女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ

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女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』その(1)堂島源太郎に捧げる

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前作、雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!(全20話)からの続き。
新作として書いていきます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・



2○○○年、7月30日。
○○アリーナには3万人近い大観衆が詰めかけ凄い熱気だ。
格闘技イベント会社『G』主催の格闘技戦が行われるからだ。
メインに置かれているのは、今や名実共に日本格闘技界を背負って立つ、大人気!小天狗の異名を持つ、ダン嶋原(22)と、もう一つのメジャーキック団体のエース、村椿和樹(28)の一戦。
両団体の名誉をかけたこの一戦は以前から噂された因縁のドリームマッチ。

そして、その試合の前に行われるのが日本格闘技界最強女子決定戦と喧伝されてきた、鎌田桃子 vs NOZOMI の試合。女子同士の試合ながら、それはメインの 嶋原vs村椿 以上に注目を集めている。そう、あの天才美少女ファイター、NOZOMIが約一年半ぶりにリングに上がる。復帰戦となるからだ。

一昨年の大晦日格闘技戦で、NOZOMIは男子キックボクサー堂島源太郎と死闘を繰り広げた。
NOZOMIはなんと、残り時間3秒のところで堂島を背後からのスタンディングチョークスリーパーで絞め落とした。
当時17才の女子高生が、元日本王者の現役男子キックボクサーを失神させたシーンは衝撃的であった。
しかし、NOZOMIの腕の中で失神KO負けを喫した堂島は、意識が戻ることなく帰らぬ人となった。

正式な試合でのリング禍であったとはいえ、一人の男を結果的に死に至らしめたのだ。NOZOMIの悩みは大きかった。一時は戦うことの意味を見失い格闘技界から身を引こうと考えていた。

しかし、それは堂島の遺族、妻が子たちが赦さなかった。

「夫、堂島源太郎を倒した女として、それに相応しい女であったことを世間に証明してほしい。そうでなかったらアナタと人生をかけて戦った夫が浮かばれません。どうか、夫の死を無駄にさせないで下さい...」

NOZOMIは堂島源太郎の名を汚さないためにも、その思いに恥じることなく復帰することを決意した。

一年間は喪に服す意味もあり、モデル活動も格闘技戦も控えていた。
この春、有名大学を現役で合格した。
NOZOMIは高校を卒業して女子大生となるとまずはモデル活動を再開。その美貌は益々磨きがかかったようだ。

そして、今、NOZOMIはリングに向かっている。その入場式も、堂島源太郎戦の時のような派手な演出はない。
あの時はセーラー服で入場し、試合は蛇柄の革のビキニで戦ったNOZOMIだったが、今日はワンピース型の水着。
しかし、鮮やかに映える真紅のそれは
そのスタイルの良さを強調するようで圧倒的な華がオーラがある。

NOZOMIは格闘技戦に復帰する。
そして、日本無差別級最強女子と言われる鎌田桃子の待つリングに向かう。

男子を倒したNOZOMIといえども、この鎌田桃子は容易な相手ではない。
二年前の〇〇五輪柔道銀メダリスト(78Kg級)。彼女の凄さは柔道だけではなく、五輪では柔道を選んだが、レスリングでも世界選手権銅(76Kg級)という実績があった。
更に総合格闘技に転向するとボクシングも習いその打撃センスも恐るべきものがあった。

(実況)

「さあ! 両者がリングに上がった。名実共にここで勝った方が日本格闘技界最強女子ということになります。しかし、体格差があります。試合前の計量は鎌田選手(27)180.4cm83Kg。対するNOZOMI選手(19)181cm61Kgです。身長こそほぼ同じですが、体重差は22Kgもあります。堂島源太郎選手を破ったNOZOMI選手ではありますが、この差は大きい。彼女はこの試合を堂島源太郎に捧げると語りましたが大丈夫なのか? そろそろゴングは鳴る!」


(NOZOMI、絶対負けるなよ...)

テレビの前で、故 堂島源太郎の息子龍太はドキドキしていた。
父に勝ったNOZOMIが、まさか同じ女相手に負けるはずはないと思うが、この鎌田桃子の身体は大きく筋肉の鎧を被っているようでまるでモンスター。
それに、鎌田選手の数日前のインタビューに龍太は腹を立てていた。

「あの堂島源太郎さんを、女の子でありながらKOしたのだから大したものだと思うわよ。でも、総合ルールでしょう? 堂島さんはキックボクサー。それで勝ったからってどうなのかしら? 私は総合格闘家で何でも出来るし身体も堂島さんよりずっと大きい。そんなに甘くないわよ。勝つのは私!」

この「総合ルールで勝ったからってどうなのよ?」という言葉は、父に対する大変な侮辱だと龍太は思った。
聞きようによっては、私は堂島源太郎みたいに甘くないわよ...という風に聞き取れる。絶対に赦せない。

そんな龍太とは対照的なのが妹の麻美である。麻美はNOZOMIの勝利を信じて疑わない。何も言葉を発さず真剣に画面を見つめている。

堂島龍太は小6、麻美は小3になっていた。二人共NOZOMIの復帰戦を心待ちにしていた。NOZOMIは二人の目標なのだから負けは絶対許されない。

NOZOMIはこの試合がデビューから2戦目になるのだが、鎌田桃子は5戦目になる。過去の4戦は人気女子プロレスラーや、巨漢女子サンビスト等、全て3分以内にKOしてきた。
あまりにも強すぎて女子には相手がいない。その点はNOZOMIと同じだ。

この試合が実現するためには両者の体格差が問題になったが、NOZOMI側から無差別級としてやろうと提案。
NOZOMIにとっては、デビュー戦の相手は男子、この試合では自分より20Kg以上重い相手と戦うことになる。

女子には相手がいない二人が、真の日本最強女子を階級を超えて決めることになった。試合は総合ルール5分3ラウンドで、決着付かなければ最大5ラウンドまで延長される。


ゴングは鳴った。

(実況)

「ゴングが鳴りました。果たして日本格闘技界最強女子は鎌田桃子か?それともNOZOMIか? それにしても両者の体格差は大きいぞ!」


NOZOMIは鎌田の周囲を軽快なフットワークで舞った。
ボクシングスタイルである。

鎌田桃子は、自分と生き方が全然違うNOZOMIが気に入らなかった。
鎌田は格闘技を極めるために女であることを捨てていた。男のように過酷なトレーニングを積み、筋トレも欠かさず全身が筋肉の塊になった。
それに対してNOZOMIは「オシャレな女の子として戦うことに意味がある」なんて言い、モデルまでやっている。そんなチャラい女に負けるわけには絶対にいかないのだ。鎌田はオシャレなんかには興味はない。


NOZOMIは軽快なフットワークで鎌田の周囲を舞いながら考えていた。

この人は男のように首が太く下半身もガッチリしている。
打たれ強そうだし、組技になっても世界屈指の柔道家でありアマレスラー。容易な相手ではないわね...。

それでも、ニヤッと笑った。

鎌田さん、、ごめん。
すぐ楽にしてあげるからね。

NOZOMIは鎌田の周囲を華麗に舞い、その長いリーチから槍のように伸びるジャブが相手の顔面を襲う。
鎌田にしてもボクシングも得意でありジャブを掻い潜りインファイトに持ち込もうとする。しかし、鎌田のパンチは空を切るだけ。
明らかにNOZOMIは、堂島戦の時よりボクシングは格段に進歩している。

まるで「蝶のように舞い蜂のように刺す!」 モハメド・アリのようだ。

それでも鎌田は大きな身体で強引にNOZOMIの懐に入ってきた。
その時だった。NOZOMIの身体が一瞬跳び上がりカウンター気味にその膝が鎌田の顎にヒット。よろける鎌田の側頭部にNOZOMIの鋭角な肘が襲った。

白目を剥いて倒れる鎌田桃子。

レフェリーはカウントする必要はなかった。完全に失神している。

ウオオオオオオ!

場内は大歓声。

(実況)

「強い!恐ろしい美女だ。NOZOMIは魔女なのか? 1ラウンド1分56秒。鎌田桃子をマットに沈めました」


試合後の勝利者インタビュー。

「この勝利を、尊敬する堂島源太郎さんに捧げまァ~~す!」

NOZOMIは涙ながらに絶叫した。


龍太はNOZOMIが「堂島源太郎さんに捧げます!」と、涙混じりに叫んだ姿を見て、多少なりとも心のつかえが取れるような気分になった。
彼女は30になったら引退すると言う。
それまで自分も強くなって、挑戦者として認められなくてはならない。

麻美はNOZOMIが鎌田桃子を倒す姿を見ても当然だと思っていた。
(世間ではパパのことを女の子に負けた弱いキックボクサーと言う人もいるけれど、違うの、パパが弱かったのではなくNOZOMIさんが強いの...)


NOZOMI vs 鎌田桃子の試合を、選手控室でジッとモニターで眺めていた男がいる。これからメインで村椿和樹との決戦に臨む ダン・嶋原である。
嶋原は堂島源太郎に弟のようにかわいがられていた。色々世話になったし個人的にも親しかった。
そんな恩義ある堂島が女子に敗れた上に命まで奪われた。悔しかった!

「堂島さんの仇は僕が打ちます!」

嶋原はマスコミの前で何度かそう言ったことがある。それはNOZOMIの耳にも届いているかもしれない。

今、NOZOMIが、あの怪物鎌田桃子を沈めたシーンを見て驚愕した。

“ 堂島さんと戦った一年半前より格段に打撃技術も破壊力も進化している。なんだ! あの女はバケモノか? ”

あの進化した打撃技術の上に得意の柔術まであるのだ。ダン嶋原はNOZOMIとは決して関わりたくないと思った。

次回へ。
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