婚約破棄された後に神託で聖女に選ばれました。英雄と幸せになります!

佐藤 すみれ

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9.エリーゼが寝てる時に、大司教と民衆と父親 

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 いつものルーティンと違うことをする。気まぐれなのか、そうせねばならなかったのかは分からないが、国一番の大聖堂で大司教を務めるベネディクト・クラウディアスは深夜に女神像へ祈るため聖堂に訪れていた。

 皆、寝静まっているため誰もいない聖堂でベネディクトの足音だけが響く。ベネディクトは長いヒゲも髪も白くなってシワもある老人だが、背筋はピンとしており足取りはしっかりとしている。目元には穏やかそうなシワが刻まれている。

「(ふぅ…流石にこの時間は疲れが溜まってくるな。祈りを捧げたら休もう)」

 夜の女神像は穏やかに佇んでいる。その前に立ち、カサついた手を組み祈りを捧げる。すると途端に視界が白くなり優しげで厳かな声が頭に響いてきた。


 ーーエリーゼ・フォン・ヴァルデンを聖女とせよーー


 遠くで鐘の音がする。ベネディクト・クラウディアスは直感で理解した。今自分は女神様から神託を授かったのだと。

「はっ…はい、かしこまりました。」

 膝をつき深く頭を下げてる。返事をする声が上擦ってしまう。感動で身体が小刻みに震えていた。
 神々しい光は消えいつもの聖堂に戻っていた。外で人々のざわめきが聞こえてくる。

「(なんと…神託が…聖女が…これは一大事だ。すぐに王に知らせなくては)」

 立ち上がると素早く城へ向かう準備を行った。いつのまにか馬車の準備も出来ているようだ。他の者も神聖な光にただ事ではないと行動に起こしてくれていたようだ。

「たった今、女神様より神託を授かった。城に行き王にお伝えしてくる。留守を頼んだ」

「はい。いってらっしゃいませ」


 ~~~~~


 街中の人間が起こされた。夜に鳴らないはずの鐘が鳴り響いたからだ。もしくは明るい光に照らされたから…
 たくさんの人間が目を擦り起きる。音と光に何事だと各々が家から飛び出していた。

 街にはたくさんの人が光を浴びる大聖堂を見上げている。そのまま、様子を見に向かった行くため人々で道が塞がりそうだ。


 光が消えた大聖堂の前は人で溢れ返っている。口々に…今起きた事を教えろ、どうなっているんだと声を上げている。また祈りを捧げている人々もいる。そんな中、馬車が出てきた。しかしすぐに民衆に囲まれてしまった。

 司祭様や司教様が危ないから退きなさいと声をあげている。それでも多く人間が馬車から離れない。すると中に乗っていたベネディクト・クラウディアスが窓から顔を出して声を張り上げた。

「皆の者、神託だ!そのため城へと向かいたい道を開けてくれ!頼む……」

 神託…と聞いた瞬間、良い信託と判断したのであろう民衆は歓声を上げた。

「おい!大司教様を城へ!!道を開けろーー」

 体格のいい男性が怒鳴り声をあげ指示をする。神託ならば協力しなければならないと感じた人々は、それが呼び水となり、道を開けろ!道を開けろ!と統率の取れた動きで道が開かれていった。
 誰かが始めたのか道なりに灯火ともしびを持った人が増え、暗かった街に綺麗な明かりの道が出来、その中を馬車は走っていった。

 民衆は私たちが神託を城へ届けたんだ…と誇らしげに家へと返っていった。


 ~~~~~

 エリーゼの父親であるエドワード・フォン・ヴァルデンは馬車で明るい夜道を駆け抜けていった。
 いつもなら暗くゆっくりとしか走れない道も街の人間の松明で明るい。しかも松明は城まで続いている。

「(ありがたいが、どういう事だ?)」

 怪訝に思いながらも城に到着する。丁度、社交界シーズンが始まる所だったので、複数の貴族が王都に来ており、城にはすでに何人か到着していた。 下位貴族もいる、きっと情報を早く入手するため来ているのだろう。見知った顔を見つけ、挨拶するために声をかけようとすると、早足でこちらにくる陛下の秘書官に呼ばれる。

「ヴァルデン侯爵様!ヴァルデン侯爵様!!すぐにこちらへいらしてください」

 着いた途端に呼ばれ面食らうも陛下の秘書官のため大人しく着いていく。連れてこられたのは陛下の執務室で、中には国の上層部が揃っていた。挨拶もそこそこにすぐに少数での話し合いが始まった。

「(陛下に、宰相に、五大公爵…そして侯爵の私?場違いじゃないのか?)」

「すでに聞いているかと思うが、先ほど神託があったーー」


 エドワードは叫びそうになるのをなんとか堪えて、指示を仰ぎ、なんとか帰りの馬車に乗り込んだ。
 城に入った時は暗かったのに、外は綺麗な朝焼けになっていた。いまだに呆気に取られているが気合を入れ、家族の…娘の待つ家へと急いだ。


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