眠り王子と恋の夢

白妙スイ@1/9新刊発売

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好きの気持ちの行くところ③

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「あー、良かったねぇ、無事に準備も終わって」
 うーん、と伸びをしながらついた、帰り道。つむぎは満足げにそう言った。
 秋も深まってきて、夕方はもう濃いオレンジ色になっていた。きっと明日はいいお天気になるだろう。
 準備もすべて終わった。あとは明日、早めに登校して最後のセッティングをするだけ。
 きっとうまくいく。だってあれだけ準備を丁寧にしたのだから。
 そしてきっと楽しい学園祭になる。お店はたくさん出るし、展示なんかする部活もあるし、なにしろ二日間あるのだ。見て回る時間もたくさんある。
「そうだね。なかなか大変だったけど……」
 李奈も相づちを打ってくれた。それは穏やかで、ここまでの数日すれ違っていたのが嘘のようで……。
 つむぎはなんとなく感じた。きっといい方向へ進む話なのだろう。
 そしてその通り、学校からだいぶ離れたところで、李奈が切り出した。
「あのね、つむぎ……こないだは、ごめんね」
 つむぎは李奈のほうを見た。李奈はちょっと眉を寄せて、心からの言葉だという表情をしていた。だからつむぎは微笑んだ。安心していいのだと言いたくて。
「ううん。私も気づかえなかったんだし……」
「そんなことないよ。つむぎは全然悪くない」
 つむぎの言葉ははっきり否定された。李奈は小さく首を振って、前を向く。
 歩きながらの話だったけれど、そこまでとは違う、真剣な空気が漂う。でもそれはどこか穏やかでもあった。
「かっとしちゃって……バカだよね、私が片想いしてるのと同じで、盆城くんだって好きな子がいるんだってこと、全然考えなかったの」
 李奈は少しずつ話していく。
 そんなことはないのに。空はつむぎ本人すら気づかないほど静かに片想いを向けていたのだから、ほかのひとがそれを悟らなくてもちっともおかしくないのだ。
「それがショックで、酷いこと言っちゃった。ほんとにごめん」
 李奈はつむぎのほうを見た。小さくうなずく。頭を下げる代わりに、だろう。
 つむぎは首を振った。
「ううん。急にあんなこと知っちゃったら、おどろくし嫌な気持ちになって当たり前だと思う。それに、私がだまってたのは本当なんだし」
 少しずつ。
 お互い、心にあったことを話していく。
 それによって、空気が元通り、ゆっくりとではあるけれど親友とのものに戻っていくのをつむぎは感じた。それはとても心地良い感覚で。
 そのうちに、ふと李奈が言った。
「つむぎはさ、深美先輩と恋人でいるのはもうちょっと、だっけ……」
 ぼかされたけれど、意味はすぐわかった。つむぎはどきっとしてしまう。
 いばら先輩との恋人の期間の終わり。もう、あと数日。
 学園祭が終わって、少ししたら、そのときはきてしまうのだ。
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