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第六章 最強チーム、強大国へ
45 【南部、攪乱隊ラウル組】(2)
しおりを挟むラウルの上げた狼煙を見たのは、ラウルたちを送ってきた高速船に控えていた三人の者たちだった。
彼らはラウルたちに何かあった場合、援護が出来るように控えていたが、"作戦成功"の合図の狼煙を見て監視船の本陣に戻って来た。
そして高速船に乗っていた三人は、監視船の甲板を見て唖然とした後に恐る恐る声を上げた。
「こんなに大勢……大変申し訳ない。約100人と報告していましたが、200人は優に超えていましたね」
「凄い……本当に、この人数をたった二人で!?」
「応援要請も準備していたのですが……こんなに最速で拘束まで終わらせているなんて……」
ラウルが驚く三人を見ながら言った。
「それより、他の船団に知られる前に攪乱する準備をお願いします」
「わかりました」
三人のうちの一人が船内に入って行った。残った二人にラウルが言った。
「それでは我々は、兵を船内に」
「はい!!」
そして意識のある兵は自ら歩くように誘導し、意識のない兵は彼らの仲間が運び、船の甲板にはガルドとラウルとベルンの二人になった。
移動が終わった頃、ようやく夜が明けた。
夜明けと共に、ベルンの高速船に乗っていた二人も移動した。
一人は、ラウルたちの隣に留まった。そして、もう一人は甲板の後ろの少し高くなっている位置に移動した。そしてラウルの隣の男が貝を鳴らした。
すると船内に入った者が船汽笛を鳴らして北に進路を取った。さらに甲板後ろの男性が、遠くにいた船団に向かって両手に旗を持って振っていた。
「手旗信号だとは理解できますが……見たことのない動きですね」
ラウルが、貝を吹いた男性に尋ねると、男性が小さく笑った。
「あれは旧トラン国の水軍だけが使う手旗信号です。我々は、長年の調査で敵の手旗信号を解読しました。ですが、まさか、敵船の本陣を奪って、我々自身が使うことになるとは思いませんでした。解読してよかった」
そう、信号は敵の動きを読み、その攻撃を回避するということはできるが、指令を出している船を奪わなければ、敵を誘導することなどできない。だが、監視船の本陣を奪うことで他の船を誘導することに成功したのだ。
「はは、本当にクローディア殿の策は大胆で惚れ惚れするな~~」
ガルドの言葉に、ラウルが青い顔をした。
「え? 惚れ……ダメです!!」
ラウルの言葉に、ガルドは意味深な笑みを浮かべたのだった。
◆
朝日が昇り、監視船の本陣が事前の作戦通り、ベルン国の船団を一切警戒することなく、真っすぐに北上を始めた。
それに伴い、周囲の監視船も本陣を追うように北に向かって動き出した。
これから船団は、一度陸地にいる兵と合流して北上するはずだ。
作戦通りに動き出した船団を見たネイが口角を上げた後に言った。
「さすが、ラウル殿とガルド殿だ。作戦は成功したようだな」
もしも作戦が失敗した場合は、ベルンの高速船から合図が入る予定だったが、それはなかった。
合図がなく、監視船の本陣が計画通り動き出したのだ。
ネイは静かに前を見据え、そして声を上げた。
「全軍、出撃」
「はっ!!」
辺りにベルン国の兵の声が響き渡った。
そしてネイたちはゆっくりと監視船の船団に向かって船を動かしたのだった。
◆
ネイたちが動き出してしばらく経った頃。
「団長、ベルンの船団が動き出したとの報告が入りました!!」
運河の西に遠征とい名で、加勢に来ていたハイマの騎士団に伝令が届いた。
「さすが、我が国の副団長たちだ」
騎士団長カイルが小さく笑うと大きな声を上げた。
「全軍、出撃!! 陸上に潜む、水賊を捕えよ!!」
オオオォォーーーと地響きのようなハイマ騎士の声が辺りに響いた。
陸上に潜む水賊は、水上の敵を隠れて攻撃するための部隊のため、弓兵などが多く、歩兵には弱い。
実力のある騎士を多く輩出しており、統制のとれたハイマの騎士団は、歩兵隊としてはかなり優秀だった。そのため、ハイマ騎士団は陸地の水賊をそれほど全て苦労することなく捕えることが出来た。
つまり、厄介だった陸地からの水賊による援護攻撃は、ハイマ騎士団によって阻止された。
さらに監視船の本陣を奪ったことで、指示系統を乗っ取ることに成功。
ネイ率いるベルン国の船団は、不意打ちから攻撃を仕掛けた。完全に監視船の本陣の指示『周囲に敵はなし』という伝令を信じて油断していた旧トラン国の南の船団は、混乱し、ベルン国奪還後、ネイが鬼のように鍛えた船団によって壊滅。
【南部、攪乱隊ラウル組】の圧勝で南の戦いを終えた。
「よし、全ての兵を捕らえたな。砦に合図を!! 例の花を燃やせ!!」
ネイの言葉で、ベルン国の兵は大量の白い花に火をつけた。
それは信じられないほどの濃い煙を巻き上げて空高くにまで昇った。
「なるほど、これほど煙が出るのか……ダラパイス国が主要な建物の周囲にこの花の木を植えている理由がわかるな。不測の事態では救難信号になるわけか……戻ったら、アンドリュー殿下に進言するか」
ネイは、空高く舞い上がった煙を見ながら呟いた。
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