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第二章 お飾りの王太子妃、国内にて
21 クイーンイザベラ号お披露目式(5)
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右の船にアドラーと、ラウルが飛び移った時は、敵はまだ高速船の存在に気付いていなかったが、ガルドと、レガードが飛び移る時、すでに敵は高速船の存在に気付いていた。
ガルドは、船の先端に立つと普段通りに言った。
「さて、来ますね。レガードと船頭さん、危ないですから、船の端ギリギリまで下がって貰えますか。あと、船頭さん。怖いかもしれませんが、問題ないので怖がらずに船に接近して下さいね」
「へ? は、はいわかりました」
船の操縦士は頷いて、ガルドのいう通り二人は船の後方部の端に寄った。
ガルドの言う通りそのまま不審船に近付くと、様々な国の言葉が聞こえて来た。
『来たぞ!! 狙え、狙え!! 船に近付けるな!!』
「弓早くしろ!!」
言葉と共に、船から何本もの矢が飛んで来た。
「ガルドさん!! 危ない!!」
船の先端に立つガルドに向かってレガードが声を上げた瞬間、ガルドが剣を抜き、風圧と見たこともないほど素早く剣を振りかざし飛んで来る矢を次々に、海に叩き落としていった。
「え?」
レガードが何が起こったのかわからず声を上げた時、いつの間にか、船は左の不審船に接触していた。ガルドは、前を見たままレガードに声をかけた。
「私が飛び移った後に、十秒数えたらあなたも船に乗り移って下さい。少々厄介な弓兵を先に――封じます」
ガルドはそう言うと、あたかも背中に羽を持つ鳥のような優雅な動きで船に飛び移った。
「なめるな~~!!」「やれ~~、たった一人だ~」と不審船から敵が声を上げる中、まるで障害など何もないといように、ガルドに向かって迫りくる攻撃を払いのけ、弓兵の前に立ったかと思った瞬間、一振りで、三人もいた弓兵が船に倒れていた。
レガードは、数を数えろと言われたが、数えるの忘れるほど、ガルドの動きに釘付けになってしまっていた。
「なんだ……今の動きは……」
そして、ガルドが他の剣士と戦い始めてようやく意識を戻し、慌てて自分も船に飛び移ったのだった。
◆
ガルドが弓兵を倒していた頃。
アドラーは大鎌を持つ男と対峙していた。
大きく揺れる船の上で、アドラーは、大鎌を振り下ろしていた男の攻撃を避けて、隙ができたところを、男の懐に入った。そしてそのまま男へ剣を振り上げて、気を失わせてた。
男が倒れると、息を整える間もなく、槍がアドラー目掛けて、突き付けられそうになるのを、間一髪で剣で防いだ。
だが、槍の遠心力を利用した攻撃は衝撃が強くて、アドラーの手にも痛みが走り思わず声が漏れた。
「くっ」
大鎌も槍も隙が大きいが、威力が高いので、一回攻撃を受けただけでも、かなりの衝撃だった。
しかも大鎌も槍も、動きが大きい分、船が大きく揺れるので、足場が悪く、アドラーは普段のように己の武器であるスピードが出せない。
船の上で対峙すると、脚力の反動を利用した攻撃に頼ることができないので、鍛え上げられた鋼のような男たちから繰り出される攻撃に対する自分の強みを生かせない今の状況は、アドラーにとってはかなりつらい状況だった。
アドラーは、自分の鍛錬不足を痛感しながら、何度も自分に向かって突き付けられる槍の攻撃を間合をコントロールすることで避けた。アドラーは、避けながら必死で反撃の機会を探し、ようやく槍の隙を見つけて、槍の男に攻撃を入れ男を倒した。
次の瞬間、ぐらりと船が揺れて、不安定になって辺りと見ると、ラウルが力で数人の剣士を叩き伏せたところだった。ラウルも足場が悪くて動きづらいのだろう。普段の剣のキレがない。
『余裕だな』
アドラーがラウルを見ていた一瞬の隙をついて、今度アドラーに向かってきた男は、鎖の両端に小さな鎌のついた武器、鎖鎌を持った男だった。頭の中に先ほどのラウルの言葉が響いた。
『傭兵集団は武器が厄介だな』
アドラーはこれまで、剣の訓練ばかりしてきた。
そして、相手は自分と同じ剣を使う人間ばかりを相手にしてきた。剣には自信があった。だが大鎌も、槍も鎖鎌も相手にしたのは初めてだった。だから、どう戦っていいのかわからずに、手間取っていた。
「鎖鎌か……難解な武器だ」
アドラーが、相手との戦い方に悩んでいる間に、アドラーの剣に、相手の鎖鎌が巻きついた。
『ここまでだ!! その剣、粉砕してやる!!』
相手が、スカーピリナ国の言葉で叫んだ。
アドラーの愛刀に鎖が巻きつき、ギリギリとイヤな音を立てている。
このままでは、武器が破壊されてしまう!!
アドラーは恐怖を覚えて必死で考えた。
このまま、あの鎖を力任せに引かれたら、剣が破壊されてしまう。
「……させません!!」
アドラーは鎖が巻きついたまま、高速で鎖を持つ男に向かって行き、ためらうことなく剣で叩きつけた。
『くっ!!』
鎖鎌を持った男は、ゆっくりと倒れて、アドラーは急いで愛刀シャルフを鎖から解放した。すぐに剣を確認したが、この剣はハイマの高度な技術が使われている剣なので、傷一つ付いていなかった。
――よかった……無事だった。
アドラーはこの剣でなければ、このような危険な状況で、剣を失っていたかもしれないと思い、背筋の凍る思いだった。戦場で己を守る武器がなくなる恐怖を初めて感じ、アドラーは、この剣に心から感謝したのだった。
ガルドは、船の先端に立つと普段通りに言った。
「さて、来ますね。レガードと船頭さん、危ないですから、船の端ギリギリまで下がって貰えますか。あと、船頭さん。怖いかもしれませんが、問題ないので怖がらずに船に接近して下さいね」
「へ? は、はいわかりました」
船の操縦士は頷いて、ガルドのいう通り二人は船の後方部の端に寄った。
ガルドの言う通りそのまま不審船に近付くと、様々な国の言葉が聞こえて来た。
『来たぞ!! 狙え、狙え!! 船に近付けるな!!』
「弓早くしろ!!」
言葉と共に、船から何本もの矢が飛んで来た。
「ガルドさん!! 危ない!!」
船の先端に立つガルドに向かってレガードが声を上げた瞬間、ガルドが剣を抜き、風圧と見たこともないほど素早く剣を振りかざし飛んで来る矢を次々に、海に叩き落としていった。
「え?」
レガードが何が起こったのかわからず声を上げた時、いつの間にか、船は左の不審船に接触していた。ガルドは、前を見たままレガードに声をかけた。
「私が飛び移った後に、十秒数えたらあなたも船に乗り移って下さい。少々厄介な弓兵を先に――封じます」
ガルドはそう言うと、あたかも背中に羽を持つ鳥のような優雅な動きで船に飛び移った。
「なめるな~~!!」「やれ~~、たった一人だ~」と不審船から敵が声を上げる中、まるで障害など何もないといように、ガルドに向かって迫りくる攻撃を払いのけ、弓兵の前に立ったかと思った瞬間、一振りで、三人もいた弓兵が船に倒れていた。
レガードは、数を数えろと言われたが、数えるの忘れるほど、ガルドの動きに釘付けになってしまっていた。
「なんだ……今の動きは……」
そして、ガルドが他の剣士と戦い始めてようやく意識を戻し、慌てて自分も船に飛び移ったのだった。
◆
ガルドが弓兵を倒していた頃。
アドラーは大鎌を持つ男と対峙していた。
大きく揺れる船の上で、アドラーは、大鎌を振り下ろしていた男の攻撃を避けて、隙ができたところを、男の懐に入った。そしてそのまま男へ剣を振り上げて、気を失わせてた。
男が倒れると、息を整える間もなく、槍がアドラー目掛けて、突き付けられそうになるのを、間一髪で剣で防いだ。
だが、槍の遠心力を利用した攻撃は衝撃が強くて、アドラーの手にも痛みが走り思わず声が漏れた。
「くっ」
大鎌も槍も隙が大きいが、威力が高いので、一回攻撃を受けただけでも、かなりの衝撃だった。
しかも大鎌も槍も、動きが大きい分、船が大きく揺れるので、足場が悪く、アドラーは普段のように己の武器であるスピードが出せない。
船の上で対峙すると、脚力の反動を利用した攻撃に頼ることができないので、鍛え上げられた鋼のような男たちから繰り出される攻撃に対する自分の強みを生かせない今の状況は、アドラーにとってはかなりつらい状況だった。
アドラーは、自分の鍛錬不足を痛感しながら、何度も自分に向かって突き付けられる槍の攻撃を間合をコントロールすることで避けた。アドラーは、避けながら必死で反撃の機会を探し、ようやく槍の隙を見つけて、槍の男に攻撃を入れ男を倒した。
次の瞬間、ぐらりと船が揺れて、不安定になって辺りと見ると、ラウルが力で数人の剣士を叩き伏せたところだった。ラウルも足場が悪くて動きづらいのだろう。普段の剣のキレがない。
『余裕だな』
アドラーがラウルを見ていた一瞬の隙をついて、今度アドラーに向かってきた男は、鎖の両端に小さな鎌のついた武器、鎖鎌を持った男だった。頭の中に先ほどのラウルの言葉が響いた。
『傭兵集団は武器が厄介だな』
アドラーはこれまで、剣の訓練ばかりしてきた。
そして、相手は自分と同じ剣を使う人間ばかりを相手にしてきた。剣には自信があった。だが大鎌も、槍も鎖鎌も相手にしたのは初めてだった。だから、どう戦っていいのかわからずに、手間取っていた。
「鎖鎌か……難解な武器だ」
アドラーが、相手との戦い方に悩んでいる間に、アドラーの剣に、相手の鎖鎌が巻きついた。
『ここまでだ!! その剣、粉砕してやる!!』
相手が、スカーピリナ国の言葉で叫んだ。
アドラーの愛刀に鎖が巻きつき、ギリギリとイヤな音を立てている。
このままでは、武器が破壊されてしまう!!
アドラーは恐怖を覚えて必死で考えた。
このまま、あの鎖を力任せに引かれたら、剣が破壊されてしまう。
「……させません!!」
アドラーは鎖が巻きついたまま、高速で鎖を持つ男に向かって行き、ためらうことなく剣で叩きつけた。
『くっ!!』
鎖鎌を持った男は、ゆっくりと倒れて、アドラーは急いで愛刀シャルフを鎖から解放した。すぐに剣を確認したが、この剣はハイマの高度な技術が使われている剣なので、傷一つ付いていなかった。
――よかった……無事だった。
アドラーはこの剣でなければ、このような危険な状況で、剣を失っていたかもしれないと思い、背筋の凍る思いだった。戦場で己を守る武器がなくなる恐怖を初めて感じ、アドラーは、この剣に心から感謝したのだった。
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