続・7年目の本気~岐路

NADIA 川上

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風雲、急を告げる ②

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 窓辺の分厚い遮光カーテンに外光を遮られている
 治療室内は時間の経過を忘れさせる。

 時計を見ると、もう明け方と言える頃だった。    
 
 めぐみが倉本の身代わりで刺され。
 
 緊急事態だとはいっても、
 とりあえず無事が確認出来た今。
 仕事を滞らせる訳にはいかない。
   
 和巴はガラス越しにめぐみの寝顔を見つめ、
 彼女の傍らに寄り添っている叔母と真緒に
 後は任せて。

 出勤し普段通りの日常業務をこなして、
 定時終業後この集中治療室へ戻った。
   
   
「心拍もしっかりしていますから、
 きっと大丈夫ですよ」


 軽く礼をして担当看護士が去って行くのを
 見送って、その方向から旧友で弁護士の
 速水が黒いスーツ姿の初老の男を伴って
 やって来るのに気が付いた。
 
 速水とは ”そのうち飲もうね”って話はしたが、
 まさかこんな形で再会する事になるとは……。


「―― 色々大変だったな」

「まぁね」


 短く言葉を交わしたあとは、自然に視線は速水の
 隣に立つ初老の男にいく。
 
 
「あ、こちらは警視庁の円谷警視」

「宜しく」

「はぁ ――」


 (警視?! 普通、初動捜査には
  出張って来ないレベルのキャリアじゃない。
  でもどうしてそんなお偉いさんがここに?)
  
  
「円谷警視は暴力団対策課の所属でね」

「ぼうりょくだん、たいさくか……?」


 あまり聞き慣れない部署名に小首を傾げた和巴に、
 円谷は言った。
 
 
「マル暴、と言ったらおわかりになるかな」

「?! あ、あの ―― た、確かにめぐみが
 傷を負った原因はあのやくざ者だと思いますけど、
 この事件はただの傷害なんじゃ ――」
 
「それがですね。**めぐみさんの血液から
 薬物反応が検出されたんです」
 
「薬物?」

「覚醒剤です」 
 
「! そんな……」

「で、今回の事件は私共本庁と事件現場がある所轄の
 新宿署との共同捜査になった次第で」     
 

  治療室の中から真緒が出てきた。
 
 
「真緒……」

「ちょっとの間、めぐみと母さんの事頼める?」

 どうゆう経緯でそうなったのか? は、
 分からないが、真緒もめぐみが刺された現場に
 偶然居合わせたらしく、これから円谷警視の
 事情聴取に応じるという。

「分かった」


 真緒は円谷に促されエレベーターの方へ向かった。
  
 
「……だから、速水くんも一緒だったのね」

「池谷先輩から連絡貰ったんだ。キミの従姉妹が
 刺されて重症だって。それに、本庁の円谷警視が
 動き出したって聞いて。居ても立ってもいられなく
 なってね」
 
「……もし、少年審判になったらめぐみは
 どうなるの?」
 
「覚醒剤の所持・使用の罪はあるけど、彼女は被害者
 でもある。その点は情状酌量されると思うが……
 なんせヤクザ絡みの事件だし、持っていた量と
 使ってた量が半端ないから一概には言えない。
 最悪の場合、検察官に逆送されて通常の公判になる」    

「……」

「公判でどんな結果が出たにせよ。これからは家族の
 支えが肝心になってくる。和巴」
 
「……ん?」

「しっかりしろ。僕で出来る事なら何でも協力する」

「ふふ……ったく、ナマ言っちゃってぇ。……でも、
 ありがとね。頼りにしてます」 

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