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女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』その(30)麻美の嫉妬。
しおりを挟むNOZOMIの遺伝子、奥村美沙子、天海瞳、衝撃のKO勝利に湧いた会場だが、
決して強い相手とは言えなかった。
シルヴィア滝田の相手は危険だ。
褐色のモンスター、シルヴィア滝田が真紅のビーチバレー風ビキニで花道を歩いてきた。村椿和樹戦から半年、更に鍛えられ精悍さが増し美しい。
リング上で待っているのはストリートファイト無敗と豪語し、MMAデビュー以来3連続KO勝ちの福浦俊也。
この試合は70Kg以下契約。総合ルール5分3ラウンドで行われる。
計量では。
福浦俊也(22)175cm 70kg
シルヴィア滝田(20) 177cm 69.8kg
福浦には特別格闘技のバックボーンはなくストリートファイトで鍛えられてきたという。
彼は街の不良少年でケンカに明け暮れる日々だったが、成人を過ぎるとこのままではろくな男にならないと、更生させようと知人の紹介もあり格闘技を始めた。天性のケンカ屋なのか? そのファイトぶりは正面から殴り合い相手を倒してきたラフファイター。
(実況)
「さあ! かつて、ケンカ空手少女との異名があったシルヴィア滝田、総合選手としてのデビュー戦。相手はデビュー以来3連続KO勝ちの福浦俊也。その全てを開始早々3分以内で相手を倒してきました。ケンカ空手少女と、街のケンカ屋の戦いのゴングが鳴った」
街のケンカ屋とは言え福浦とて女を相手に殴り合うのは複雑だ。
それでも、相手のシルヴィアが元力士やキックボクサーと死闘を演じてきたのを見ている。油断は出来ない。
(女だからといっても構うもんか!一気に殴り倒してやる)
ゴングと共に福浦は猛然とシルヴィアに襲い掛かった。この戦法はいつもの通りで先手必勝が彼のポリシー。
ガードを固めるシルヴィアには構わず上下左右と拳を振り下ろす。
あっという間にシルヴィアはコーナーに追い詰められ首をホールディングされた。そのまま首投げからマウントされそうになったがかろうじて逃れた。
シルヴィアの口元がうっすら血が滲んでいる。舌なめずりしながら福浦は再び殴りかかってきた。
それより先にシルヴィアのローキックが福浦の足元に飛んでくる。
それでも福浦は絶対に引かない。突進すると殴り合いに持ち込もうとしている。ボクシング、空手、キック等の打撃戦とストリートファイトの殴り合いは全然違うのだ。
福浦の勢いに守勢だと思われたシルヴィアが福浦の腰に腕をまわした。すると、なんとその身体を持ち上げ自分の肩に担いだ。そのまま自分の身体ごと後方のマットに叩き付けた。
先に起き上がったシルヴィアが、立ち上がった福浦にローキック3連発。
珍しく怯んだ福浦の首を抑え込むとそのままフロントチョーク。
完全に極っているようにも見えるが、福浦はタップしない。暫く必死にもがいていたがやがて動かなくなった。
レフェリーが試合をストップした。
シルヴィアが福浦の首を開放すると、
そのままドオッとうつ伏せに倒れビクともしない。完全に失神しているようだ。セコンドが飛び込んでくると「ドクター!」と叫んでいる。
空手をバックボーンに、これまで打撃で相手を倒してきたストライカー、シルヴィア滝田が、なんと組技投げからのフロントチョークで勝利。彼女の進化はどこまで続くのだろうか?
NOZOMIにはこのような結果になるのは見えていた。いくら街のケンカ屋といっても格闘技の基本がなければ一旦守勢にまわればこうなる。今までは勢いで相手を圧倒していただけ。
昨年大晦日の格闘技戦では3連敗だったNLFS勢だが今回は3連勝だ。
これで、男子vs女子の異性格闘技戦はトータルで女子勢の8勝6敗。
NLFS女子格闘家、恐るべし!
メインのダン嶋原と村椿和樹の再戦はフルラウンドでも決着つかず、僅差の判定で今度は村椿に軍配が上がった。
これで、大晦日の格闘技戦でNOZOMIの相手は村椿和樹に決まった。
NOZOMIは総合ルールでしかやらないと宣言していたのだが、相手が見つからない現状ではキックルールでの再戦も仕方ないところだ。
(村椿さんも、嶋原さんも、今日の試合を見た限り強くなっている。そして、今度戦う時は雑念もないだろう。キックルールではもう勝てないかもしれない。それでも私は逃げない...)
メインが終わったあと。
NOZOMIからある発表があった。
発表するNOZOMIの背後に人影。
女子レスリングフリースタイル50kg級で、五輪代表の座を逃した桜木明日香である。彼女も一度男女格闘技戦に出場したことがあり、敗れたとはいえ男子プロボクサーと激闘した。
オリンピック代表権をかけて、前回の五輪で金メダルを獲得した絶対女王こと吉岡香織と決勝で争い追い込んだが惜しくも僅差で敗れている。
「レスリングは全てやり尽くし悔いはありません。今後はNOZOMIさん率いるNLFSに入校して、第二の格闘技人生を歩んでいきます!」
NOZOMIは軽量級こそ、女子が男子に食い込んでいける先駆けになると思っている。50kg以下男子はあまり人材が多くない。逆に女子には豊富?だ。
MMA軽量級タイトルを、いつか男子から女子が奪う日が来る。MMA女子王者ではなく、男子の王者に女子が挑んで女子がその階級の王者になる。
そうなれば男女別ではなく混合階級が認められることになる。
桜木明日香ならそれが出来る!
・・・・・・・・・・・・・・・・
その夏休み。
麻美は友達と駅前通りを散策していると、向こうの方から母がやって来るのを見かけた。誰かと一緒だ。
麻美は友達の袖を引き物陰に隠れた。
「ど、どうしたの? あさみ...」
「うん。ちょっとね、、」
母と一緒なのは、かつて父のトレーナーを努め、今では兄の龍太にも指導しているキックボクシングの名トレーナー、今井宗平だ。母は今井の腕に手を回し幸せそうな顔をしている。こんな母の表情は家では見たことがない。
麻美は母が今井にとられたような複雑な気持ちになった。
強烈な嫉妬のような感情?
女の子にとって小学校6年生といったら難しい年頃であり麻美も例外ではない。今井と仲良く歩く姿が不愉快で反発を感じた。(ママは不潔よ...)
それに、麻美は今井トレーナーがあまり好きではなかった。
父がNOZOMIさんと戦った時に、そのセコンドに就いていたのが今井さんと岩崎さんだった。父がNOZOMIさんに背後からチョークスリーパーで締め上げられていた時、なぜもっと早くタオルを投げ入れなかったの?
あの状況では仕方なかったのは今では理解できる。でも、私はあれで大切なパパを永遠に失ったの。どうしても拭いきれない不信感があるの。
そんな今井さんが、よりによってママと恋人関係になったら?
パパがあまりにも可愛そう。
絶対ゆるさない。
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