雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!

コバひろ

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雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』その(10)入場式。

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計量後。
堂島はキックのトレーナー今井、クラッチトレーナーの岩崎と、近くのレストランで軽く食事をした。

岩崎が言った。
「私は堂島さんがNOZOMIに勝つのは難しいとずっと言ってきました。それはアナタに奮起を促すためです。相手が女子だと意識しちゃだめだ。鬼になって、あの美しい顔を思いっ切り打ち抜いて破壊して下さい。平常心で戦えば五分五分ですよ」

なぁんだ、、平常心で鬼になって戦っても五分五分なのか?と思ったもののそれは堂島にも分かっていた。
理屈では分かっていても、この自分が全国生中継の中、女子に、それも現役女子高生に絞め落とされる姿を想像すると身の縮む思いになる。
お金は手に入るが、キックボクサーとして積み上げてきた自分の、男としての半生が全部否定されてしまうのだ。

“ 女に負けたら恥だ! ” そう思うこと自体が平常心を失っており、戦う前から負けているのは分かっている。
泣いても笑っても今夜ゴングが鳴る。
堂島源太郎は、平常心!と、自分に言い聞かせた。

堂島の妻佐知子は、夫最後のリング姿になるであろう今夜の試合を前に緊張し複雑な思いだ。
あの人が、あんなきれいな女の子とリングで対峙して冷静でいられるわけがない。それは夫婦である自分が一番よく分かっていることなのだ。
よりによって最後の試合?相手が女子選手だなんて、、夫がかわいそうだ。
佐知子としてもNOZOMIのジェンダー論に共感出来る部分はあるものの、それでも、夫が女子選手に負けることを想像すると、、夫は自殺してしまうのではないか? 佐知子はネガな気持ちを否定するように首を横に振った。

龍太も、昨夜父と母に言われたことは当然分かっている。
戦う者同士、正々堂々と力の限りを尽くして戦うことが大切で、決して結果ではないことを。それが格闘技の精神であるのだから。

でも、それは男同士でのことじゃないのか? なんで女がのこのこと、男の神聖なるリングに上がって男と戦おうとするんだ? リングは男だけのものじゃないってことも分かるけど、それならば女は女同士で戦えばいいのに。
女に負ける父ちゃんなんて想像もしたくもないし絶対いやだからな...。

堂島源太郎、実質引退試合になる今夜の格闘技戦。その家族三人もリングサイド席に招待されていた。

それぞれの思いを乗せ、堂島源太郎は今夜リングに上がる。

○○○○年 12/31、年末格闘技戦(G主催)の幕が開いた。

各試合とも今年は熱戦が続き、○○○スーパーアリーナに集まった三万人以上のファンも熱狂している。

そして、第8試合まで無事に終わると残すところあと3試合。
時間は21時になろうとしていた。今年も余すところ3時間あまり。

(リングアナ)

「これより、第9試合。トリプルメイン第一試合目を行います。異性異種格闘技戦、堂島源太郎 対 NOZOMI。まずは堂島源太郎選手の入場です!」

うおお~っと、場内がどよめいた。

この試合は3分5ラウンド制で行われる。何でもありの総合ルール。

「さあ!堂島さん、リングに向かいましょう。平常心ですよ。平常心!」

チームから激が飛んだ。
堂島のセコンドにつくのは、トレーナーの今井と岩崎二人である。

堂島は好きなロックのリズムに乗って“チーム ド根性源太郎” 8人を引き連れ花道からリングに向かった。
こうしたビッグイベントともなれば、入場シーンも派手に演出されるものだが、堂島はそういうのが苦手だった。あくまで堂島らしくシンプルに武骨に一直線にリングへ向かう。

「どうじまぁ~!女なんかに負けるなよ~、男の凄さを見せてやれよー」

そんな声が飛んできた。
リングに入る際、リングサイド席に目をやると、娘の麻美を真ん中に、妻の佐知子、息子の龍太の姿が目に入ってきた。三人とも緊張気味だ。

リング上に立った堂島は、頭に日の丸のハチマキを巻き、ガウンには “ 男!ド根性” という文字が大きく刺繍されており、いかにも堂島源太郎らしい入場。そして、観客の声援に応える。

(リングアナ)

「NOZOMI選手の入場です!」

すると、場内のライトが消え真っ暗になった。どよめく場内...。
それは徐々に薄明かりになり、花道の向こうに人影が一人、二人、、。
いきなりだった。闇を引き裂くようなテンポの早いポップな音楽が場内を鳴り響かせた。

花道の向こうから、白い何者かがこちらに向かってくる。
一人、二人、三人...。
すると、ポップなリズムは益々激しくなり花道に向かってレーザー光線、七色?のレーザービームが、花道を観客席をリングを刺し貫き飛び交う。

(実況)

「ああ~これは何だ! まるで花火大会のような鮮やかなレーザー光線が場内を飛び交っております。花道には白い何かが、、 おお~~! あ、あれは少女だ!白いセーラー服を着た少女が、5人、10人、続々と花道をリングに向かって歩いてくるぞ~!  こ、これは20人以上はいるぞ~!」

これを観ている観客、テレビを前にした全国の視聴者ファンも度肝を抜かれたことであろう。
純白のセーラー服に紺のプリーツミニスカート姿の女子高生と思しき総勢20数人が、ヒップホップのリズムに合わせダンスしながらリングに向かっているのだ。戦場に向う女子高生の群れ。

堂島の家族も唖然としてこの光景を観ていた。龍太は口をあんぐり開けたままだ、麻美は憧れの目、幾分うっとりしながら見ている。
佐知子は思った。これはカリスマモデルNOZOMIならではの演出だろう。佐知子にしてもモデルNOZOMIには興味がありファンと言ってもいい。
でも、これはやり過ぎでしょ?ここは血と汗が飛び交うリングなのに、これから殴り合う場所に向かうのに...。
リングで待ち構える夫の姿を見ると、薄暗くてよく分からないが、明らかに緊張気味に見える。これでは、平常心でいられるわけがない。
しかし、よくこれだけきれいでスタイルの良い女の子を集めたものね...。

(実況)

「これは驚いた! ここはどこだ? 殺伐としたリングに向かうのは可憐なる女子高生の群れ。この中にNOZOMI選手はいるのか? 格闘技戦という舞台をまるでファッションショーに変えてしまったようだ。ここは、東京ガールズコレクションの舞台なのかぁ~」

すると、場内に飛び交っていたレーザー光線が一つに集中すると、一本の線になって、少女たちが囲んでいた黒い影にスポットライトを当てた。

黒い影は立ち止まると、声援を送るファンに応えるように手を上げた。

(実況)

「こ、これは誰だ?! この漆黒の全身コート、頭にはすっぽりフードを被って確認できないが、これがNOZOMI選手なのか? 天才格闘少女なのか?」

漆黒のコートと、少女たちの純白のセーラー服。そのコントラストが鮮やかで見事だ。観客はその演出、光景に圧倒されたのか声も出ない。

ダンス混じりにリングに向かっていたセーラー服の少女たちと黒い影は、花道の三分の二程のところで立ち止まった。そこでホップな音楽が尚一層激しくなると、黒い影を囲んでいるセーラー服の少女たちがそのリズムに合わせて激しいダンスを踊り始めた。

そして、音楽は止んだ。

黒い影を取り囲んだ少女たちが左右に広がり黒い影の前を開けた。

二人の少女が出てきて、その漆黒のコートに手を掛けた。丁寧に、そして素早くスパッとそのコートを脱がせた。

(実況)

「おおっと! 漆黒のコートの下には、少女たちと同じ純白のセーラー服だ。
この長身、ひときわ長い手足、、フードの下はNOZOMI選手なのか?」

フードを被ったセーラー服少女?は自らそのフードに手を掛けるとスパッと脱ぎ捨てた。

(実況)

「こ、これはNOZOMI選手なのか? ちょっと様子が違うぞ、、いやいや、これは間違いなくNOZOMI選手だ~!」

実況アナが戸惑っていたのは、いつもは背中まで伸びる長い黒髪を、後ろで束ねてファイトするのがNOZOMIなのだが、髪を顎のラインまでカットしたボブヘアー。それを鮮やかな金髪に染めていたのだ。

場内がパッと明るくなる。

どよめく場内。

「のぞみぃ~~!」

「のぞみちゃーーん!」

あちこちから声援が飛んでいる。

NOZOMIは真っ直ぐ、堂島源太郎の待つリングを見つめる。
そして、白いセーラー服のまま、跳馬に向かう体操選手のように走った。コーナーポストの手前で驚くべき跳躍力でジャンプするとそれに手をかけ見事に飛び乗った。
コーナーポストの上で、まるで平均台の体操選手のようにピタッと立ち止まると声援に応え手を振った。
タイガーマスクも真っ青である。

NOZOMIはリング中央をジッと見つめると、コーナーポストの上から宙に舞った。そのまま一回転すると、ストンとリングに舞い降りた。
セーラー服のミニスカートの中を覗こうとするファンもいたようだが、一連の動作は巧みにそれを隠していた。

なんという跳躍力。
なんという安定感。
そして、なんという華やかさだろう
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