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混迷
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新宿署から戻った真緒とバトンタッチして。
速水にマンションまで送って貰った頃には
かなり気持ちに余裕も出来て。
お風呂でゆっくり休んだ後、湯上がりのビールを
飲んでた所へ真守が帰ってきた。
あぁ ―― !
こっちの問題もあったんだ。
と、真守の顔を見て思い出し。
ため息が出た。
「もう ―― そんなあからさまにため息つかんでも
いいじゃん」
「ご飯は?」
「食ってきた」
「お風呂は?」
つい口が滑って「入ってきた」と答えてしまい、
”あっ”っと口を塞いだが後の祭り。
和巴は静かに怒りを押し殺した表情で ――
「そーう、入ってきたの」
「あ、やっぱメシを ――」
「そこに座って」
「だからメシ ――」
「いいから座りなさいっ」
「はい」
真守は弾かれたよう和巴の向かいに座った。
「もう、私の聞きたい事は分かってるよね」
「……とりあえずは、先に謝っておく。ごめんなさい」
「謝らなきゃいけないような事をしたの?」
「それは断じてない。けど……」
「けど?」
「多分、和ちゃんとか母さんとか父さんとかに
すげぇ迷惑かけると思うから」
「じゃあ、彼女との交際がいけない事だって
分かってるのね」
「……いけない事、だとは思ってない」
「真守……」
「俺はただ人を好きになっただけだ、藍子も俺のこと
大好きだって、言ってくれた」
「あのお嬢さんにはもうすぐ結婚するフィアンセがいるの。
あなたのしてる事はただの横恋慕じゃない」
「じゃあ各務匡煌がしてる事は俺よりタチが悪いな。
結局は藍子と和ちゃん天秤にかけて、役に立たない
和ちゃんを捨てたんじゃ」
”パシン!” 乾いた音がたった。
真守の頬が赤くなっている。
和巴に平手を食らったようだ。
見れば和巴は今にも泣き出してしまいそうな
辛い表情をしている。
真守はそんな和巴は見るに忍びなく、
目を逸して言葉を続ける。
「……兄弟は年の離れた兄さん1人だから、
俺と一緒にいると弟ができたみたいで凄く
落ち着くって言われた時は流石にショックだった
けど。俺はもう、彼女なしじゃ……」
「もし、弟以上のポジションを求めるなら藍子さんとは
別れなさい」
「そ、それは……それは出来ない」
「真守っ」
「……なぁ、和ちゃん。俺が次男坊から彼女を
奪ってやる」
「あんた、なんて大それた事を……」
和巴はテーブルの上で組んでいた両手へ
顔を伏せた。
「それにさ、和ちゃんだって1度くらいは
”藍子さえいなければ”って考えたんじゃないの?」
「もう1回殴られたい?」
「もう、ええ格好しぃは止めろよ。だいたい今どき
政略結婚なんてナンセンスもいいとこだろ。
誰かを犠牲にしての結婚なんて間違ってる」
「間違っていようが、正しかろうが、最終的には
当人同士が決めた事なんだから外野がどうこう
言える事じゃないの」
「だから目を真っ赤に泣き腫らしてまで好きだった
男もあっさり諦める?! 次男坊は未だに未練
タラタラで、手紙送りつけてくるのにっ!」
「煩い 煩い! あんたに私達の何が分かるって
のよ?!」
「何にも分かんねぇよっ。分かりたくもない」
和巴は再び顔を伏せ、嗚咽を漏らす。
「和ちゃん……ごめん……泣くなよ」
「……ねぇ、マモ。あんただって分かってるんでしょ。
……このままじゃあんた達、幸せになんかなれない」
「……いやだ……藍子とは絶対別れない」
「真守……」
それから真守は踵を返して
「今日は友達んとこ泊まる」と
足早に出て行った。
しばらくして顔を上げ、涙を拭った和巴は、
スマホを手に取り何処かへコールする。
R R R R R ――――
『はい、もしもし』
「巽さんですか? 和巴です」
『あぁ、めぐみちゃん大変だったね。僕や幸作で
出来る事があったら力になるよ』
「ありがと」
と、返事をしながら、何かあればすぐこうして
助けになってくれる友達がいるって、
素晴らしい事だと改めて感じている。
「でね、早速だけど、もうすぐそっちに真守が
行くと思うの ――」
身勝手な願いだが ”何にも聞かず泊めてあげて
欲しい” と頼み、通話を終えた。
巽・幸作カップルはこのマンションから
徒歩10分ほどの巽の実家で暮らしている。
速水にマンションまで送って貰った頃には
かなり気持ちに余裕も出来て。
お風呂でゆっくり休んだ後、湯上がりのビールを
飲んでた所へ真守が帰ってきた。
あぁ ―― !
こっちの問題もあったんだ。
と、真守の顔を見て思い出し。
ため息が出た。
「もう ―― そんなあからさまにため息つかんでも
いいじゃん」
「ご飯は?」
「食ってきた」
「お風呂は?」
つい口が滑って「入ってきた」と答えてしまい、
”あっ”っと口を塞いだが後の祭り。
和巴は静かに怒りを押し殺した表情で ――
「そーう、入ってきたの」
「あ、やっぱメシを ――」
「そこに座って」
「だからメシ ――」
「いいから座りなさいっ」
「はい」
真守は弾かれたよう和巴の向かいに座った。
「もう、私の聞きたい事は分かってるよね」
「……とりあえずは、先に謝っておく。ごめんなさい」
「謝らなきゃいけないような事をしたの?」
「それは断じてない。けど……」
「けど?」
「多分、和ちゃんとか母さんとか父さんとかに
すげぇ迷惑かけると思うから」
「じゃあ、彼女との交際がいけない事だって
分かってるのね」
「……いけない事、だとは思ってない」
「真守……」
「俺はただ人を好きになっただけだ、藍子も俺のこと
大好きだって、言ってくれた」
「あのお嬢さんにはもうすぐ結婚するフィアンセがいるの。
あなたのしてる事はただの横恋慕じゃない」
「じゃあ各務匡煌がしてる事は俺よりタチが悪いな。
結局は藍子と和ちゃん天秤にかけて、役に立たない
和ちゃんを捨てたんじゃ」
”パシン!” 乾いた音がたった。
真守の頬が赤くなっている。
和巴に平手を食らったようだ。
見れば和巴は今にも泣き出してしまいそうな
辛い表情をしている。
真守はそんな和巴は見るに忍びなく、
目を逸して言葉を続ける。
「……兄弟は年の離れた兄さん1人だから、
俺と一緒にいると弟ができたみたいで凄く
落ち着くって言われた時は流石にショックだった
けど。俺はもう、彼女なしじゃ……」
「もし、弟以上のポジションを求めるなら藍子さんとは
別れなさい」
「そ、それは……それは出来ない」
「真守っ」
「……なぁ、和ちゃん。俺が次男坊から彼女を
奪ってやる」
「あんた、なんて大それた事を……」
和巴はテーブルの上で組んでいた両手へ
顔を伏せた。
「それにさ、和ちゃんだって1度くらいは
”藍子さえいなければ”って考えたんじゃないの?」
「もう1回殴られたい?」
「もう、ええ格好しぃは止めろよ。だいたい今どき
政略結婚なんてナンセンスもいいとこだろ。
誰かを犠牲にしての結婚なんて間違ってる」
「間違っていようが、正しかろうが、最終的には
当人同士が決めた事なんだから外野がどうこう
言える事じゃないの」
「だから目を真っ赤に泣き腫らしてまで好きだった
男もあっさり諦める?! 次男坊は未だに未練
タラタラで、手紙送りつけてくるのにっ!」
「煩い 煩い! あんたに私達の何が分かるって
のよ?!」
「何にも分かんねぇよっ。分かりたくもない」
和巴は再び顔を伏せ、嗚咽を漏らす。
「和ちゃん……ごめん……泣くなよ」
「……ねぇ、マモ。あんただって分かってるんでしょ。
……このままじゃあんた達、幸せになんかなれない」
「……いやだ……藍子とは絶対別れない」
「真守……」
それから真守は踵を返して
「今日は友達んとこ泊まる」と
足早に出て行った。
しばらくして顔を上げ、涙を拭った和巴は、
スマホを手に取り何処かへコールする。
R R R R R ――――
『はい、もしもし』
「巽さんですか? 和巴です」
『あぁ、めぐみちゃん大変だったね。僕や幸作で
出来る事があったら力になるよ』
「ありがと」
と、返事をしながら、何かあればすぐこうして
助けになってくれる友達がいるって、
素晴らしい事だと改めて感じている。
「でね、早速だけど、もうすぐそっちに真守が
行くと思うの ――」
身勝手な願いだが ”何にも聞かず泊めてあげて
欲しい” と頼み、通話を終えた。
巽・幸作カップルはこのマンションから
徒歩10分ほどの巽の実家で暮らしている。
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