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初めての夜は突然に

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「いいか?」

 秋木の手。

 今度は下のほうへ伸びてきた。

 俺はびくりとしてしまう。

 いいに決まっているが、必要なものがない。

 一応、持ってきたバッグには入っているが、この部屋まで持ってきてはいない。

 それもまた油断である。

「え、えっと、ローションとゴムを……」

「……またか。まったく、要領の悪い奴だ」

 あたふた言った俺に、秋木はため息をついた。

 確かにそういうことになるので、俺は「すみません……」と言うしかない。

「まぁ、いい。このへんに確か……」

 しかし秋木は俺に、リビングへ取りに行ってこいとは言わなかった。

 代わりに手を伸ばして、サイドテーブルの引き出しに手をかける。

 そこから出てきたのは、箱のゴムと、ローションのボトル。

 どちらも使いかけだった。

 俺は意外に思うやら、少々胸が痛むやら。

 誰に使ったのか、なんて思ってしまったのだ。
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