折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!

たぬきち25番

文字の大きさ
4 / 20
本編

4 糖度7 (とても甘いです)

しおりを挟む
 きちんと踊れるかどうか心配していたダンスだったが、王妃教育を子供の頃からみっちりと受けていた私はしっかりと身体にしみついていた。

(さすがライバル令嬢!! 凄いわ!!)

 しかもディラン様との息もピッタリで、みんなの前で模範としてもダンスを披露した。この分ならきっと主人公とのダンスバトルでも、いい勝負になりそうだ。

(よかったわ~~これなら、いい勝負になるんじゃないかしら……)

 私が少しだけ安心して、みんなでワルツを踊っているとディラン様に身体を引き寄せられた。

「私と踊っているのに考え事かな? 酷いな」

(顔が、身体が近い~~~!! 
 ディラン様の身体、鍛えられてるのからか、男性って感じで……たくましくて。
 ちょっと!! 私、何考えてるの?! 
 これってセクハラ思考じゃない?! 
 ダメよ。ダメ、ダメ。セクハラ思考はダメよ!!
 雑念よ~去って!!)

私は小さく息を吐いて呼吸を整えながらセクハラ思考を頭の中から追い出して答えた。

「まだまだ未熟ではありますが、この分なら人前でダンスを披露しても問題ないかと、ほっとしておりました」

するとディラン様がさらに身体を寄せるような動きになった。

(ひぇ~~~近い~~近い~~~)

 私が動揺していると、ディラン様の声が耳元で聞こえた。

「ふふふ。そんな可愛いこと言って。
 これ以上、僕を煽るのはやめてくれないかな? 
 結構ギリギリなんだよ?」

  ディラン様のセクシーエロヴォイスでそんなことを囁かれる私の身にもなってほしい。腰が砕けそうになりながらも懸命に耐え、今こうして立ってきることが奇跡だ。

「私もです……よ?」

すると一瞬ディラン様に抱きしめられた気がした。

(こんな振付けあったかしら?)

 「(も~~可愛すぎる!! 可愛くなったキャメロンに虫がつかないように、みんなの前で見せつける必要がありそうだな)」

 私が不思議に思ってディラン様を見つめると、ディラン様は何かを考えた後、私を見てにっこりと笑った。

「ダンスパーティーがとっても楽しみだね、学院の全ての人の前でこんな風に君と(の仲を見せつけながら)踊りたいな。
 夜会とは違って、他の令嬢と踊らなくていいところが最高だよね」

「え、ええ。そうですね」

 その言葉を聞いて私の胸にトゲが刺さったような痛みを感じた。
 そうなのだ。

 夜会ではディラン様は社交のために多くの令嬢と踊られる。でも学院主催のダンスパーティーは基本的にパートナーと踊ればいいのだ。
 中には夜会のように多くの方と踊る人もいるが、踊らなくても全く問題ない。
 ゲームの中では、ディラン様は主人公とだけしか踊らなかったはずだ。

(ダンスパーティーは、ディラン様は私ではなく、主人公とご出席されますわ……)

 つまり、ディラン様と踊れるのはもう、今日と後はダンスバトルの日が最後なのだ。
 その後は、主人公と恋に落ちるのでディラン様はパーティーでは主人公をエスコートする。だから、きっと夜会で会った時に義理で踊ってもらえない限り、踊ることはできないが、元婚約者だった私と踊るのは外聞が悪いので、もう2度とディラン様と踊ることもないのだろう。

(ディラン様の幸せのためとはいえ、つらいな……)

 私は思わずディラン様を見つめた。

(ダメよ! ダメ!! 大体、ディラン様と踊れるだけで奇跡なんだから!! 今を楽しもう。今は、私と踊って下さってるし、今だけは、今だけ)

 私もディラン様の耳元に唇を寄せて呟いた。

「ディラン様と踊れて、幸せです♡ ずっとこうしていたいです」

「(あ~婚約者が可愛い過ぎる押し倒したい……ダメだ!! ダメだ!! 理性頑張れ!!)」

 ディラン様が言葉にならない程の小声で呟いた気がするが、音楽と周りの音で聞こえなかった。
私は最愛の人とのダンスを楽しむことにしたのだった。



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話

下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。 御都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】『推しの騎士団長様が婚約破棄されたそうなので、私が拾ってみた。』

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【完結まで執筆済み】筋肉が語る男、冷徹と噂される騎士団長レオン・バルクハルト。 ――そんな彼が、ある日突然、婚約破棄されたという噂が城下に広まった。 「……えっ、それってめっちゃ美味しい展開じゃない!?」 破天荒で豪快な令嬢、ミレイア・グランシェリは思った。 重度の“筋肉フェチ”で料理上手、○○なのに自由すぎる彼女が取った行動は──まさかの自ら押しかけ!? 騎士団で巻き起こる爆笑と騒動、そして、不器用なふたりの距離は少しずつ近づいていく。 これは、筋肉を愛し、胃袋を掴み、心まで溶かす姉御ヒロインが、 推しの騎士団長を全力で幸せにするまでの、ときめきと笑いと“ざまぁ”の物語。

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

初恋に見切りをつけたら「氷の騎士」が手ぐすね引いて待っていた~それは非常に重い愛でした~

ひとみん
恋愛
メイリフローラは初恋の相手ユアンが大好きだ。振り向いてほしくて会う度求婚するも、困った様にほほ笑まれ受け入れてもらえない。 それが十年続いた。 だから成人した事を機に勝負に出たが惨敗。そして彼女は初恋を捨てた。今までたった 一人しか見ていなかった視野を広げようと。 そう思っていたのに、巷で「氷の騎士」と言われているレイモンドと出会う。 好きな人を追いかけるだけだった令嬢が、両手いっぱいに重い愛を抱えた令息にあっという間に捕まってしまう、そんなお話です。 ツッコミどころ満載の5話完結です。

処理中です...