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【第5話】君に捧げるフレンチトースト
【5-1】
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「よーし、できた!」
調理台に並んだ朝食たちを見下ろして、その出来映えに満足した僕は、思わず腕組みして頷いた。もしかしたら、クックとポッポと同じくらいのドヤ顔をしているかもしれない。
傍らでワクワクと待機していたカミュは、そんな僕を嘲笑うこともなく、目を輝かせて拍手してくれた。
「素晴らしいです、ミカさん! 美味しそうですね……!」
この美しい悪魔は、過保護レベルを極めている魔王に負けず劣らず僕に甘いけれど、彼の盲目具合を差し引いて見たとしても、今日の朝食はよく出来ていると思う。なんといっても、相変わらずのありふれたメニューといえども、物凄く気合を入れて作ったんだ。
なぜなら、今朝は食パンがあるから。
そう、僕は昨夜、カミュの手を借りつつ、ようやく自分が思う「食パン」を作り上げることに成功したのだ。
この世界──ディデーレにおいてのパン(この世界ではパレドと呼ばれている)は、基本的に丸い。まんまるに形を整えているというわけでもなく、生地をちぎって適当に丸めて、そのまま焼くという感じ。もっちりして美味しいパンだけど、食パンとは違う。この世界には、食パンは存在しない。
先代の食事係だったマリオさんは食パンに近いものを作っていたみたいで、彼が残してくれたレシピ本にも記載があったけれど、それは日本でよく見るふわふわの食パンとは違うものだった。山型で、しっかりとした食感で、肉や魚などのがっつりしたメインディッシュに合うタイプ。
勿論、それはそれで美味しいし、マリオさんのレシピを元に何度か作らせてもらったけれど、僕はどうしても、朝食にふわふわしっとりな食パンによるトーストを出してみたかった。
というのも、僕のごはんを毎日楽しみにしてくれている魔王と悪魔の食の好みから察するに、彼らは朝にはほんのり甘かったり、ふわっとした食感のものを食べたがっているように感じていたからだ。そうではないものを出しても、彼らは喜んで食べてくれる。というか、何を出しても褒めてくれるし、ぺろりと完食してくれる。でも、ちょっと甘めだったりふわふわなものを添えた朝食のときは、ちょっとテンションが上がってる気がするんだ。
だからこそ、真四角でふわふわの日本的な食パンを作ってあげたかった。きっと喜んでくれると思ったから。実際、昨夜の焼き上がりからずっと、カミュはウキウキそわそわしている。相手は背中から蝙蝠羽が生えている長身の男だというのに、すごく可愛らしく見えた。
「すごいですね、ミカさん。焼いてもふわふわしております! それに、添えられているおかずもどれも美味しそうで……!」
「そうかな? そう言ってもらえると嬉しいよ」
ベーコンのような燻製肉を薄切りにしてカリカリに焼いたもの、とろとろふわふわのスクランブルエッグ。この世界のチーズはモッツァレラチーズのように真っ白で淡白な風味で、それを細かくちぎり分けたものに蜜漬けの食用花を和えたものも用意してみた。あとは、春野菜のサラダに、果汁たっぷりのオリジナルドレッシングを掛けたりもした。
どれもこれもシンプルで素朴なものだけれど、ザ・朝ごはんという感じで、僕はこういうメニューが好きだ。目をキラキラさせているカミュも、気に入ってくれたんだろう。
「ジルも気に入ってくれるといいなぁ……」
「お気に召すに決まっておりますとも! ジル様は、こういう可愛らしくてふわふわっとした朝食がお好きなような気がしてなりません! きっと、いえ、必ずそうでしょうとも!」
思わずポロリと零した呟きに、カミュは自分の胸を叩きながら全力で応えてくれる。それがなんだか楽しくて、嬉しくて、僕はつい笑ってしまった。
「あははっ。うん、僕もそんな気がするよ」
「ええ、その予感は絶対に的中するでしょう。さぁ、ミカさん。ジル様を迎えに行って差し上げてください。私は食堂のテーブルにこれらを並べて、温度と鮮度を保つ魔法を掛けておきますので」
「うん。いつもありがとう、カミュ」
最近、ジルは食事前に「ごはんだよ」と声を掛けてもらうことにハマっているようで、僕が呼びに来るのを密かに待っている。それを分かっているからか、カミュは今のように配膳を申し出て、主を迎えに行くよう促してくれるんだ。本当に、悪魔とは思えない優しい気遣いが出来る人だ。
逆に僕が配膳をしている間にカミュが迎えに行ってもいいのではと思って提案してみたこともあるんだけど、それは断られてしまった。断る理由として保温魔法の使用を挙げられてしまうと、魔法が一切使えない僕としては食い下がるわけにはいかない。
「じゃあ、行ってくるね」
「ええ。階段が続きますから、足元にお気をつけて」
「ふふっ、もう慣れちゃったから大丈夫!」
元気よく答えて、廊下に出る。ジルの部屋は城の最上階にあり、その階まで続いている階段はひとつしかない。その階段を目指して歩き始めて少し経ったとき、
「ぇ、っ、うわっ──!?」
何かが突然、頭上に落ちてきた。
調理台に並んだ朝食たちを見下ろして、その出来映えに満足した僕は、思わず腕組みして頷いた。もしかしたら、クックとポッポと同じくらいのドヤ顔をしているかもしれない。
傍らでワクワクと待機していたカミュは、そんな僕を嘲笑うこともなく、目を輝かせて拍手してくれた。
「素晴らしいです、ミカさん! 美味しそうですね……!」
この美しい悪魔は、過保護レベルを極めている魔王に負けず劣らず僕に甘いけれど、彼の盲目具合を差し引いて見たとしても、今日の朝食はよく出来ていると思う。なんといっても、相変わらずのありふれたメニューといえども、物凄く気合を入れて作ったんだ。
なぜなら、今朝は食パンがあるから。
そう、僕は昨夜、カミュの手を借りつつ、ようやく自分が思う「食パン」を作り上げることに成功したのだ。
この世界──ディデーレにおいてのパン(この世界ではパレドと呼ばれている)は、基本的に丸い。まんまるに形を整えているというわけでもなく、生地をちぎって適当に丸めて、そのまま焼くという感じ。もっちりして美味しいパンだけど、食パンとは違う。この世界には、食パンは存在しない。
先代の食事係だったマリオさんは食パンに近いものを作っていたみたいで、彼が残してくれたレシピ本にも記載があったけれど、それは日本でよく見るふわふわの食パンとは違うものだった。山型で、しっかりとした食感で、肉や魚などのがっつりしたメインディッシュに合うタイプ。
勿論、それはそれで美味しいし、マリオさんのレシピを元に何度か作らせてもらったけれど、僕はどうしても、朝食にふわふわしっとりな食パンによるトーストを出してみたかった。
というのも、僕のごはんを毎日楽しみにしてくれている魔王と悪魔の食の好みから察するに、彼らは朝にはほんのり甘かったり、ふわっとした食感のものを食べたがっているように感じていたからだ。そうではないものを出しても、彼らは喜んで食べてくれる。というか、何を出しても褒めてくれるし、ぺろりと完食してくれる。でも、ちょっと甘めだったりふわふわなものを添えた朝食のときは、ちょっとテンションが上がってる気がするんだ。
だからこそ、真四角でふわふわの日本的な食パンを作ってあげたかった。きっと喜んでくれると思ったから。実際、昨夜の焼き上がりからずっと、カミュはウキウキそわそわしている。相手は背中から蝙蝠羽が生えている長身の男だというのに、すごく可愛らしく見えた。
「すごいですね、ミカさん。焼いてもふわふわしております! それに、添えられているおかずもどれも美味しそうで……!」
「そうかな? そう言ってもらえると嬉しいよ」
ベーコンのような燻製肉を薄切りにしてカリカリに焼いたもの、とろとろふわふわのスクランブルエッグ。この世界のチーズはモッツァレラチーズのように真っ白で淡白な風味で、それを細かくちぎり分けたものに蜜漬けの食用花を和えたものも用意してみた。あとは、春野菜のサラダに、果汁たっぷりのオリジナルドレッシングを掛けたりもした。
どれもこれもシンプルで素朴なものだけれど、ザ・朝ごはんという感じで、僕はこういうメニューが好きだ。目をキラキラさせているカミュも、気に入ってくれたんだろう。
「ジルも気に入ってくれるといいなぁ……」
「お気に召すに決まっておりますとも! ジル様は、こういう可愛らしくてふわふわっとした朝食がお好きなような気がしてなりません! きっと、いえ、必ずそうでしょうとも!」
思わずポロリと零した呟きに、カミュは自分の胸を叩きながら全力で応えてくれる。それがなんだか楽しくて、嬉しくて、僕はつい笑ってしまった。
「あははっ。うん、僕もそんな気がするよ」
「ええ、その予感は絶対に的中するでしょう。さぁ、ミカさん。ジル様を迎えに行って差し上げてください。私は食堂のテーブルにこれらを並べて、温度と鮮度を保つ魔法を掛けておきますので」
「うん。いつもありがとう、カミュ」
最近、ジルは食事前に「ごはんだよ」と声を掛けてもらうことにハマっているようで、僕が呼びに来るのを密かに待っている。それを分かっているからか、カミュは今のように配膳を申し出て、主を迎えに行くよう促してくれるんだ。本当に、悪魔とは思えない優しい気遣いが出来る人だ。
逆に僕が配膳をしている間にカミュが迎えに行ってもいいのではと思って提案してみたこともあるんだけど、それは断られてしまった。断る理由として保温魔法の使用を挙げられてしまうと、魔法が一切使えない僕としては食い下がるわけにはいかない。
「じゃあ、行ってくるね」
「ええ。階段が続きますから、足元にお気をつけて」
「ふふっ、もう慣れちゃったから大丈夫!」
元気よく答えて、廊下に出る。ジルの部屋は城の最上階にあり、その階まで続いている階段はひとつしかない。その階段を目指して歩き始めて少し経ったとき、
「ぇ、っ、うわっ──!?」
何かが突然、頭上に落ちてきた。
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