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【第2話】焼き立てパンは仲直りの味
【2-7】
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「ミカ、心の準備はいい?」
「うん、大丈夫」
キカさんの問いかけにも、頷きを返す。彼女も満足そうに頷き、明るい声を出した。
「よーし! じゃあ、始めるわよ! ミカ、まずはお鍋に水を入れてね。適当でいいわ」
「適当……?」
「うん。四人がそれぞれ二杯ずつ飲める程度かな。……ああ、あそこの大きめのポットをそれなりに満たせるくらいがいいかも」
この世界にもティーポットとカップは存在していて、自動翻訳されるからありがたい。とはいえ、この城だけなのか世界全体の傾向なのかはまだ分からないけれど、陶磁器の類が見当たらない。器の大体が木製だし、スプーンやポットなんかは金属のようなもので作られている。
キカさんが指しているのも、ピンクゴールドのような色合いの金属っぽい素材で作られているポットだ。おそらく魔法で加工して作っているのだろうし、余計に原材料が謎だった。毎日少しずつ、この世界についてカミュから教わっているし、そのうち理解できるようになるかな……?
とにかく今は、お茶の淹れ方を覚えなければ。火を起こすための調理台に吊るされた金具に、片手鍋より少し大きな鍋をかけ、八分目あたりを指さす。
「カミュ、ここまで水を入れてくれる?」
「かしこまりました」
僕の指示を快諾してくれたカミュは楽しそうに微笑み、上機嫌に魔法を使って、部屋の隅にある瓶から適量の水を移し入れてくれた。
水を汲むくらい自分でも出来るけれど、カミュは頼られるのが好きみたいで、些細なことでも手伝いを頼むと喜んでくれる。彼が気を遣っているだけなら僕も遠慮するけど、一人でどうにかしようとすると本気で落ち込まれてしまうから、ちょっとした作業でもお願いするようにしていた。
「水を入れたら、火をつける前に茶葉を鍋に入れるの。……ほら、これ。カボ茶っていうのよ」
「えっ? カボチャ!?」
小脇に抱えられる程度の大きさの麻袋を持って近づいてくるキカさんは、驚きの声を発した僕を不思議そうに眺めてくる。
「そう、カボ茶。知ってるの?」
「ううん。……ただ、僕がいた国ではカボチャって呼ばれている野菜があったんだ。僕が知る限り、お茶とは無縁の野菜だったけどね」
「へぇ! 面白いね! マリオはカボ茶の名前には反応しなかったけど、香りと味には喜んでいたわ。元の世界で楽しんでいた飲み物とよく似ている、ってね」
キカさんが麻袋の口を開いて、中を見せてくれた。詰められているのは、一見すると落ち葉のような茶色くて乾燥した葉っぱだ。でも、袋の隙間からむわっと漂ってくる薫りは──
「コーヒーだ……!」
そう、深煎りのドリップコーヒーのような匂いがする。見た目はただの葉っぱなのに、すごく不思議だ。茶葉という印象もないし、香りも相まって、脳が錯覚を起こしているような変な感じがする。
でも、この香りが嗅げたのは嬉しい。僕はコーヒーが大好きだったから、懐かしさと喜びがふわふわと重なっていく。
「やっぱり、ミカにも馴染みのある匂いなのね」
「マリオさんも、とても喜んでおられて、毎日これを飲むのを楽しみにされていました。ミカさんも、今日から飲めますからね」
「それなりの量は持ってきたけど、次回はマリオがいた時くらい多めに持参するようにするね」
味がどうかはまだ分からないけれど、コーヒーの香りを毎日楽しめると思うと、ちょっとテンションが上がってくる。そんな僕の様子を察したのか、カミュとキカさんは嬉しそうに微笑みかけてきた。
「じゃあ、ミカ。カボ茶の淹れ方の続きね」
「張り切って参りましょう、ミカさん」
「うんっ」
「じゃあ、手づかみでもカミュを使ってでもいいから、水面が隠れるくらい茶葉を入れてみて」
「……これも適当でいいの?」
「ええ。マリオさんも豪快に入れていました。多い分には問題が無いようですよ」
「そうね。少ないと味が薄まっちゃうけど、多く入れても濃すぎることは殆ど無いから。大胆に入れちゃっていいよ」
ちょっとした作業でもカミュに任せるようにしているけれど、これは……、僕もちょっとやってみたいかも。というか、カボ茶に触ってみたい。
「カミュ、僕が入れてみてもいい?」
「ええ、勿論。ミカさんのお好きなように」
悪魔とは思えない優しい笑顔に促され、僕はわくわくしながら麻袋の中へ手を入れた。カボ茶の葉をそっと握り込んでみる。カサリとした感触は、やっぱり落ち葉みたいだ。取り出して鼻を近付けてみると、ふわりとコーヒーのような香りがする。鍋の中へ入れてみると、水を吸いながらも葉は沈まず、膨張することもなく静かに浮いた。
「ミカ、もっとドバッと入れちゃっていいのよ」
「うん、分かった。これなら今のをあと三回分くらいかな」
「うーん……、あと四回くらいは入れていいかな」
「分かった」
キカさんの見立て通り、手掴みで四回カボ茶の葉を入れると、鍋の中の水面全体が覆われる。キカさんは満足そうに頷いた。
「よーし! じゃあ、火を点けるわよ」
「私の出番ですね!」
カミュが紅い瞳を輝かせて、軽く胸を張った。
「うん、大丈夫」
キカさんの問いかけにも、頷きを返す。彼女も満足そうに頷き、明るい声を出した。
「よーし! じゃあ、始めるわよ! ミカ、まずはお鍋に水を入れてね。適当でいいわ」
「適当……?」
「うん。四人がそれぞれ二杯ずつ飲める程度かな。……ああ、あそこの大きめのポットをそれなりに満たせるくらいがいいかも」
この世界にもティーポットとカップは存在していて、自動翻訳されるからありがたい。とはいえ、この城だけなのか世界全体の傾向なのかはまだ分からないけれど、陶磁器の類が見当たらない。器の大体が木製だし、スプーンやポットなんかは金属のようなもので作られている。
キカさんが指しているのも、ピンクゴールドのような色合いの金属っぽい素材で作られているポットだ。おそらく魔法で加工して作っているのだろうし、余計に原材料が謎だった。毎日少しずつ、この世界についてカミュから教わっているし、そのうち理解できるようになるかな……?
とにかく今は、お茶の淹れ方を覚えなければ。火を起こすための調理台に吊るされた金具に、片手鍋より少し大きな鍋をかけ、八分目あたりを指さす。
「カミュ、ここまで水を入れてくれる?」
「かしこまりました」
僕の指示を快諾してくれたカミュは楽しそうに微笑み、上機嫌に魔法を使って、部屋の隅にある瓶から適量の水を移し入れてくれた。
水を汲むくらい自分でも出来るけれど、カミュは頼られるのが好きみたいで、些細なことでも手伝いを頼むと喜んでくれる。彼が気を遣っているだけなら僕も遠慮するけど、一人でどうにかしようとすると本気で落ち込まれてしまうから、ちょっとした作業でもお願いするようにしていた。
「水を入れたら、火をつける前に茶葉を鍋に入れるの。……ほら、これ。カボ茶っていうのよ」
「えっ? カボチャ!?」
小脇に抱えられる程度の大きさの麻袋を持って近づいてくるキカさんは、驚きの声を発した僕を不思議そうに眺めてくる。
「そう、カボ茶。知ってるの?」
「ううん。……ただ、僕がいた国ではカボチャって呼ばれている野菜があったんだ。僕が知る限り、お茶とは無縁の野菜だったけどね」
「へぇ! 面白いね! マリオはカボ茶の名前には反応しなかったけど、香りと味には喜んでいたわ。元の世界で楽しんでいた飲み物とよく似ている、ってね」
キカさんが麻袋の口を開いて、中を見せてくれた。詰められているのは、一見すると落ち葉のような茶色くて乾燥した葉っぱだ。でも、袋の隙間からむわっと漂ってくる薫りは──
「コーヒーだ……!」
そう、深煎りのドリップコーヒーのような匂いがする。見た目はただの葉っぱなのに、すごく不思議だ。茶葉という印象もないし、香りも相まって、脳が錯覚を起こしているような変な感じがする。
でも、この香りが嗅げたのは嬉しい。僕はコーヒーが大好きだったから、懐かしさと喜びがふわふわと重なっていく。
「やっぱり、ミカにも馴染みのある匂いなのね」
「マリオさんも、とても喜んでおられて、毎日これを飲むのを楽しみにされていました。ミカさんも、今日から飲めますからね」
「それなりの量は持ってきたけど、次回はマリオがいた時くらい多めに持参するようにするね」
味がどうかはまだ分からないけれど、コーヒーの香りを毎日楽しめると思うと、ちょっとテンションが上がってくる。そんな僕の様子を察したのか、カミュとキカさんは嬉しそうに微笑みかけてきた。
「じゃあ、ミカ。カボ茶の淹れ方の続きね」
「張り切って参りましょう、ミカさん」
「うんっ」
「じゃあ、手づかみでもカミュを使ってでもいいから、水面が隠れるくらい茶葉を入れてみて」
「……これも適当でいいの?」
「ええ。マリオさんも豪快に入れていました。多い分には問題が無いようですよ」
「そうね。少ないと味が薄まっちゃうけど、多く入れても濃すぎることは殆ど無いから。大胆に入れちゃっていいよ」
ちょっとした作業でもカミュに任せるようにしているけれど、これは……、僕もちょっとやってみたいかも。というか、カボ茶に触ってみたい。
「カミュ、僕が入れてみてもいい?」
「ええ、勿論。ミカさんのお好きなように」
悪魔とは思えない優しい笑顔に促され、僕はわくわくしながら麻袋の中へ手を入れた。カボ茶の葉をそっと握り込んでみる。カサリとした感触は、やっぱり落ち葉みたいだ。取り出して鼻を近付けてみると、ふわりとコーヒーのような香りがする。鍋の中へ入れてみると、水を吸いながらも葉は沈まず、膨張することもなく静かに浮いた。
「ミカ、もっとドバッと入れちゃっていいのよ」
「うん、分かった。これなら今のをあと三回分くらいかな」
「うーん……、あと四回くらいは入れていいかな」
「分かった」
キカさんの見立て通り、手掴みで四回カボ茶の葉を入れると、鍋の中の水面全体が覆われる。キカさんは満足そうに頷いた。
「よーし! じゃあ、火を点けるわよ」
「私の出番ですね!」
カミュが紅い瞳を輝かせて、軽く胸を張った。
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