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悪あがきだと分かっちゃいるが
しおりを挟む京都の各務グループ本社・地下パーキング。
送迎車の後部座席へ匡煌はいつものように
深く腰掛け 専属ドライバー鈴木へ”出して”と告げた。
そのドライバーがエンジンをかけたと同時に
反対側のドアから静流が乗り込んできた。
「なんだ、フラワーアレンジメントの教室に
行ったんじゃなかったのか」
と、問いかけながら手は忙しなくスマホを操作し
何処かへリダイヤルし続けている。
そんな匡煌を見て、静流は呆れ。
「ったく、往生際が悪いというか、未練たらしい、
というか……あの和巴だって前を見て進み出したん
だから、あなたもそろそろ腹をくくったらどう?」
「だから、親父や兄貴の指示通り結婚はすると
言っただろ。他の事で外野にどうこう言われる
筋合いはない」
そして、匡煌はなかなか通話に応答しない
相手(和巴)に業を煮やし。
「京都駅に向かってくれ」
「だめよ」
「だから ――」
「和巴に直接会う気でしょ」
「ニュース見ただろ。渋谷区松濤在住の
中3女子がヤクザを庇って重症。**に聞いたが
あれは和巴の従姉妹らしい」
「だから? あなたが行って何になるのよ。
むしろ和巴に余計な心労与えるだけだわ」
「……俺に知られちゃマズい事でも東京にあるのか?」
「や、やぁね、そんなのあるハズないじゃない」
「そうか、ならいい」
と、一応納得した素振りは見せたが、
付き合いが長い分、言葉や仕草に現れる微かな
動揺は見抜けるようになる。
匡煌は和巴へのリダイヤルは止めて、
飛行機の座席予約をした。
行き先はもちろん、東京だ。
この後、大阪の関空から北海道・札幌へ移動。
各務の畜産部で管理運営してる牧場と直営
レストランを視察。
そこで現地の名士数名と会食の予定だが、
それは適当にはしょって。
東京へ飛ぶつもりだった。
静流は自分の仕事に加え結婚式の下準備で例年の倍は
忙しい。
匡煌の監視役、どころではないハズなのだ。
「鈴木さん、私は適当な最寄り駅で降りるわ」
「畏まりました」
静流は和巴の事でまだ何か、自分に隠している。
今のチャンスを逃したら、もう2度と和巴には
会えなくなるような気がして……匡煌は焦っていた。
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