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【第2話】焼き立てパンは仲直りの味
【2-6】
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「お代は後でまとめてお支払いしますね。とりあえず、確認は後程ということで、今は端に積んでおきます」
「ああ、普通に片付けちゃっていいよ。何を持って来ているかは、紙に纏めてあるから。全部ひとつひとつ確認したいっていうなら、それでもいいけど」
「いえ、キカさんにお持ちいただいた納品書を元に精算いたしましょう。キカさんが損をしないようにだけお気をつけください」
「了解!」
気心知れたやり取りで商談が成立し、カミュは定位置と決めていると思われる場所へ次々と荷物を置いていった。木箱にも麻袋にも食材名と思われるタグのようなものが付けられているけれど、何ひとつ解読できない。でも、色々な種類の食材が来たんだなということは、なんとなく分かった。
魔法を使っているカミュの手の動きの邪魔にならないような位置できょろきょろしていると、真横にキカさんが並んで立つ。
「ミカも、マリオと同じ世界から来たの?」
「うん、そうだよ」
「そっかー、じゃあ、こっちの食材のことはよく分からないよね? 次回までに仕入れてほしいものとかあったら聞いておこうと思ったけど、まだそこまでの知識は無いもんね」
「そうだね……、あ、でも、とりあえずパンは作りたいんだよなぁ」
「……パン?」
「あ……、えっと……」
そうだ。カミュもジルも僕の言葉に合わせてくれようとするからついつい忘れがちだけれど、大体の固有名詞は自動翻訳されないんだった。
パンって、どう説明すればいいんだろう……?
オロオロしていると、カミュが助け舟を出してくれる。
「ミカさんが仰っているのは、パレドのことです。今まで、備蓄されていたラコイを上手に使って料理をしてくださっていたのですが、我々が主食にしていたのはパレドだと知ってから、ミカさんはパレドに興味津々でして。ですから、今回のキカさんの訪問時にツムトの粉とパレドードをお持ちいただけるかを気にされていたんです」
「ああ、なるほどね! 一応、ツムト粉もパレドードも持って来てるよ。新しい食事係が来ていなかったとしても、あたしが作り置いていこうと思っていたからさ」
ツムト粉が小麦粉っぽいもののことだったはずだから、パレドードっていうのが魔法のパン種みたいなものなんだろう。とうとう念願のパン作りが出来るかもしれないと思うと、わくわくしてくる。そんな僕を見て、キカさんはにこにこと笑った。
「パレドの作り方は後でしっかり教えてあげるから、まずはお茶を淹れよっか。今まで水しか飲んでなかったんでしょ? 味気なさすぎるよねぇ」
本当はミルクっぽいものも飲んでいたけれど、この世界の名称で上手く説明できる気がしなかったから、曖昧に笑って誤魔化した。僕の悪い癖が出てしまい、ちょっと自己嫌悪になる。
でも、カミュも訂正や補足を入れるつもりは無さそうだし、キカさん自身が既に気にしてなさそうだから、まぁ、いいのかな。
「お茶が飲めるようになるのは嬉しいな。淹れ方は難しいの?」
正直な気持ちと素直な疑問を言葉にすると、キカさんは微笑ましそうに僕と視線を合わせて、軽く首を振った。
「ううん、ぜーんぜん! ミカは魔法が使えないから、火を使うときにはカミュの力を借りるんでしょ? 彼に火加減の指示を出すのがいつなのか、それだけ覚えればいいの」
そのタイミングを掴むのが難しいのだろうか。動物の乳を絞り、魔法で煮沸したり漉したり出来るカミュが、お茶を淹れようとしたことは無かった。単にお茶の材料が無かっただけかもしれないけれど、キカさんがわざわざ僕に伝授しようとしているのだから、カミュには出来ないと思われる。
──ということは、やっぱり複雑な手順が必要なのかもしれない。
「そんな不安そうな顔しなくて大丈夫! ほんとに簡単なんだから。なんでカミュが出来ないのか不思議なくらいよ」
「私の視力と嗅覚では、人間たちのように繊細な感覚調整が出来ないのですよ」
「ぜんっぜん繊細じゃないのに……」
「貴方がたが『煮立ってきた』とか『少し匂いが強くなった』とか判断するよりも早く、私はそうだと認識してしまうのです。私にとっては、十分に繊細な感覚なのですよ」
魔の者は感覚が鋭いって、カミュ自身が言っていたし、人間よりも敏感だと色々と調整が難しいのかな。彼はすごく残念そうにしょんぼりしているから、本当は自分でお茶を淹れたりしたいんだろうな。
「もー、カミュはいいや。じゃあ、ミカ!」
「わっ、は、はいっ」
「あたしが口で説明していくから、ミカはその通りにやってみて。勿論、カミュの力も借りてね。カミュに魔法を使ってもらう場面とか、加減の指示とか、そういうのを意識してみるといいかも」
「うん、分かった。よろしくお願いします!」
キカさんが自分の荷物からエプロンを出して身に着けたから、僕もカミュに作ってもらったエプロンを装着する。ちなみに、カミュは裁縫魔法が得意なようで、ジルや僕の服を喜んで作ってくれるんだ。
「ミカさん、一緒に頑張りましょうね」
「うん! よろしくね、カミュ」
笑顔のカミュに声を掛けられて、僕も笑って頷いた。
「ああ、普通に片付けちゃっていいよ。何を持って来ているかは、紙に纏めてあるから。全部ひとつひとつ確認したいっていうなら、それでもいいけど」
「いえ、キカさんにお持ちいただいた納品書を元に精算いたしましょう。キカさんが損をしないようにだけお気をつけください」
「了解!」
気心知れたやり取りで商談が成立し、カミュは定位置と決めていると思われる場所へ次々と荷物を置いていった。木箱にも麻袋にも食材名と思われるタグのようなものが付けられているけれど、何ひとつ解読できない。でも、色々な種類の食材が来たんだなということは、なんとなく分かった。
魔法を使っているカミュの手の動きの邪魔にならないような位置できょろきょろしていると、真横にキカさんが並んで立つ。
「ミカも、マリオと同じ世界から来たの?」
「うん、そうだよ」
「そっかー、じゃあ、こっちの食材のことはよく分からないよね? 次回までに仕入れてほしいものとかあったら聞いておこうと思ったけど、まだそこまでの知識は無いもんね」
「そうだね……、あ、でも、とりあえずパンは作りたいんだよなぁ」
「……パン?」
「あ……、えっと……」
そうだ。カミュもジルも僕の言葉に合わせてくれようとするからついつい忘れがちだけれど、大体の固有名詞は自動翻訳されないんだった。
パンって、どう説明すればいいんだろう……?
オロオロしていると、カミュが助け舟を出してくれる。
「ミカさんが仰っているのは、パレドのことです。今まで、備蓄されていたラコイを上手に使って料理をしてくださっていたのですが、我々が主食にしていたのはパレドだと知ってから、ミカさんはパレドに興味津々でして。ですから、今回のキカさんの訪問時にツムトの粉とパレドードをお持ちいただけるかを気にされていたんです」
「ああ、なるほどね! 一応、ツムト粉もパレドードも持って来てるよ。新しい食事係が来ていなかったとしても、あたしが作り置いていこうと思っていたからさ」
ツムト粉が小麦粉っぽいもののことだったはずだから、パレドードっていうのが魔法のパン種みたいなものなんだろう。とうとう念願のパン作りが出来るかもしれないと思うと、わくわくしてくる。そんな僕を見て、キカさんはにこにこと笑った。
「パレドの作り方は後でしっかり教えてあげるから、まずはお茶を淹れよっか。今まで水しか飲んでなかったんでしょ? 味気なさすぎるよねぇ」
本当はミルクっぽいものも飲んでいたけれど、この世界の名称で上手く説明できる気がしなかったから、曖昧に笑って誤魔化した。僕の悪い癖が出てしまい、ちょっと自己嫌悪になる。
でも、カミュも訂正や補足を入れるつもりは無さそうだし、キカさん自身が既に気にしてなさそうだから、まぁ、いいのかな。
「お茶が飲めるようになるのは嬉しいな。淹れ方は難しいの?」
正直な気持ちと素直な疑問を言葉にすると、キカさんは微笑ましそうに僕と視線を合わせて、軽く首を振った。
「ううん、ぜーんぜん! ミカは魔法が使えないから、火を使うときにはカミュの力を借りるんでしょ? 彼に火加減の指示を出すのがいつなのか、それだけ覚えればいいの」
そのタイミングを掴むのが難しいのだろうか。動物の乳を絞り、魔法で煮沸したり漉したり出来るカミュが、お茶を淹れようとしたことは無かった。単にお茶の材料が無かっただけかもしれないけれど、キカさんがわざわざ僕に伝授しようとしているのだから、カミュには出来ないと思われる。
──ということは、やっぱり複雑な手順が必要なのかもしれない。
「そんな不安そうな顔しなくて大丈夫! ほんとに簡単なんだから。なんでカミュが出来ないのか不思議なくらいよ」
「私の視力と嗅覚では、人間たちのように繊細な感覚調整が出来ないのですよ」
「ぜんっぜん繊細じゃないのに……」
「貴方がたが『煮立ってきた』とか『少し匂いが強くなった』とか判断するよりも早く、私はそうだと認識してしまうのです。私にとっては、十分に繊細な感覚なのですよ」
魔の者は感覚が鋭いって、カミュ自身が言っていたし、人間よりも敏感だと色々と調整が難しいのかな。彼はすごく残念そうにしょんぼりしているから、本当は自分でお茶を淹れたりしたいんだろうな。
「もー、カミュはいいや。じゃあ、ミカ!」
「わっ、は、はいっ」
「あたしが口で説明していくから、ミカはその通りにやってみて。勿論、カミュの力も借りてね。カミュに魔法を使ってもらう場面とか、加減の指示とか、そういうのを意識してみるといいかも」
「うん、分かった。よろしくお願いします!」
キカさんが自分の荷物からエプロンを出して身に着けたから、僕もカミュに作ってもらったエプロンを装着する。ちなみに、カミュは裁縫魔法が得意なようで、ジルや僕の服を喜んで作ってくれるんだ。
「ミカさん、一緒に頑張りましょうね」
「うん! よろしくね、カミュ」
笑顔のカミュに声を掛けられて、僕も笑って頷いた。
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