲滅できると確信していたが、

「グギャァ~!」「ガウゥ~!」「ガルルル~!」

突然の咆哮にほぼ全員が身動きが出来なくなる、そして、蹂躙が始まる。

ある者はその大きな口の餌食となりある者は大きな爪で貫かれある者は体当たりを食らい吹き飛ばされる。モンスターはまるで子供の玩具のように生きた存在を皆殺しにしていく。始めは戦意が存在したがそんなことなど味方が一方的に殺されていく姿を見てすぐさま恐怖に変わってしまった。それだけで頭の中が塗りつぶされていく。隊長らは指揮を出すが損害の酷さとすぐさま死人と変わる仲間らを見てまともな言葉が出てこない。逃げ出したいが足が震えて何も出来ない、それどころか股が濡れている、失禁したのだ。だが、それすらも目の前の恐怖と比べれば気にもならない。次々と仲間が餌食となりもはや指揮系統は完全に崩壊してしまい気がついた時には逃げ出していた。

仲間と支えあいながら全力で逃げ出す、もはや装備など重くて邪魔なだけなので投げ捨てて一目散に戦闘から離脱した。助かる余地の無い味方を見捨てて逃げ出した。これではただの敗残兵だ、誇りある騎士とはかけ離れているがこれが現実だった。

「ハァ・・・ハァ・・・」

後方の安全地帯まで下がり休憩を取る。半分以上が体を血で汚していた。味方からの自分からの血である。この部隊にはあまり治癒術を使える者がいないため応急処置を施すが、

「痛ぇ、痛ぇよ!」「死にたくない!」「血が止まらない!」

苦痛に喘ぐ者、死から逃れようとする者、何も言わない者など全員が絶望に染まりきっている。

自分は逃げ出した仲間の人数確認をしているが大半が鎧などを捨てて逃げ出していた、無事な者もそれなりにいるがもはや騎士団は壊滅状態だといっても良い。

「隊長!報告します」

「・・・どうした」

隊長らは目の前の現実が信じられないと言う顔をしているがそれでも報告は報告だ。

「全体の3分の1が死亡であり3分の1が重傷軽傷者多数、残りが無事な状態です」

想像を絶する大被害に全員が虚ろな顔をしている。半日も経たない内に部隊が戦闘不能となってしまったのだ、そんな現実など認めるほうが不思議だろう。もはや依頼は達成できない事となりナルダーに戻るしかなかった。宿屋に戻り食事をするが全員が絶望しきっていてまともに食事など出来なかった。ベッドで眠る時でさえ恐怖のために震えたほどだ。翌日隊長らに呼び出される。

「お前は全依頼を達成したと報告しろ、自分らは次の戦いのための準備を整える」

「は?」

意味が分からなかった、あれだけ大惨敗したのに全ての依頼を達成したと言う事など不可能だ、だけど隊長らはそれだけを言って部屋から追い出す。ナルダー傭兵ギルドに仲間ら数人と向かう。

「報告を待っていましたよ」

ギルド職員全員が険悪な表情をしていた。

「依頼はどうなりましたか?」

ギルド職員が聞いてくる。

「ハッ、全依頼を問題なく片付けました。次の戦いの準備をするため資金と物資の提供をお願いします」

「そう・・・、ですか、ご苦労様です」

完全に嘘の報告に疑問が無かったわけではないが栄光と誇りある騎士団がたった一戦で何も出来ないまま壊滅状態になったなど言える訳が無い。もはやこの都市にはいられないのだ、何とかして逃げ出さなくてはまたモンスターと戦わされることになるだろう、そうすれば本当に全滅だ。他の仲間らも同じ考えだった、依頼報告の真偽などもはやどうでも良い、次に助かる保障などどこにも存在しないのだから。身勝手に逃げる事にすらなんの躊躇いも無かった。

「それでは報酬をお支払いします」

そこに出されたのは一枚の紙だった。

「身勝手に大量の依頼を引き受けてモンスターに壊滅させられて嘘の報告をして逃げ出そうとするあなた達に罰金を要求します。総額8500万ギニーです。支払うか支払えないかどうか今すぐ判断しなさい」

「!?」

それと同時に周囲を取り囲まれる。

「あなた達の行動は常に見てましたよ。あまりにも酷すぎて表現する言葉が出てきません、他人の依頼を身勝手に横取りしておきながら無様に敗北し嘘の報告をして逃げ出そうなどとは。よくもそれで『傭兵など無用だ』などと言葉に出来ますね。その口から出るのは身勝手な嘘、その立派な姿は虚栄心だけの見せかけ、その中身は自分勝手な誇り、それだけしかないようですね。あぁ、こんなだから正規軍や騎士団の信用が無くなるのですよ」

周りの人らは武器を抜き放ちこちらに向けてくる、それには本物の殺気があり迂闊な事を言えばすぐさま振るわれるだろう。

「じ、自分らに、渡された依頼は明らかに難易度が高すぎるものだ!そっちのほうが間違っているのだ!!」

仲間らが反論するが何の意味も無い、むしろ相手の機嫌を損ねるだけだった。

「依頼内容をちゃんと確認するように忠告は何度もしましたよ?それを傭兵ごときがこなせる依頼など大したことはないと高を括ったのはあなた達です。いまさら反論など聞きたくありません。その身勝手さが問題で傭兵らの不信感を買い傭兵ギルドの評価はガタ落ちです。これだけの大失態をどうやって取り返してもらいましょうか」

全員が脅してくる。騎士である自分らを脅すなど王国が黙っていないはずなど無い、そう考えていたが相手にはもはやその考えは無くどうやってこの大失敗を回収させるかしか頭に無い。

「あぁ、そうそう。逃げ出そうとした隊長らは捕らえましたよ。出てきてもらいましょうか」

そうすると後ろの扉から隊長らが捕縛された状態で引きずり出される。

「隊長!」

口に布を巻かれて何も言えず縄で厳重に縛られている。

「どいつもこいつも騎士はクズばかりです!お前らの指揮官は責任を放り出して逃げ出そうとしましたよ、もう反論は許しません。契約書に則って違反金を出してもらいましょうか。無駄な消費無駄な犠牲無駄な死者それらこれらを回収させるのには非常に骨が折れますが生きていればどうにかなるでしょうし最悪貴族家などから強制回収するしかありませんね」

ゲシゲシと隊長を何度も踏みつける。

「このことは正式な書類としてベルーナに送り裁判をして判決を出しますが生き残っているあなた達には損害を回収する義務があります。死ぬまで魔物らと戦ってもらい奉仕してもらいましょうか」

再び恐怖が蘇って来る、またあれと戦えと言うのか?そんなのは絶対に嫌だ。あれと戦う事など不可能だ。現時点で騎士団は壊滅状態なのだ、そんな状態でどう戦えと言うのだろうか。

「安心してください。こっちには有無を言わせず結果を出せる優秀な指揮官がいます。彼に指揮を執ってもらいモンスター討伐から護衛まで何でもしてもらいましょう」

そうすると奥の方から狼のような仮面を被った誰かが出てくる。

「ふぅ~、面倒な仕事ばかり押し付けられて非常に迷惑なんだけど」

「申し訳ありません、このことは傭兵ギルド最大の汚点です。もはや無能者は粛清するしかない事が証明されました。、面倒を掛ける分だけこっちもそれなりのモノを出しますから我慢して下さい」

その人物が近づいてくる。

「理不尽差別横暴格差、色々反論はあるかもしれないけどそれだけの大失態をしたんだから今後はそれを理解して善行をするんだな。痛みも苦しみも無く悩む必要も無いから楽と言えば楽だよ」

そうして仲間の一人に頭に手を触れると【奴隷化】という言葉でヘッドサークレットを着ける。

「ま、まさか、『奴隷使い』か!」

「そうですよぉ、管理するのも監視するのも面倒ですから全員【奴隷化】で従わせるしかありません。この方は非常に優秀な傭兵なのでそこの無能な指揮官とは違い無駄な犠牲は出しませんからね」

さぁ、チャッチャとしてくださいと。

自分に近づいてくる。嫌だ、奴隷使いなんて最悪で最底辺の仕事ではないか。騎士である自分が奴隷になるなんて死んでも認めたくない。しかし相手は止まらない、それが当然だと言うように。

「い・・・、嫌だ~!?」

こうして自分らは奴隷となってしまった。

それからそいつは負傷した仲間に司祭を呼んで治癒術をかけるように命令して数日で生き残りは完治した。そこまでは良かった、そこまでは。その後には全員が当然のように【奴隷化】された。

「お前らには自由は無い。ひたすら訓練しひたすら食いひたすら休め、そして戦え。逃げ出す事など不可能、自分らが犯した失敗を回収できるまでモンスターと戦うしか道は無い。ほら、さっさと装備を身に付けて訓練を始めろ!」

用意された装備を身に付ける。見慣れぬ剣に盾に皮製の鎧、どれもこれも以前の装備に比べれば見栄えは最悪だ。しかし、奴隷である自分には反論など出来ない。素振りから始まり集団行動まで徹底的に叩き込まれる。それは以前のように遊びは一切無い。談笑も禁止だ。ここに来る前とは比べ物にならないほど徹底的な訓練。それを当たり前に行なう、朝から晩までひたすら同じ事を繰り返す、こんな苛酷な訓練を毎日だ。当然不満は溜まるがそれすらも無視される、自分らには反論する自由も逆らう権利も無いのだ。

しばらくしてから、

「明日から魔物との実戦だ、各自準備を怠りなくしろ」

ついにその日が来てしまった。

働かせて回収するならば鉱山などに送るのが普通だがあんな大金を回収させるのではまともに労働などこなしていては不可能だ。もっとも危険でありもっとも分かりやすい回収方法である魔物討伐以外返済方法が存在しない。

「この奴隷使いが!貴様なぞ最悪の職業のくせに騎士である自分らをどうこう出来ると・・・ギャァァ~!!」

反論した数人がもがき苦しむ。ヘッドサークレットから主人に逆らえば問答無用で苦痛が与えられる、それだけなら可愛いもので中には問答無用で人格を奪われたのもいるのだ。もはや自分らには選択権が存在しない、ただただ主人に奉仕するしか出来ないのだ。反抗する事など出来ない。

「はぁ・・・、どうしようか」

その日は休みとなり自由な時間となるが表情は最悪だ、騎士として栄光ある未来を約束されていながら今の立場は奴隷である。もはや家族などに顔を見せる事は出来ないどころかどのように扱われるのかすら予想できないのだ。借金を返し終えれば開放すると仮面の男は言ったがあんな馬鹿げた金額を回収する事なぞ死んでも不可能だ。

「安心しろ、返済計画はある程度考えている。まぁ、普通に比べれば苛酷だが死人は一桁以内の予定で最悪でも二桁だ。お前らの無能のツケをこっちが面倒を見るなんて嫌だけど仕事は仕事だ。出来る限り早く返済できるようにしてやるし真面目に働けばそれなりに待遇改善してやる。若いんだから多少苦労しても取り返しがつくしな」

仮面の男は十分返済可能だと判断していた。

「ったく、何でお前らの面倒を見なくてはならないのか理解できないよ。自分勝手に戦って全滅してくれれば良かったのに生き残ったから後始末が本当に面倒だし説明するのすら馬鹿馬鹿しいし、お前らは害悪だわ。そんなんでよく騎士だとか言えるな。誇りやら名誉やらご大層な事を言うがそんなに働けるのか?夢物語は酒の席だけで言ってろ、そんなんだから誰にも必要とされないんだ」

仮面の男は面倒な仕事が増えたと嫌々そうだった、それに仲間の大多数が嫌そうな顔をする。

「不満がありそうだな?そんなお前らを指揮していた人間は尊敬できるような存在とは思えないけどね。依頼を身勝手に横取りして大失敗しあげくその責任を押し付けて逃げ出そうとまでした、クズの群れはどこまでもクズの群れだ。お前らに尊厳だとか権利だとかは必要ない。無駄に食い潰した色々なモノを回収させるため生かされているだけだからな」

傭兵ギルドは面倒な仕事ばかり増やしてと、愚痴を言い出す。

「お前らにはもう説明するのすら面倒だから生かそうが殺そうがどうでもいいけど立派な騎士らしく動かしてあげるよ。多分お前らの想像とは完全に違うだろうけど騎士の待遇を改善したいというなら従うしかないだろうけどね。異論反論大いにあるだろうが従ってもらうよ」

「・・・・・・」

反論したいがその権利すら与えられていないのだ。いや、そもそもそんな意味すらない。この人物にとって自分らは大事な『商品』なのだから損害を回収し終えるまではいくらでも使い続けるだろう。どのように使われるのかは単純明快である。

『敵を魔物を殺して殺して殺しまくれ』

たったそれだけ、それ以外は何も出来ない。全ての行動は決められていてそれに逆らう事は不可能だ。ほんの僅か人らしいと感じてしまう所もあるが冷酷で非情で合理的なだけだ。

そうして魔物討伐の日となる。

「各自戦術単位の情報を更新、指示に従い敵を殲滅しろ」

突然始めて見るモノが目の前に出てくるがそれに従い行動する。以前とは違うモンスターだが脅威である事に変わりは無い、無いはずなのだが、

ザシャ~!

戦術に従い装備を使うとすぐさま倒せる、それ以外にも見慣れぬ石弓を打ち放つとすぐさまモンスターが一方的に倒されていく。こんな事など今まで無かった、有り得ない現実が目の前に出される。戦死者も負傷者も出さずに完全勝利する自分の中にえもいわれぬ喜びが生まれる。

「お疲れ様。どう、勝利の喜びは?民の脅威を排除することは?こんな当たり前のことですら前の指揮官はしなかった。これでもまだ逆らう?」

もはや反抗する事がどれだけ無意味であるのかを教えられた。

それからもモンスター討伐に護衛にひたすら働く日々が続くが以前とは比べ物にならないほど充実していた。民と触れ合い依頼をこなすほどに感謝の言葉を言われるこの状況に前とは違う幸せを見つけたのだ。以前は堅苦しい狭い世界が嫌でも生活していたがここではその狭さは存在しない。真面目に働けば働くほどに状況は改善していたのだ。この仮面の指揮官は敵に対してもっとも効率的な戦いしかしない。仮とはいえ敗走することなど不名誉極まりないがここではそれが当たり前でありそれで数多くの敵を一方的に倒せる。負傷者を完全に出さない見事な采配は『真の元帥』であると証明していた。後方支援部隊の子供らが多いがみんな奴隷である。それに嫌悪してもいないし反乱しようとはまったく感じない。

それは生活環境があまりに違う事が原因だった。

「「「「いただきま~す」」」」

今日は蓄肉をふんだんに使っての食事である。毎日は出せないそうだが4日に一度はモンスターなどの肉料理を出しているそうだ。普通は臭みが強くまともに食べられないがどのように処理したのか非常に美味い。それを全員に満足するまで食べさせる。余ればどこかに入れ込んで保存する。我々の以前の生活でもここまで豪華な食事はまったく無かったがここではそれが当たり前に出来る。初めの頃は普通の麦粥などだったが忠実に働けばその食事にありつく事が出来るのだ。当然全員が目の色を変えて真面目に依頼をこなし住民には迷惑を掛けない事が条件だ。自分も初めの頃は反抗心剥き出しだったがここでの生活環境を変えようとする内にそんな考えは消え去っていた。

もちろんごく一部はそんな状況を受け入れようとはしない、それどころか身勝手な事ばかり言う。

「このクズが!そんな奴隷らに食事を与えるよりも我々高貴な生まれの者達を優遇しろ!!」

もはやそいつらは放置されている。普通の食事を与えられるだけでも十分すぎると感じるほどだ。自分も以前だったら同じように言ったのだろうが奴隷という現実の鎖で縛られているので逃げ出せない。大半の仲間が環境を改善してしまい完全に格差が出来てしまっていた、当然ではあるが彼らの優先順位は最低だ。バラードなどに分隊を派遣して指揮している子供らが最上位であり自分らは最低より少し上なだけ、真面目に働けば待遇の改善は約束されているのだが横暴な一部は優先順位が違うと反抗していた。

もっとも、そいつらが反乱を起こさないのには理由がある。

「ベルーナから書類が届きました」

本拠地からの通達、それで全員が絶望した。

『牙龍騎士団など王国にもどの都市にも存在しない、そいつらは偽者である。どのように処分してもこちらに負う責任は一切無い。そのような罪人はそちらでどのように扱っても何も文句は無い』

そのような人物や騎士団などどこにも在るはずがないと完全に消されてしまったのだ。傭兵ギルドの書類は誤魔化しなど出来ない真っ当なモノなのに揉み潰されてしまった。

これで自分らの存在意義も権利も意味すらも完全に否定されもはや帰る場所すら無くなってしまったのだ。当然前の指揮官らに事情聴取し自分らにも話しを聞く事になった。元指揮官もまさかこんなに簡単に切り捨てられるとは考えてもいなかったのか支離滅裂な事しか言わない。

「さて、どこから話せばいいでしょうかね。むこうは借金を返す気が無く完全に切り捨てました、今後どうしますか?」

どうしたもこうしたも何ももはや騎士でも何でも無くなってしまったのだ。働き先など当てが無いし戻ろうにも追い出されるだけだろう。

「ハッキリ言いますがこれだけの大問題を起こしているのだから普通だと強制労働送りでも穴埋めは出来ません。どうでしょうか、このままこっちで働くのは?借金完済まで逆らえませんがそれなりに援助しますし衣食住も保障します。乱暴を働けば負債は増えますが勤勉に働けば5年ほどで消せますよ。どうしますか?」

仮面の指揮官と傭兵ギルドから出された選択肢は二つだけ、強制労働送りか借金完済までモンスターと戦うか。自分は後者を選んだ。

一部手に負えない愚か者は前者に送り残りは後者に送られたのだがそれでもまだ逆らっているのだ。あの仮面の男を殺せば逃げ出せると思っているようだが【奴隷化】した主を殺したとしても開放などされない。反抗すればするほど他の者の借金が増えていき自由から遠ざかる。もはや『元仲間』であろうとも排除するしか方法が無かった。反抗している者らはある程度まで行くと意思を奪われて強制労働送りとなる。同情できないわけではないが自分らとて生活はギリギリだし反抗していたのは高貴な血筋だのなんだのとほざく貴族しかおらず大半が今の生活を守るほうを優先したので大して影響は出ない。

こちらのほうが生活が良いし堅苦しい態度を取らなくていいので楽なのだ。あの無能な指揮官のせいで無残に死んでいった仲間らのためにも生きなくてはいけないのだから。そうして食事を終えて目的の場所まで到着する。

「全員死んだ仲間であり勇者である人々らに黙祷し丁重に扱え」

仮面の指揮官は仲間らの遺骨や遺品を回収しにいく命令を出した、例えどのようになろうとも脅威と戦った事には違いないのでそれらを正式に墓まで持っていくべきだと。仲間らは肉は全て食われ誰とも分からず共同墓地で埋葬するのだとか。正直感謝している、あのまま仲間の屍を放置して生きていく事に耐えられなかったからだ。遺骨や遺品は全て回収してナルダーに戻り後のことは教会の神官に任せる。

でも、まだ自分らには開放されるという選択肢は存在しない。莫大な借金のために切り捨てられたのでここで働くしか道が無いからだ。仮面の指揮官はそれからもひたすらモンスター討伐と護衛の仕事を行なう。途中から子供の奴隷も混じり共同で脅威の排除に精を出す。

「(この仮面の男は何者だろうか?このような徹底的に合理化された戦術は歴史の中にも存在しないぞ)」

子供らから『ハクロウ』と呼ばれる仮面の指揮官は見た事も無い装備と戦術の数々でモンスターを完全に駆逐していく、まるでそれが当然だと言わんばかりに脅威を排除していくその姿には尊敬と畏怖の念を覚える。年は若いとは思うがどのようにすればここまで敵を排除できるのかその中身がまったく分からない。

「ハクロウの中身を見ることは禁止されています」

姿形を確認しようとすると子供らから警告される。ここにいる子供らでも中身を見てはならないそうだ。これほどに優れていながら実態を知る人間は殆どいないそうだ。傭兵ギルド関係者ですら本当の姿を知るものは非常に少ない。

「(有名な元帥か?それとも将軍なのか?どうしても姿を確認したいが・・・)」

事前の情報では『優秀な傭兵』としか説明されていない。本来であれば傭兵などに留まる器ではないことは間違いなく断言できる。これらを正規軍や騎士団にもたらせば格段に結果を出せるのだから。

「お前ら、ちょっと来い」

突然その本人から呼び出される、命令違反などしてないがどうして呼んだのだろうか?自分と他数人がハクロウの部屋に呼び出されてから、

「良からぬ考えは捨てろ、無駄死にしたくなかったらな」

「っ」

奴隷である自分には主人に対して隠し事はできない。

「呼び出された理由について思い当たる事があるはずだ、言ってみろ」

「自分らには何も思いつきませんが」

「お前らはまだ王国や騎士団を信じているのか?そんな馬鹿な考えは完全に捨てろ。もはや末期なんだよ」

どういう意味だろうか。

「色々言葉が出てくるが単純明快に言うと国の借金がもはやどうにも出来ないってことだよ」

「どういう意味ですか?」

「色々調べた情報を整理するとそもそも貴族や騎士の総人数に比べて王国はさほど広くない、それなのに増やしていくもんだから無駄な支出ばかり増えていった。次に来たのは目立つ産業がまったく開発されていないことで利益の分散が進んでしまい権利争いで逆に食いつぶして行った事、さらに各地で統治力が低下して山賊やら魔物やらのせいで物流が途絶えた、止めに戦術戦略の完全な未発達のせいで無駄な犠牲が出続けた、これが理由だ」

いくつかに理由については思い当たる事がある、騎士には退役年齢が存在しない。だから身動きできない状態であろうとも金が出される。例え死ぬ間際でも名簿に名前があるのなら出し続けるのだからこれほど出費が大きいものもないだろう。一度認められれば自分から離脱を申し出なければ何をしていてもかまわないなど雇用制度が根本的におかしいと感じてしまう。

貴族や騎士の枠もそうだ。認可を受けた人間を数多く見てきたが権利を取り上げられたり改易させられたことなど今まで見た事も聞いた事も無い。つまり、何らかの形で国や住民から金を取り続けていたのだ。これも莫大な出費だ。

そして、モンスターの活発化によって都市が分断されると防衛戦力の無い都市はすぐさま滅んでしまった。現在でも各地で激戦が繰り広げられているのに王族や貴族や騎士たちは何をしていたのか?その答えを知っている自分にはもはや王国や正規軍や騎士団など信用できない。間違いを認めず身勝手に動かし捨てていった怒りしか存在しない。

戦術だってそうだ、前の指揮官はただひたすら数での力押ししかしなかった、ハクロウのように事前に情報を入手したり運用を変えたりしたりなどしなかった。この時点でもはや優劣は決してしまっている。無能な指揮官と優秀な指揮官では結果が違いすぎるのだ。正規軍や騎士団にはそのような指揮官は見つからない、だから傭兵らが活躍する事実をここで発見した。大半が『金と生まれ』で昇進している、そのため飽和状態なのだと。そんな状態で良く国というものが成り立つのだと悪い意味で感心した。

「あんたらがどうやって騎士になれたのかなんてどうでもいい、問題は国王らと重臣らがその問題を認めなかった事。こうなる前に人員整理と政治改革をしていれば今の不幸は防げたと思っている。そもそもあんたらの借金をなぜベルーナは支払わなかったと思ってるの?」

見捨てられておいてなんだが明確な理由は分かっていない、無能な指揮官の後始末を押し付けられてから今まで考えた事もなかった。

「傭兵ギルドの審査内容や契約項目が変化している事は事前に各地に出されている、ところが王国はこれ以上傭兵が活躍すると金が取れないと判断したんだよ。その意味は分かるか?」

よく分からないが税金だとかそういうのだろうか。

「違う、王国はわざと都市を壊滅させて難民を出してそちらに資金が流れるように見せかけている。確認してないけど王国は商人らを襲う山賊をかなりの場所で見逃してもいる。これを合法と呼ぶか非合法と呼ぶか分からないけどよほど切迫してるんだと思う」

それ以外にも色々な事を話してくれる。話の中身を聞くと疑惑が大きくなる、雇用制度が崩壊していて本来だと自分らは騎士にはなれるはずなどなかったが幸か不幸か認められ生活や装備品などに金を吸い上げる、そして何らかの理由で切り捨てられる。

「戦争で誰が一番儲かるか少し考えれば分かるだろう」

当然勝利した者が一番儲かるが正規軍や騎士団が各地で敗走を続ける状況では利益を出せるのはほんの一握りだ。つまり国王や将軍や騎士などに媚を売る関係者だけしか存在しない。

「国王らや大神官など国のトップ、もしくはそれに順ずる存在はこの国を放棄しようとも考えているのが自分には見えている」

「そんな!」

国の損失ばかりが増えていく現状に国王らは見切りをつけて逃亡を図ろうとしているのだと。それが事実ならば明確な裏切りである。自分らが苦心して貢いだ全てを返さずに放棄して逃げ出して平穏な場所で再出発など認められない、認めさせない。

「さて、あんたらはどうする?こっちとしては借金完済まで手放さないけどそれぞれに守りたい物があり譲れない物があるんだろう、それをこれから取り返しに行こうと思うけどどうしようか」

ベルーナには家族などが残されているのだ。それもこれも全部こちらで確保したいから従うか従わないか選べと言う事だ。

「期限は3日後だ。どちらを選ぼうとかまわないがむこうで見る現実は残酷だぞ。良く考えて答えを出せ。この世界で守りたいモノを守るにはとてつもなく苦労しなくてはいけない。一度見てしまうと今後一切王国とは縁が切れると思え」

そうして部屋から追い出される。

「どうしようか」

全員が頭を悩ませる事になった。正直家族や親族などには今の姿は見せたくないが大半が別の誇りをこの場所で見つけたのだ。自分らは罪人として扱われてしまいおそらく不幸が待ち受けている。それを見るか見ないかで今後の人生を大きく左右する事になるだろう。

『このままここにいてかまわないが残された者らはどうなっているのか確認しろ』

そういうことだ、騎士でなくなり奴隷となったがまだまだ自分は若い。たとえこの後苦労することになっても家族の生活が守られるのならばそれはそれで不幸というわけではない。どこもかしこも治安は乱れ脅威に怯える住民らを守るのが自分の誇りだ、それに間違いはない。仲間らと相談して全員ハクロウに従う事にした。

そしてベルーナまでむかうことになった。自分らと子供らとギルド職員などなどを連れていき正式に抗議するためだ。こっちから見れば無駄な人間らを2000人近くも身勝手に押し付けられたのだ、当然ながら書類は何度も見直して不備が無いようにして乗り込む。いきなり入り込むと混乱が起きるので偵察兵を出して様子を見つつ近づく作戦だ。

「報告します」

偵察兵の子供らが帰ってくる、自分らは町の人々に知られているので入る事が出来ないのでこういう状況では非常に助かる。

「簡潔に言うこと」

「ベルーナの都市全域で多数の老若男女が強制労働に駆り出されています、傭兵ギルドらの制止を完全に無視して。どうやらこちらにいる人間らの親族縁者を手当たりしだいに掻き集めたようです。工業品などの生産を重点的に行い無理矢理資金を集めているようです」

その言葉に何人かの仲間が激昂するがハクロウがなだめる。

「こういう現実はどこでも存在する・・・か、大体予想はしてたけどここまで絵が立派だとどう嘆けばいいんだろうか」

まるでそれが当然と言わんばかりの愚かな答えにハクロウが呆れかえる。

「ハクロウ!すぐにでも出陣を」

「分かってるから落ち着け落ち着け。まずはむこうの傭兵ギルド職員など関係者に来てもらわないことには始まらないから、少し待て」

こちらの戦力ならば都市を完全に破壊出来る戦力なので迂闊に動くなと言う命令だ。すぐさま動きたいが軍隊とは『集団戦力』なので『個別戦力』ではない。個々に優れていても討ち取るのは手段を選ばなければどうにでもできるのだ、それをここでは徹底的に教え込まれた。1対1ではこちらが有利だがほんの数人増えるだけで高度に訓練された子供らに完敗したことなど当たり前なのだ。それもこれもこの世界の戦術には書かれていない重要な教科書として身をもって味わった。

「これが『戦術』だ、数が多い少ないと言うだけで勝ち負けが決まるだなどと二度と言うな。それはあくまで条件の一つであるのであり勝敗を決定するものではない」

能力で勝りながらそれで勝てないというどれだけ甘い世界にいたのだと子供らから笑われたが反論は出来ない、実際に戦闘では勝てても戦術では勝てないのだから最低の立場に甘んじるしか選択肢が出ないのだ。

そうして夜の世界となる。

「戦術単位H(フクロウ)だけを運用、各自目標となる人物の確保だけを優先しろ。基本的に戦闘は禁止、各自目的を達成したら証拠を残さず撤収しろ」

以前から奇襲用の夜間部隊を編成しておいた。【隠蔽】などに優れている分能力が低くなったが何もしなければまったく気がつけないほど夜戦能力に優れている。基本的に前面に出る部隊ではないので今回は要人確保にだけ仕事をしてもらう。全員に睡眠剤を持たせているので多少暴れても問題はない。こういうのは使いたくは無いが状況が状況だ、どちらにとっても早期に問題解決しないと都市同士で争う事になるのだから。

そうして関係者らしき人物に当たりをつけて30人ほど攫ってきた、ギルドなどに待ち伏せをしたり潜入させておいた子供らもいるしな。翌朝になると起きるのでそれまで待つ事にする。

「な、ななな、なんなんだだ・・・」

当然ながらむこうからすればいきなり攫われてきたので少し時間を置いて食事を与えると少しずつ落ち着いてきた。

「ナルダーから派遣されてきた『白狼』か、その評判はベルーナにも聞こえておりますぞ。それで自分らをここに連れて来た理由を聞かせてもらいたい」

「詳しい書類などはこちらに用意してありますのでそれを確認していただきたい」

そうしてギルド職員と話をして書類を確認すると全員が落胆の表情を浮かべる。

「『牙龍騎士団』の3分の2近くが生存しており依頼の身勝手な横取りにその罰金の未払いなど・・・、最悪だな。送られてきた書類にはそのような事などどこにも書かれておらんぞ」

大半の人間が疑問を浮かべるがその本人らが大多数こちらにいるので顔を知っている人間も多かったので誤魔化しは出来ない。多少変装なども出来なくは無いのだが。

「正直に答えてください、今都市の運営はどうなっているのですか」

その言葉に全員が渋い顔をした。

「傭兵らの追放に無実の人間を強制労働に出しているなど非常に悪い。このままでは都市が遠からず滅んでしまうだろう」

全員が申し訳なさそうにしているがこっちとしては好都合だ。

「つまり今日滅んでも明日滅んでも問題が無い状況な訳だね」

「そうじゃが、どうするつもりかな?」

ある程度予測はしていたがこうなるとこれ以外答えが出てこない、むこうからすれば悪夢以外ありえないだろうが一回リセットさせてもらう。

「ならば現時点でベルーナの都市を脅威として排除するしか方法がありませんね」

「!?」

当然ながら全員が固まる。

「まさか住民を皆殺しにするのか!」

「先に明言しておきますが排除するのは武器を持って襲い掛かってきた存在だけです。まぁ、多少命令されて抵抗するならば元騎士らで制圧します。そのぐらいの仕事は出来ますし彼らには莫大な借金があるのですよ、それの回収の意味もこめてますから」

ねぇ、と話を振られるがまさか生まれ故郷の制圧任務が出されるなどまともではない、ないのだがおそらく強制労働に駆り出されているのは自分の関係者かと思うと全員怒りが込み上げてくる。

「貴族らが抱えている戦力の人数は?」

「大体5000ほどじゃな、だがこちらはその半数ほどでしかも住民らを保護しながら戦うなど非常に難しいぞ」

大多数が反対意見を上げるがもはや都市の崩壊は確実なのだ、手を打たなければ今後どうなるかも分からない。

「白狼ならば十分可能な戦力です、期待しましょう」

こちらの来ている人間らに説得されてベルーナの都市の制圧を正式に命令される。大多数の人を守りながらなので難易度は高いがこれぐらいやらないと軍神から文句言われそうだな。

ベルーナの都市の防壁はそれなりに高いが防備がザルでスカスカの守りだった。スタン・ボムを数個投げ入れるだけで殆ど無力化出来てしまうほどに。元騎士らにも同じ装備を与えているのでそれを使い抵抗できなくしてから捕縛する。現時点では敵か味方か判断できないので後で選別するしかないな。各自命令を遵守して都市の内部制圧を進める。

「父さん、母さん!」

「おおっ、息子よ。どうして生きておるのだ?聞けばナルダーで理不尽な依頼を受けて死んだと聞いてその罪を償えと言われて労働に駆り出されたのだが」

内容まで捻じ曲げているのか?文句は色々あるが強制労働を強いられていた人は全て解放する。そうして都市の中心部まで行くと、

「なぜ死んだお前らが生きておる!偽者か、そうなんだな!全員突撃を」

「黙れこのクズが」

クロスボウの射撃で黙らせる。元騎士らは家族ら関係者を好き勝手に働かせて満足に休息も与えられないで過労死した人も存在したほど苛酷であった。その現実を目撃したのでもはや我慢の限界であった。

「お前らの元上司だとか何だとかはある程度は生かしておいて裁判にかけて罪を裁くから。残りは・・・不幸にも戦いで死んだという事で納得させるから」

「ありがとうございます」

「ヒィッ、お前らはここにいた騎士だろ。な、な、罪は減刑して重罪ということにするからみ」

都市を治めていた領主らとその仲間、まぁ上位騎士だとかなんだとかは容赦なく殺されていく。今までの苛酷な訓練とかでストレスが大きかったのでこれで多少なりとも風通しはよくなるだろう。

その後当然だが生き残りを裁判にかける、色々と事実を捻じ曲げて都合よく審査していたので傭兵ギルドらの徹底的な調査の手を出す事になる。こういう悪人はその手の書類もあるはずなので自分らで探し出して証拠として提示する。相手からすればいきなり自分の罪を全て暴かれたので異論反論大いにあるが住民らは今までの苛酷な重労働から怒りが爆発し問答無用で死罪か死ぬまで強制労働送りとなる。

その後は傭兵ギルドらの間で話し合いをして罰金などの支払いとか色々な話をするが当然ながらそんな大金はどう考えても出せない。なのでしばらくはアラールなどと同盟を結んで交易を活性化して共同で借金を返済すると言う事で合意した。自分らの部隊はもう名前を覚えるのが面倒なほどに増えたし都市の防衛能力も大幅に低下しているので治安維持にモンスター討伐に護衛にと大忙しである。

この都市にも奴隷は存在していて子供だけ買った。大人はもうすでに大人数いるので必要が無い。差別かもしれないが子供のほうが大変生き辛いのだから。元騎士の大人らもそれには反論しない。大人ならある程度は自由になれる可能性が高いのだから。

「お前達はここに残れ」

「えっ」

自分は大人らをベルーナに置いていくことを明言する。ここは少しばかり位置的にも造り的にも攻撃より防御に重点が置かれている。それに王国の首都とも近いなど傭兵との関係が悪化していることを考えると傭兵である自分らが拠点として使うより元騎士らの方に任せるのが最適だと判断したからだ。

「自分の生まれ故郷の警備部隊に任命するのに不満があるの?」

「我々はまだ借金を支払い終わってはいませんしもはや王国には忠誠を誓えません」

自分こそ主と仰ぐのに相応しいと断言される、その気持ちは嬉しいが事情が事情なのだ。自分だってこの都市の問題を解決したが面倒な仕事は山ほどある。どれも手が抜けないのだ。

「その気持ちだけで今は十分だ、奴隷から開放する事も出来るが」

全員がこのままで良いそうだ。装備などもある程度渡してるし反乱を起こさなければ良いだけなので後は傭兵ギルドなどから依頼を受けてこなしてもらおう。戦術指揮も離れていて問題ないようにしているしこの辺りのモンスターならよほど気を抜かない限り大丈夫だろう。

「先に言っておくけど開放したわけではない、共同で借金返済を合意しているからお前達が仕事を怠れば容赦なく借金が増える。お前達の騎士の資格は剥奪されているだろうから今後は傭兵ギルドで依頼をこなす事、それと教えた訓練はキチンと守れ」

教えた訓練などは今後のために残しておく、そうしなければまた無能者が顔を利かせるので今後はそういう連中は容赦なく退場してもらう考えだ。

「了解しました」

そうしてベルーナの傭兵ギルド職員から名残惜しそうに送り出される。

(ハクロウ、いきなり大仕事を成し遂げたな。そなたの活躍は実に見事、上から下まで文句の出ない見事な采配だ。軍神として実に誇らしいぞ!)

いきなり軍神様から御言葉を貰う、こっちとしてはやるべき仕事をこなしただけなのだが。

(自分へのお礼などどうでもよいです、王国の対応や『問題』の解決はどうなりましたか)

(その事は主神を始めそなたの活躍を見てきた数多くの者らから同意の許可を貰った。後は実際に神託が下されるのを待つべきとの状態だ)

そうなると王国への対応はどうなっているのだろうか。

(残念ながらこれ以上王国には無駄に力と信仰が流れないよう堰き止める決定が出された。勇者らを始めあいつらの中身はどうなっているのだ?訳の分からない言葉ばかり使って著しく秩序を乱しておるし国王も最高司祭も無駄な事ばかり熱中しておるし、これでは何のために神々が苦労しておるのか・・・)

愚痴を聞かされる、大体の予想だと金と女だな。どこの世界でもそれは切り離せない。

『これ無くしてどこに幸せがある』

大半がそう言うだろう。自分も感心が無いわけではないが今はそんなことに関わっている時間が無い。

(そなたの能力評価だが今までの勇者とは比べ物にならないほど高評価だ、欲を言えばその力を譲り渡せるようにしたいのだが)

(自分がここまで来るのに何も努力してないと思っているのですか?初めの頃は自分だって敗北を重ねました、何度と無くやり直しを望んだ事もありますが現実は変わりません。数え切れないほどの勝利と敗北の中で自分という存在が出来上がったのです。例え同じような加護を与えたとしても最初から自分のようには成れません。神々の中で不満があるのなら仮想戦場で戦いましょうか?公平平等な立場で戦場が動いている事を思い知らせてあげますよ)

よほど悪条件でない限り自分に勝つ事はこの軍神でも不可能だろう、事実先の戦いでも敵は数任せの突撃しかしてこなかった。クソゲームすぎて自分と戦う事になった敵に同情したほどだ。こいつらより自分の抱えている子供らのほうが指揮官として優秀だと思うとやはりこの世界の戦術レベルは最悪だわ。

(お前ら神々が無能すぎるから無駄に冥府送りになってる人たちに謝れと言いたいわ)

(不平不満は当然甘んじて受けるが『元帥』の称号を受ける問題点はこの辺りにはそれを授けられる人物が殆どおらんな。ヴァトラー公爵ぐらいだな)

今後王国を切り崩していくには明確な旗印が必要なのだ、傭兵ギルドの重役達と相談したが現在王国を始め元帥職に就いている人物は存在しないそうだ。

「どうしてなのですか」

区分けとして元帥の下に上位将軍の位が1~7位までありその下に中位将軍1~9位、下位将軍1~12位、将軍補佐1~4位となっている、基本的に呼び方はこれだけ。日本で言う佐官や尉官や士官などはこれの中に取り込まれている。過去には武勇なり魔力なりで元帥に任じられる例は多かったが現在は指揮能力が最重要となりどんなに頑張っても任じられる事が無く長年空位となっている。候補者は数多く上がるが数任せの力押しに指揮能力を問うとくれば全て脱落するしか答えが出ない。王国の勇者ですらその候補に挙がらないことを考えると金でどうこうできる問題ではないのだろうな。今後傭兵らが発言力を増すには自分らの中から元帥を出すべきだと全員の意見が一致していたがそんな候補者はどこにも存在しなかった。話が上がりながら下がるを繰り返してやっと自分という存在が出てきたのだ。

「ハッキリ言いますが元帥の称号を与えられようとも傭兵の立場のままでいますし国王などに忠誠は誓いません、力なき人々を襲う脅威の排除しか考えていませんし無能者愚か者は誰であろうと排除します。そのあたりのことを考えて判断してください」

それを引き受けるに当たっていくつかの特権事項を設ける事を条件に出した、自分は他人の顔色を窺って媚を売るような存在になどなりたくない。王国のほぼ全ての将軍らが最悪なので関係者全員の首を飛ばしたいのだが。

「(難しいなぁ)」

そんな大規模な粛清をすると貴族などからの反発が大きすぎる、物資支援では結構な数字が出されているので無意味に殺し回る事は出来ない。ヴァトラー公爵様を始めとして貴族などの協力があればこそ自分の部隊が問題なく動かせるのだから。無意味に敵として排除は出来ない。

「もう少し交流を広げるか、会っていない人物とも渡りを付けておかないとな」

結局の所脅威の認知度が低すぎるのが問題だし他から見ると驚異的な戦果を上げる自分らへの不満もある、それらこれらを一度に解決するのは非常に難しいのだ。でも、行動するのを控えるとモンスターの脅威が再び大きくなりすぎる。その辺りの加減が分かりずらい。

もっと他の傭兵が活躍すれば自分らの負担が減るがこの世界の戦術レベルでは互角の勝負が精一杯だろうし。クソッ、あれこれ問題ばかりが出てきてその処理に自分一人では手が回らない。カインらでもまだ指揮官として全権を任す事は出来ない。結果報告は問題ないのだがまだまだ子供なので感情任せに動かす事があるからだ、指揮官として任命するには冷静さが足りない。もうしばらく修行が必要だ。

王国の対応が最悪なので無駄な損失ばかりが増えていく状況を変えるにはトップを始めとして意識改革が必要なのだが権力者は大抵それを捨てたりしない、ドップリとぬるま湯に浸りきっているからだ。自分らに都合の良い審査方法しか考えないのでその不始末に責任を持たない。

「(元騎士らの評価を傭兵ギルドから聞いたけど基準がありえないわ。こんな最低レベルの戦闘すらこなせないのに対等以上だとかお前らの頭の中はどうなってるんだと言いたい、これだから自分らの評価を自分らで下げてるんだ、もっと現実を見ろ。まぁクズらしいといえばらしいが)」

もはや王国など頼るには値せず各地では優秀な傭兵の確保に躍起になっている、正規軍や騎士団が敗走を重ねている現実では都市が独立をしても当然なのだ。自分は勇者として呼ばれたが王国を救おうという考えはまったく無い。だけどそれでは住民らの拠り所が無くなってしまう。最後の最後の手段になることも考えておかなくてはならない。

ここからの計画は自分一人の判断であり傭兵ギルドの判断には出来ない。王国の借金はもはや限界ギリギリなのだ、いつ滅んでもおかしくないので手を打てるのならば早ければ早いほど良い。ミリオンなどに信頼できる他の種族の重鎮とも話し合う機会を作らないとな。
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