12 / 43
12.婚約は「円満に解消」って言ったのそっちだろ
しおりを挟む
侯爵令嬢として恥ずかしくない服を持ってはいるが、今日はエルヴァイン領へ向かうために服の新調に来ている。
「アニタ、エルヴァイン領へ行くための服はどんな生地にしたらいいと思う?」
「そうですね、動きやすいように軽めの生地がいいのではないでしょうか?コーラル礼拝堂は海辺ですから潮風があるかもしれません。上着があるといいでしょうね。」
生地を見たりレースを選んだりするのは楽しい。長距離の移動にもなるから柔らかい生地で軽いのを探そう。
「しかしお嬢様。聖女のイメージで服を作らなくてもいいのですか?」
「聖女のイメージの服?何も言われてないからいいんじゃない?」
聖女に選ばれたとしても私自身は何も変わってない。特別な力が現れたわけでもない。女神様からのお言葉はあれ以来ないし、今は言われたことをするしかない。だから服は自分の好きなものでいいと思うのよね…。言い訳だけど。
「ご注文ありがとうございました。出来上がりましたらご連絡いたします」
充実した買い物が出来て満足気に店を出る。すると花束を持って満面の笑みを浮かべたルーファス様がいた。いや、ドン引きでしょ。アニタが私の前に出てルーファス様からの視線から遮ってくれる。
「お嬢様、お下がりください」
「君…僕は不審者ではないよ。……エリーゼ、この花を君にプレゼントさせてくれ。向こうのレストランを予約しているから一緒に食事をしないかい」
「アニタ、ありがとう。大丈夫よ。ルーファス様、申し訳ありませんが、予定がありますのでお断りいたします」
アニタを下がらせ、ルーファス様と向き合う。本当になんの用事なの。まぁ、わかってはいる。神託で聖女に選ばれたから惜しくなったってところよね。だからそんな変な花束にレストランなんて言いながら擦り寄ってきてるのよね。クソ野郎が。
「少しくらい、いいじゃないか。食事じゃなくてデザートだけでも良い。……僕には君が必要だったんだ。だが、あの女が僕を誘惑して心を曇らせてたんだ。君には申し訳なく思っている。出来たらまた婚約者になって欲しい。これからの事を話し合おう」
なんの話し合いだよ!お前を排除する方法?と本音を言いたいが一応、ルーファスの方が身分は上だし店の前で騒ぎを起こすのは良くない。
「私達は、円満に終わりました。そうしたのはルーファス様でしょう」
「話を聞いてくれ、そうすれば分かり合えるから…」
そういいながら、私の手首を掴んできた。痛い。跡になったらどうしてくれる。
「おやめください!離して!!」
「いいからこっちに来てくれ!話し合おう」
脛でも蹴ってやろうと足を振りかぶるより早くルーファスの腕を捻り上げてくれた人がいた。
「やめろ。嫌がってるじゃないか」
離された手首をさする。助けてくれた人が来てくれてホッとする。流石にどうしようかと思っていた。
「離せ。私を誰だと思っている!!」
「知らないなぁ。だが、女性に乱暴するやつは見過ごせないんでね」
「なんだと貴様っ…えっ!?…」
助けてくれた男性は平民の服を着ているが、雰囲気が明らかに平民ではなく服も似合っていない。ルーファスは知り合いなのか驚いた顔をしている。
「あなた様がなぜこんなところに」
「おや、私を知っているのか、今はお忍びなんで他言無用だ。君も女性に乱暴してたなんて噂立てられたくないだろ」
ルーファスは助けてくれた男性にすみませんといい、私には悪かったと行って去っていった。言葉の差ね。ムカつくやつだわ。
「危ないところを助けていただき、誠にありがとうございました」
「いいえ、お役に立てたのなら幸いです。危ないですし、家までお送りします」
今、私に何かあって国が滅んでも不味いし、素直に送ってもらうことにした。家に着いたのでせっかくだしお礼でもとお茶に誘ったが断られてしまった。
「ありがとうございます。ですがそれは今度に、それではまた後日」
「えぇ、ありがとうございました」
にっこり笑って帰っていった男性の背を見ながら、そういえばお名前聞いてなかったわ。聞いたおけばよかったなとぼんやり思う。
「お嬢様。無事に帰れてよかったですわ…それにしてもまた後日だなんて、お約束したんですか?」
「あら?そういえば、約束なんてしてないんだけど、どういうことかしらね?」
首を傾げながら家の中へ入っていく。素敵な人だったのでまた会えたら嬉しい。最悪な日になりそうだったが、あの人のおかげで気持ちは浮上した。お父様に報告して抗議してもらおう。聖女になったんだしそれくらい許されるだろう。今はしばらく、あの人のことを考えていたいな。
「アニタ、エルヴァイン領へ行くための服はどんな生地にしたらいいと思う?」
「そうですね、動きやすいように軽めの生地がいいのではないでしょうか?コーラル礼拝堂は海辺ですから潮風があるかもしれません。上着があるといいでしょうね。」
生地を見たりレースを選んだりするのは楽しい。長距離の移動にもなるから柔らかい生地で軽いのを探そう。
「しかしお嬢様。聖女のイメージで服を作らなくてもいいのですか?」
「聖女のイメージの服?何も言われてないからいいんじゃない?」
聖女に選ばれたとしても私自身は何も変わってない。特別な力が現れたわけでもない。女神様からのお言葉はあれ以来ないし、今は言われたことをするしかない。だから服は自分の好きなものでいいと思うのよね…。言い訳だけど。
「ご注文ありがとうございました。出来上がりましたらご連絡いたします」
充実した買い物が出来て満足気に店を出る。すると花束を持って満面の笑みを浮かべたルーファス様がいた。いや、ドン引きでしょ。アニタが私の前に出てルーファス様からの視線から遮ってくれる。
「お嬢様、お下がりください」
「君…僕は不審者ではないよ。……エリーゼ、この花を君にプレゼントさせてくれ。向こうのレストランを予約しているから一緒に食事をしないかい」
「アニタ、ありがとう。大丈夫よ。ルーファス様、申し訳ありませんが、予定がありますのでお断りいたします」
アニタを下がらせ、ルーファス様と向き合う。本当になんの用事なの。まぁ、わかってはいる。神託で聖女に選ばれたから惜しくなったってところよね。だからそんな変な花束にレストランなんて言いながら擦り寄ってきてるのよね。クソ野郎が。
「少しくらい、いいじゃないか。食事じゃなくてデザートだけでも良い。……僕には君が必要だったんだ。だが、あの女が僕を誘惑して心を曇らせてたんだ。君には申し訳なく思っている。出来たらまた婚約者になって欲しい。これからの事を話し合おう」
なんの話し合いだよ!お前を排除する方法?と本音を言いたいが一応、ルーファスの方が身分は上だし店の前で騒ぎを起こすのは良くない。
「私達は、円満に終わりました。そうしたのはルーファス様でしょう」
「話を聞いてくれ、そうすれば分かり合えるから…」
そういいながら、私の手首を掴んできた。痛い。跡になったらどうしてくれる。
「おやめください!離して!!」
「いいからこっちに来てくれ!話し合おう」
脛でも蹴ってやろうと足を振りかぶるより早くルーファスの腕を捻り上げてくれた人がいた。
「やめろ。嫌がってるじゃないか」
離された手首をさする。助けてくれた人が来てくれてホッとする。流石にどうしようかと思っていた。
「離せ。私を誰だと思っている!!」
「知らないなぁ。だが、女性に乱暴するやつは見過ごせないんでね」
「なんだと貴様っ…えっ!?…」
助けてくれた男性は平民の服を着ているが、雰囲気が明らかに平民ではなく服も似合っていない。ルーファスは知り合いなのか驚いた顔をしている。
「あなた様がなぜこんなところに」
「おや、私を知っているのか、今はお忍びなんで他言無用だ。君も女性に乱暴してたなんて噂立てられたくないだろ」
ルーファスは助けてくれた男性にすみませんといい、私には悪かったと行って去っていった。言葉の差ね。ムカつくやつだわ。
「危ないところを助けていただき、誠にありがとうございました」
「いいえ、お役に立てたのなら幸いです。危ないですし、家までお送りします」
今、私に何かあって国が滅んでも不味いし、素直に送ってもらうことにした。家に着いたのでせっかくだしお礼でもとお茶に誘ったが断られてしまった。
「ありがとうございます。ですがそれは今度に、それではまた後日」
「えぇ、ありがとうございました」
にっこり笑って帰っていった男性の背を見ながら、そういえばお名前聞いてなかったわ。聞いたおけばよかったなとぼんやり思う。
「お嬢様。無事に帰れてよかったですわ…それにしてもまた後日だなんて、お約束したんですか?」
「あら?そういえば、約束なんてしてないんだけど、どういうことかしらね?」
首を傾げながら家の中へ入っていく。素敵な人だったのでまた会えたら嬉しい。最悪な日になりそうだったが、あの人のおかげで気持ちは浮上した。お父様に報告して抗議してもらおう。聖女になったんだしそれくらい許されるだろう。今はしばらく、あの人のことを考えていたいな。
55
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
「異常」と言われて追放された最強聖女、隣国で超チートな癒しの力で溺愛される〜前世は過労死した介護士、今度は幸せになります〜
赤紫
恋愛
私、リリアナは前世で介護士として過労死した後、異世界で最強の癒しの力を持つ聖女に転生しました。でも完璧すぎる治療魔法を「異常」と恐れられ、婚約者の王太子から「君の力は危険だ」と婚約破棄されて魔獣の森に追放されてしまいます。
絶望の中で瀕死の隣国王子を救ったところ、「君は最高だ!」と初めて私の力を称賛してくれました。新天地では「真の聖女」と呼ばれ、前世の介護経験も活かして疫病を根絶!魔獣との共存も実現して、国民の皆さんから「ありがとう!」の声をたくさんいただきました。
そんな時、私を捨てた元の国で災いが起こり、「戻ってきて」と懇願されたけれど——「私を捨てた国には用はありません」。
今度こそ私は、私を理解してくれる人たちと本当の幸せを掴みます!
【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです
星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。
しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。
契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。
亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。
たとえ問題が起きても解決します!
だって私、四大精霊を従える大聖女なので!
気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。
そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?
「醜い」と婚約破棄された銀鱗の令嬢、氷の悪竜辺境伯に嫁いだら、呪いを癒やす聖女として溺愛されました
黒崎隼人
恋愛
「醜い銀の鱗を持つ呪われた女など、王妃にはふさわしくない!」
衆人環視の夜会で、婚約者の王太子にそう罵られ、アナベルは捨てられた。
実家である公爵家からも疎まれ、孤独に生きてきた彼女に下されたのは、「氷の悪竜」と恐れられる辺境伯・レオニールのもとへ嫁げという非情な王命だった。
彼の体に触れた者は黒い呪いに蝕まれ、死に至るという。それは事実上の死刑宣告。
全てを諦め、死に場所を求めて辺境の地へと赴いたアナベルだったが、そこで待っていたのは冷徹な魔王――ではなく、不器用で誠実な、ひとりの青年だった。
さらに、アナベルが忌み嫌っていた「銀の鱗」には、レオニールの呪いを癒やす聖なる力が秘められていて……?
私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?
みおな
ファンタジー
私の妹は、聖女と呼ばれている。
妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。
聖女は一世代にひとりしか現れない。
だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。
「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」
あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら?
それに妹フロラリアはシスコンですわよ?
この国、滅びないとよろしいわね?
婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ
水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。
それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。
黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。
叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。
ですが、私は知らなかった。
黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。
残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?
捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています
h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。
自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。
しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━?
「おかえりなさいませ、皇太子殿下」
「は? 皇太子? 誰が?」
「俺と婚約してほしいんだが」
「はい?」
なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる