好きでした、婚約破棄を受け入れます

たぬきち25番

文字の大きさ
27 / 95
第三章 深まる溝と揺らぐ絆

26 貴族学院入学式(1)

しおりを挟む



 昨日も着たが、今日からは毎日着ることになる制服に袖を通して、念入りに髪の毛をセットした。私はハンスの婚約者でもあるので、ハンスの評判のためにも貴族令嬢らしい見た目も大切なのだ。

「これでいいかしら?」

「ええ。さすがお嬢様、きっと一番可愛いです!!」

 エマが真剣な顔で言った。

「ふふふ、大袈裟よ。そろそろハンスが、迎えに来てくれるかしら?」

「そうですね」

 私がエントランスに行くと、エイドに「お嬢が世界一!!」と言われ、エイドのマネをしたシャロンに「お姉様が世界一!!」と言われて、お父様とお母様に「シャルが一番可愛いわ」と、みんなに同じようなことを言われた。家族の語彙力が心配になりながらも、私はハンスを待った。

 みんなで、待っているとハンスの馬車が着いた。馬車から降りて来たハンスはとても素敵だった。

(普段も素敵だけど……制服姿は大人っぽくって素敵だわ)

 私がハンスに見とれていると、ハンスが真っ赤な顔で声を上げた。

「おはよう、シャル~~~可愛い~~~!! どうしよう!! シャルを誰にも見せたくない。学院行かない方がいいんじゃ……可愛過ぎる!!」

 ハンスがオロオロしていると、ピエールがやってきて私を見た。

「おはようございます。ほ~~これは、確かに可憐だ。ですが、ハンス様、急がないと遅れますよ」

「そうだった。シャル、行こう」

「ええ。では、みんな、いってきます」

「いってらっしゃーい!!」

 みんなに見送られて、私は馬車に乗り込んだ。馬車に乗ると、私はすぐにハンスに、おでこや頭にキスをされた。

「ハンス、どうしたの??」

 今日はいつもより、ハンスのスキンシップが激しい気がする。

「いや、シャルはこんなに可愛いんだし、どこか遠くに行かないか不安で……」

「大丈夫よ。ハンスだって、素敵なんだから……私だって、不安だよ」

 隣に座って、頭にキスをし続けるハンスを見上げると、ハンスが「あ~~」と言って私を抱きしめた。

「シャル。大好きだよ。愛してるよ」

 私もハンスを見上げて言った。

「ハンス、大好きよ。私だって、愛してるわ」

「シャル~~~~」

 それから、私たちは、抱きしめられたまま学院に向かったのだった。

☆==☆==

 学院に到着すると、エカテリーナが待っていてくれた。

「シャルロッテ~~~!! 入学おめでとう!!」

「エカテリーナ!! ありがとう!!」

 私は、エカテリーナの手を取ると、嬉しくて笑顔になった。エカテリーナは2年前にすでに貴族学院に入学している。これまでエカテリーナとは、1ヵ月に1度。長いと、3ヵ月に1度しか会えなかったが、これからは毎日会えるということだ。

「これは、ランゲ侯爵令嬢様、いつもシャルがお世話になっております」

 私とエカテリーナが再開を喜んでいると、ハンスがエカテリーナに向かって頭を下げた。

「ああ、ホフマン伯爵子息殿、お久しぶりですね」

「ええ」

 エカテリーナとハンスが、あいさつを交わすと、エカテリーナが私の手を引いた。

「シャルロッテ。新入生は、あちらで、学生証を配られるのよ」

「学生証」

 私が首を傾けると、エカテリーナが説明をしてくれた。

「学生証は1年間有効で、これから1年過ごすクラスが書かれているわ」

「張り出されるのではなないのですね」

 ハンスがエカテリーナに尋ねると、エカテリーナが頷いた。

「ええ。学生証の淵が金色だと、Sクラス。銀だと、Aクラス。青だとBクラス。緑だとCクラス。赤だとDクラス。オレンジだとEクラス。白だとFクラスよ。事前のテストですでにクラス分けは決まっているわ」

「ああ、学生証で自分のクラスがわかるシステムなのですね」

 ハンスが顎に手を置きながら言った。エカテリーナが頷きながら説明を続けてくれた。

「そう。Sクラスは学年にたった10人。しかも、他のクラスと校舎も違うから中々会えないのよ。ただ、Sクラス同士だと、学年を越えて仲良くなれるわ」

「エカテリーナのクラスは何?」

 私はエカテリーナに尋ねた。

「私は、Sクラスよ」

「ふふふ。さすがね」

 エカテリーナがSクラスということは、もし、私が他のクラスなら校舎が離れてしまうということだ。

「そうですね。さすがですね」

 ハンスも頷きながら同意した。

「そんなこと言って、ないで学生証をもらいに行きましょう」

「ええ」

 こうして私たちは、学生証をもらいに言った。

「おはようございます。シャルロッテ・ウェーバーと申します」

 私は、少し緊張しながら、学生証をもらいに行った。

「ウェーバーさんは、はいこちらです。Sクラスになります。これが、学院の地図です。地図を見ながら自分のクラスに行って下さい」

「はい」

 学生証と一緒にたくさんの書類の入った封筒も一緒に貰った。

「シャル!! クラスどこだった?」

 ハンスは、手には、何も持っていなかった。

「Sクラスだったわ」

「……え?」

 ハンスの顔が曇った。私は、恐る恐る尋ねた。

「ハンスは?」

「俺は……Bクラス」

 Bクラス。実は、最近ハンスは、乗馬や剣術などの大会が忙しくて、宝石の勉強以外の勉強は、少しだけサボりがちだった。
 一緒に勉強しようと言ったのだが、疲れていると言って、あまり勉強をしていなくて、家庭教師の先生も嘆いていたのだ。
 それでも、Bクラスは上位のクラスだが。

 私たちが沈んでいると、エカテリーナの明るい声が聞こえた。

「シャルロッテ!! Sだったのね。私が案内してあげるわ。では、ホフマン伯爵子息また」

 私はエカテリーナに手を引かれて、ハンスを振り返った。

「ハンス……またね」

「あ、シャル……うん。帰りは一緒に帰ろう」

 ハンスがどこか切なそうに言った。

「ええ」

 私はハンスと別れて、Sクラスに向かったのだった。ハンスは心配そうな顔をしていたが、クラスが別れただけだ。会えなくなくわけじゃない。
 それよりも、Sクラスはきっと勉強が大変だろうと思う。気を引き締めようと思ったのだった。



しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい

木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」 私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。 アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。 これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。 だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。 もういい加減、妹から離れたい。 そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。 だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね

ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。 失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。

王命により、婚約破棄されました。

緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。

処理中です...