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運とはズルく見えること
特別は良し悪し
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入学、四月。始めに一年の行事が書かれた紙が配られた。今月にあるのはクラス交流会ぐらいで、大きなイベントは五月の体育祭まで待つことになるようだ。
「クラスっていくつあるんだっけ」
俺は寮の部屋で隣に座るコルアに尋ねた。俺が箱からドンドン出した荷物を棚にサクサクと並べている。
「僕たちのクラス含めて四つだそうです。他クラスは人数が多いって聞きました」
本は下の段に背の高さを合わせて並べてくれて、小物は上に重ならないよう配置してくれていた。
「うちのクラスはそんなに歳、離れてないよな。よそのクラスはどんな人が居るんだろう」
入学式の景色を思い出すと、自分よりかなり背の低い人や立派な髭が生えた人もいた気がする。
「明日には分かりますよ」
コルアは淡々と返して、空になった箱を畳み始めた。俺もそれに習って空箱のテープをビリビリと剥がす。そこにコンコンと扉を叩く音がした。
「どうぞー」俺が返事をした。
「よっ」
開いた扉からのぞき込んだのはショウカの顔だった。腕時計をこちらに向けてトントンと文字盤を叩く。
「夕飯、一緒にどうだい?」
いつの間にか食事の時間になっていたようだ。コルアに視線を向けると軽く頷いたので、俺はショウカの誘いを受けた。
「はい、お待たせ~! 入学おめでとう御膳だよ」
食堂で席に着くと、マルダがお盆いっぱいに料理をのせて運んできた。湯気の立った大盛のスープが三人の前に置かれる。
「おっ!」
ショウカの声が漏れた。丸ごとの玉ねぎが琥珀色のスープに浸かって、上からチーズが溶け落ちていく。テーブルの真ん中にカゴ山盛りの堅焼きパンが置かれた。
「順番に運んでくるから、テーブルの上に私物は置かないようにね。今日は特別品数多いから!」
マルダがぱちりとウインクをして去って行く。我先にと手を合わせて各々の目当てを口に運び始めた。俺とショウカはパン、コルアはスープを食べた。
テーブルにぽん、ぽんと皿が増えていく。ホワイトシチュー、カリカリチキン、エビのサラダ……だんだんと漂うその臭いに釣られたのか、食堂が混み始めた。
「フン! なんだよ、特設って」
「ホントだよな!」
入ってくるなり鼻息の荒い人が来た。その周りを調子良く囲む人も含めて六人程度の集団が、空いている席を探して俺たちの隣のテーブルに近づいてくる。
「アンタたち。カチンとくることが聞こえてきてもここでは聞き流すんだよ。大騒ぎされてマルダさん達に迷惑かけちまう」
ショウカが集団の先頭に立つ少年を見るなり、そう小声で忠告してきた。確かに態度が大きそうな上、既に自分たちとの火種を持ってそうな発言をしていた。
「分かりました。食べ終えたらすぐに出ましょう」
承諾したコルアに続いて俺も小さく首を縦に振った。そのすぐ後、彼らは隣席に着いた。
「で、特設ってどんなやつらがいんの?」
こちらが静かにパクリパクリと食事を続ける横で隣では不穏な会話が始まった。
「まずはアルストーリア家の人間がいましたよ」
「ふーん」
取り巻きの言葉に不機嫌そうな息をもらす少年。テーブルに肘をつきながらじろっと周りを観察している。
「あとはアルストーリアと同じく別室に連れて行かれたヤツ」
ビクリと俺の肩が跳ねた。対して張本人のコルアは意に介していないかのようにシチューを飲み干していた。
「見たことない顔で名前は分かんねーけど」
「他には?」
「ちょっと教室の場所離れてるんでー見てないんですよね。でも、どうせ明日の交流会で会いますよ」
その言葉にため息が出そうになるのをチキンを食べて押し戻した。明らかに嫌な感情を抱かれている相手と、どう顔を合わせたものだろうか。
止まらない隣の会話に黙って食事を進め、テーブルの皿は全て空になった。パチンと手を合わせて「ごちそうさまでした」と声に出す。
「行くか」
俺が声をかけるとショウカとコルアが頷いて立ち上がった。そのまま席を離れて出口へ向かい、マルダに「ごちそうさまでした。美味しかったです」とお礼をした。
「それは良かった」
マルダが笑って答えた。それからこちらに顔を寄せて小さな声で言った。
「明日からはもう少し、混み具合落ち着くと思うから」
気遣いに「ありがとうございます」と返して三人で食堂を出た。だんだんとガヤガヤとした声が遠ざかっていく。
「うん、良かったら散歩でもどうだい?」
ショウカが俺たちに振り返った。交流がてらの食事で話し足りないと感じたのは俺だけでは無かったようだ。
「俺はオッケー。コルアはどうする?」
「行きます。今日は天気も良いですし、星が見えるかも」
コルアが笑ったので、三人連れだって寮の外に出た。といっても門の内側にある中庭のような場所だ。半円状の道を囲むように小さい花たちが咲いている。
「災難だったね。妙なクラスに放り込まれて」
「まぁ、想定外だった」
ショウカの言葉に俺はまた小さく反省した。
「こっちは多少顔を知られてる自覚があるから、クラスが何だろうが良いんだけどさ。二人は……大変なこともあるだろうけど、楽しくやりたいね。まずはあたしとさ!」
「もちろん、ぜひ」
ショウカとコルアが微笑み合っている。この中で一番、食堂の会話を気かけているのはショウカのようだ。
「クラスっていくつあるんだっけ」
俺は寮の部屋で隣に座るコルアに尋ねた。俺が箱からドンドン出した荷物を棚にサクサクと並べている。
「僕たちのクラス含めて四つだそうです。他クラスは人数が多いって聞きました」
本は下の段に背の高さを合わせて並べてくれて、小物は上に重ならないよう配置してくれていた。
「うちのクラスはそんなに歳、離れてないよな。よそのクラスはどんな人が居るんだろう」
入学式の景色を思い出すと、自分よりかなり背の低い人や立派な髭が生えた人もいた気がする。
「明日には分かりますよ」
コルアは淡々と返して、空になった箱を畳み始めた。俺もそれに習って空箱のテープをビリビリと剥がす。そこにコンコンと扉を叩く音がした。
「どうぞー」俺が返事をした。
「よっ」
開いた扉からのぞき込んだのはショウカの顔だった。腕時計をこちらに向けてトントンと文字盤を叩く。
「夕飯、一緒にどうだい?」
いつの間にか食事の時間になっていたようだ。コルアに視線を向けると軽く頷いたので、俺はショウカの誘いを受けた。
「はい、お待たせ~! 入学おめでとう御膳だよ」
食堂で席に着くと、マルダがお盆いっぱいに料理をのせて運んできた。湯気の立った大盛のスープが三人の前に置かれる。
「おっ!」
ショウカの声が漏れた。丸ごとの玉ねぎが琥珀色のスープに浸かって、上からチーズが溶け落ちていく。テーブルの真ん中にカゴ山盛りの堅焼きパンが置かれた。
「順番に運んでくるから、テーブルの上に私物は置かないようにね。今日は特別品数多いから!」
マルダがぱちりとウインクをして去って行く。我先にと手を合わせて各々の目当てを口に運び始めた。俺とショウカはパン、コルアはスープを食べた。
テーブルにぽん、ぽんと皿が増えていく。ホワイトシチュー、カリカリチキン、エビのサラダ……だんだんと漂うその臭いに釣られたのか、食堂が混み始めた。
「フン! なんだよ、特設って」
「ホントだよな!」
入ってくるなり鼻息の荒い人が来た。その周りを調子良く囲む人も含めて六人程度の集団が、空いている席を探して俺たちの隣のテーブルに近づいてくる。
「アンタたち。カチンとくることが聞こえてきてもここでは聞き流すんだよ。大騒ぎされてマルダさん達に迷惑かけちまう」
ショウカが集団の先頭に立つ少年を見るなり、そう小声で忠告してきた。確かに態度が大きそうな上、既に自分たちとの火種を持ってそうな発言をしていた。
「分かりました。食べ終えたらすぐに出ましょう」
承諾したコルアに続いて俺も小さく首を縦に振った。そのすぐ後、彼らは隣席に着いた。
「で、特設ってどんなやつらがいんの?」
こちらが静かにパクリパクリと食事を続ける横で隣では不穏な会話が始まった。
「まずはアルストーリア家の人間がいましたよ」
「ふーん」
取り巻きの言葉に不機嫌そうな息をもらす少年。テーブルに肘をつきながらじろっと周りを観察している。
「あとはアルストーリアと同じく別室に連れて行かれたヤツ」
ビクリと俺の肩が跳ねた。対して張本人のコルアは意に介していないかのようにシチューを飲み干していた。
「見たことない顔で名前は分かんねーけど」
「他には?」
「ちょっと教室の場所離れてるんでー見てないんですよね。でも、どうせ明日の交流会で会いますよ」
その言葉にため息が出そうになるのをチキンを食べて押し戻した。明らかに嫌な感情を抱かれている相手と、どう顔を合わせたものだろうか。
止まらない隣の会話に黙って食事を進め、テーブルの皿は全て空になった。パチンと手を合わせて「ごちそうさまでした」と声に出す。
「行くか」
俺が声をかけるとショウカとコルアが頷いて立ち上がった。そのまま席を離れて出口へ向かい、マルダに「ごちそうさまでした。美味しかったです」とお礼をした。
「それは良かった」
マルダが笑って答えた。それからこちらに顔を寄せて小さな声で言った。
「明日からはもう少し、混み具合落ち着くと思うから」
気遣いに「ありがとうございます」と返して三人で食堂を出た。だんだんとガヤガヤとした声が遠ざかっていく。
「うん、良かったら散歩でもどうだい?」
ショウカが俺たちに振り返った。交流がてらの食事で話し足りないと感じたのは俺だけでは無かったようだ。
「俺はオッケー。コルアはどうする?」
「行きます。今日は天気も良いですし、星が見えるかも」
コルアが笑ったので、三人連れだって寮の外に出た。といっても門の内側にある中庭のような場所だ。半円状の道を囲むように小さい花たちが咲いている。
「災難だったね。妙なクラスに放り込まれて」
「まぁ、想定外だった」
ショウカの言葉に俺はまた小さく反省した。
「こっちは多少顔を知られてる自覚があるから、クラスが何だろうが良いんだけどさ。二人は……大変なこともあるだろうけど、楽しくやりたいね。まずはあたしとさ!」
「もちろん、ぜひ」
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