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仕事納め
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12月の最終週。
仕事納めは曙小町先生の新作短編小説の原稿
受け取り。
場所はあの夢美乃先生が定宿にしている
オーシャンビュー東京。
延々4時間待たされて。
無事、原稿はGET。1階に降りて。
素晴らしい景観の中庭へ目を奪われ ――
気が付けば、色とりどりの錦鯉がゆらゆらと
気持ち良さ気に泳ぐ池の所に来ていた。
詩音さんやゼンさん、他、編集部の皆んなには
悪いが今日の仕事を以ってまたしばらく休職させて
貰う予定だ。
めぐみの処遇如何に係わらず退職も考えてる。
”私のせいじゃない”って、皆んなは言ってくれる
けど。
私が叔母さんからめぐみの擁護を任されていたのは
事実で。
いくら仕事があったからってそれを疎かにしていい
という理由にはならない。
未成年者のこういった事件はマスコミにとって
格好の長期ネタだ。
深く切り込めば・切り込むほど、その記事は売れる。
処遇決定が長引けば興味を持つ記者もそれだけ増えて
いつかは私の事もバレる。
そうなってからでは遅いのだ。
色々な事を考え込み過ぎて、
隣にあの夢美乃先生が立った事にも気がつかなかった
「……ねぇ、小鳥遊、さん、だったよね?」
「あ ―― 気が付きませんで、すみません」
「いや、いいんだよ。でも、かなり深刻そうな
顔してたからちょっと気になって」
「深刻? 私、そんな顔してました?」
「うん。眉間にこーんな深いシワ作ってね」
「そう、ですか……」
「……恋のお悩み?」
「そうなら、少しは気が楽になるんですけど」
「そこのティールームでハイティーでもどーお?
今の季節、イチゴ系のプティフールが絶品なんだ」
先生のそんなお薦めコメントを聞いた途端、
頭の中に様々な苺スウィーツが展開される。
思わず生唾ゴックン。
断る理由はない。
私は先生からのお誘いに笑顔で応えた。
三段重ねの飾り皿に、
プティフールとミニサンドウィッチとスコーンが
綺麗に並べられた。
英国式の本格的なハイティー。
本日のお茶は心身ともに疲れを癒やしてくれそうな
甘い香りの立つシナモンティーだ。
「あ、そうそう、また仕事の話で申し訳ないんだけど」
「はい。何でしょう?」
「詩学館で掲載してた本がやっと完結してね。キミの
ところの神谷くんに打診されてた連載、受けられそう
なんだ」
「本当ですか?? 神谷も喜びます」
「でも、お宅の連載を受けるに当たってひとつだけ
条件を付けさせて貰う」
条件? 一体何だろ……。
一般的に考えて、原稿料のアップ、とか?
先生の本はひと昔前なら”たかが同性愛モノ”
と蔑まれていたジャンルに属するBL本。
でも今では社会全体の風潮が後押しし。
BLGTへの関心が高まってきた事も良い方向に
働き。
発売する度、増刷がかかるほどの売れ行きだ。
「あ、あの ―― 原稿料の事でしたら、誠に申し訳
ございませんが私1人では判断しかねますので」
「ハハハ ―― そりゃまぁ、お金はたくさん貰えるに
こした事はないけど。今回の連載で希望する原稿料は
相場で構わないよ」
「は? では、条件って……」
先生は形の良い口角を綺麗に上げ、
にっこり微笑んでこう言った。
「この連載から僕の担当はキミがやるんだ。
いいね?」
「え ―― そ、そんな……」
「神谷くんはもちろん、羽柴編集長にも結城社長にも
了解は取ってあるから。断れないよ」
うわっ、手回しのいい事で。
別れ際、先生に言われた。
「僕はキミが羨ましい」
「えっ……」
「いい上司と同僚を持ったね。
しんどい時は遠慮せず彼らにも頼るといいよ。
じゃ、年明けから僕の担当宜しくね」
先生は”良いお年を~”と手を振りながら去って行った。
「……」
仕事納めは曙小町先生の新作短編小説の原稿
受け取り。
場所はあの夢美乃先生が定宿にしている
オーシャンビュー東京。
延々4時間待たされて。
無事、原稿はGET。1階に降りて。
素晴らしい景観の中庭へ目を奪われ ――
気が付けば、色とりどりの錦鯉がゆらゆらと
気持ち良さ気に泳ぐ池の所に来ていた。
詩音さんやゼンさん、他、編集部の皆んなには
悪いが今日の仕事を以ってまたしばらく休職させて
貰う予定だ。
めぐみの処遇如何に係わらず退職も考えてる。
”私のせいじゃない”って、皆んなは言ってくれる
けど。
私が叔母さんからめぐみの擁護を任されていたのは
事実で。
いくら仕事があったからってそれを疎かにしていい
という理由にはならない。
未成年者のこういった事件はマスコミにとって
格好の長期ネタだ。
深く切り込めば・切り込むほど、その記事は売れる。
処遇決定が長引けば興味を持つ記者もそれだけ増えて
いつかは私の事もバレる。
そうなってからでは遅いのだ。
色々な事を考え込み過ぎて、
隣にあの夢美乃先生が立った事にも気がつかなかった
「……ねぇ、小鳥遊、さん、だったよね?」
「あ ―― 気が付きませんで、すみません」
「いや、いいんだよ。でも、かなり深刻そうな
顔してたからちょっと気になって」
「深刻? 私、そんな顔してました?」
「うん。眉間にこーんな深いシワ作ってね」
「そう、ですか……」
「……恋のお悩み?」
「そうなら、少しは気が楽になるんですけど」
「そこのティールームでハイティーでもどーお?
今の季節、イチゴ系のプティフールが絶品なんだ」
先生のそんなお薦めコメントを聞いた途端、
頭の中に様々な苺スウィーツが展開される。
思わず生唾ゴックン。
断る理由はない。
私は先生からのお誘いに笑顔で応えた。
三段重ねの飾り皿に、
プティフールとミニサンドウィッチとスコーンが
綺麗に並べられた。
英国式の本格的なハイティー。
本日のお茶は心身ともに疲れを癒やしてくれそうな
甘い香りの立つシナモンティーだ。
「あ、そうそう、また仕事の話で申し訳ないんだけど」
「はい。何でしょう?」
「詩学館で掲載してた本がやっと完結してね。キミの
ところの神谷くんに打診されてた連載、受けられそう
なんだ」
「本当ですか?? 神谷も喜びます」
「でも、お宅の連載を受けるに当たってひとつだけ
条件を付けさせて貰う」
条件? 一体何だろ……。
一般的に考えて、原稿料のアップ、とか?
先生の本はひと昔前なら”たかが同性愛モノ”
と蔑まれていたジャンルに属するBL本。
でも今では社会全体の風潮が後押しし。
BLGTへの関心が高まってきた事も良い方向に
働き。
発売する度、増刷がかかるほどの売れ行きだ。
「あ、あの ―― 原稿料の事でしたら、誠に申し訳
ございませんが私1人では判断しかねますので」
「ハハハ ―― そりゃまぁ、お金はたくさん貰えるに
こした事はないけど。今回の連載で希望する原稿料は
相場で構わないよ」
「は? では、条件って……」
先生は形の良い口角を綺麗に上げ、
にっこり微笑んでこう言った。
「この連載から僕の担当はキミがやるんだ。
いいね?」
「え ―― そ、そんな……」
「神谷くんはもちろん、羽柴編集長にも結城社長にも
了解は取ってあるから。断れないよ」
うわっ、手回しのいい事で。
別れ際、先生に言われた。
「僕はキミが羨ましい」
「えっ……」
「いい上司と同僚を持ったね。
しんどい時は遠慮せず彼らにも頼るといいよ。
じゃ、年明けから僕の担当宜しくね」
先生は”良いお年を~”と手を振りながら去って行った。
「……」
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