婚約破棄された後に神託で聖女に選ばれました。英雄と幸せになります!

佐藤 すみれ

文字の大きさ
29 / 43

29.聖女エリーゼと癒しの雫

しおりを挟む
 ラグナ・ファルナ火山に行く日です。
 昨日は祈った瞬間に火山が噴火したから何か意味があるかと思ったけど、特に何もなかった。
 お屋敷に勤めてるメイドからもいつもの噴火ですと言われてしまった。
 神託やドラゴン関係かと思ったので何もなくて安心した。
 
 気を取り直して、出発準備です。ゼクス様からもらった膝掛けよし!マフラーの用意もよし!
 火山へは私とアニタ、ゼクス様たち第一騎士団でレグルス伯爵様は行かないらしい。昨日の教会回りでガックリ来てたからね。

「ラグナ・ファルナ火山は魔物が多くいると聞きました。危ないので基本的には馬車から出ないでください」

「はい、わかりました。皆様、お気をつけて」

 魔物が出ると言われたから馬車の前と後に分かれて護衛してくれている。魔物がたくさん出るかと思ったけれど、そんな事はなく未だに出会ってない。今回も全く出ないで安全な旅なのかなと思っていたらゼクス様が声を張り上げた。

「エリーゼ、魔物が出た。絶対に出てくるな!」

 馬が鳴き、馬車が止まる。前の方から剣を構える音と低く恐ろしい唸り声が聞こえてきた。アニタと身を寄せ合い震える。怖くてゼクス様からもらった膝掛けを握りしめる。

「お、お嬢様は私が守りますからっ」

「大丈夫、騎士団の方々は強いから…大丈夫…」

 しばらくすると音が静まり、副リーダーの人がきた。

「もう大丈夫です。安心してください。少し片付けてからまた進みますので、しばらくお待ちください」


 副リーダーの人は早口で言うとサッとまた行ってしまった。魔物の脅威は無くなったけれど、怖くてまだ身体が震えている。姿は見ていなくて声だけなのにこんな震えてしまうなんて情けない。それにゼクス様が来なかった事に心配が募る。

「皆さんは大丈夫でしたか?」

 気になるなら言っちゃえ、と窓から顔を出す。とたんにムッと血の匂いがしてきて顔をしかめる。
 一番に目に飛び込んできたのは大きな魔物の死骸だった。悲鳴をあげそうになるのを飲み込む。その近くで倒れてる人や負傷してる人が多くいた。

「そんなっ…」

「聖女様、見ない方がいい!まだ出発が出来そうにないのでしばらくお待ちください」

 副リーダーの人が声をかけてくれる。何か手伝える事はないか周囲を見渡すと、ゼクス様が魔物の近くで頭から血を流し座り込んでいた。俯いていて顔がよく見えない。

「……ゼクスさま!!」

 窓枠をぎゅっと握りしめる叫ぶ。

 瞬間、水滴が辺り一面にブワッと広がり負傷している人に振り注いでいく。太陽の光に反射してキラキラして見える。
 構わず馬車から降りてゼクス様の元へいく。

「ゼクス様っ、だいじょう……ぶ?」

 倒れてた人や負傷した人が驚きの声を上げる。キラキラした水の雫で傷が癒やされたようだ。
 ゼクス様も顔を上げ驚いている。

「エリーゼ様、これは…あなたか?」

「えぇ…と、そうなんだけど。私にもよくわからないです」

 傷が癒えた騎士団の皆の行動は早かった。傷は治っているけれど、血まみれなので拭き、テキパキと出発準備を整えてくれた。

「エリーゼ様。皆の傷を癒してくれてありがとう。死亡者は出なかったので安心してくれ。言いたい事はたくさんあるけれど、魔物の死骸のそばは危ないのですぐに出発します」

「えぇ、ありがとうございます」

 気の利いた事も言えず再び馬車に乗り頂上を目指す。今のってなんなのかしら…コーラル礼拝堂で水の力と言われたけど、この事なんだろうか。まだ魔法使いの人に魔法教わってないのに使えた?
 騎士団の人が誰も欠けずに居たことが本当に良かった。わからないことが多いけれど、この力があって良かった。

もう半分以上登ってきている。さっきの魔物の他にも出てきてはいるだろうけど、すぐに逃げていくようで早く進むことができた。
馬車が止まる。

「エリーゼ様、馬車はここまでです。ここから歩くことになるのでお降りください」

とうとう徒歩で登る時が来たようだ。マフラーを巻いて馬車を降りる。
思ったよりも、風が強くて寒いですわ。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

「異常」と言われて追放された最強聖女、隣国で超チートな癒しの力で溺愛される〜前世は過労死した介護士、今度は幸せになります〜

赤紫
恋愛
 私、リリアナは前世で介護士として過労死した後、異世界で最強の癒しの力を持つ聖女に転生しました。でも完璧すぎる治療魔法を「異常」と恐れられ、婚約者の王太子から「君の力は危険だ」と婚約破棄されて魔獣の森に追放されてしまいます。  絶望の中で瀕死の隣国王子を救ったところ、「君は最高だ!」と初めて私の力を称賛してくれました。新天地では「真の聖女」と呼ばれ、前世の介護経験も活かして疫病を根絶!魔獣との共存も実現して、国民の皆さんから「ありがとう!」の声をたくさんいただきました。  そんな時、私を捨てた元の国で災いが起こり、「戻ってきて」と懇願されたけれど——「私を捨てた国には用はありません」。  今度こそ私は、私を理解してくれる人たちと本当の幸せを掴みます!

【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです

星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。 しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。 契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。 亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。 たとえ問題が起きても解決します! だって私、四大精霊を従える大聖女なので! 気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。 そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?

「醜い」と婚約破棄された銀鱗の令嬢、氷の悪竜辺境伯に嫁いだら、呪いを癒やす聖女として溺愛されました

黒崎隼人
恋愛
「醜い銀の鱗を持つ呪われた女など、王妃にはふさわしくない!」 衆人環視の夜会で、婚約者の王太子にそう罵られ、アナベルは捨てられた。 実家である公爵家からも疎まれ、孤独に生きてきた彼女に下されたのは、「氷の悪竜」と恐れられる辺境伯・レオニールのもとへ嫁げという非情な王命だった。 彼の体に触れた者は黒い呪いに蝕まれ、死に至るという。それは事実上の死刑宣告。 全てを諦め、死に場所を求めて辺境の地へと赴いたアナベルだったが、そこで待っていたのは冷徹な魔王――ではなく、不器用で誠実な、ひとりの青年だった。 さらに、アナベルが忌み嫌っていた「銀の鱗」には、レオニールの呪いを癒やす聖なる力が秘められていて……?

私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?

みおな
ファンタジー
 私の妹は、聖女と呼ばれている。  妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。  聖女は一世代にひとりしか現れない。  だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。 「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」  あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら? それに妹フロラリアはシスコンですわよ?  この国、滅びないとよろしいわね?  

婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ

水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。 それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。 黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。 叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。 ですが、私は知らなかった。 黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。 残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?

捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています

h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。 自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。 しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━? 「おかえりなさいませ、皇太子殿下」 「は? 皇太子? 誰が?」 「俺と婚約してほしいんだが」 「はい?」 なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

処理中です...