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【第6話】両片想いとフライドポテト
【6-18】
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◇
みんなでひとしきり泣き、もう一度手を洗い、改めてフライドポテトもといフライドポトト作りを始めることにした。フィラスは気合いを入れ直し、クックとポッポは戸棚の上からおとなしく観察し、カミュはニコニコと微笑ましそうに眺めている。実に平和な光景だ。
「揚げたポトト、とても美味しいのですよ。サリハ様もフィラスさんもお気に召すと思います」
「そうか、そうか! 楽しみだ!」
「たくさん作って、みんなで食べようね」
「はい、たくさん作りましょう」
大量に作ることを提案してきているカミュは、自分も食べたくてそわそわしているんだろう。食いしん坊で可愛らしい彼のこういう一面が、僕はけっこう好きだったりする。
「それで、ミカ。ポトトは何個くらい使うんだ?」
「そうだね……、うん、十個くらい使おうかな」
「そんなに使うのか!?」
フィラスが驚くのも無理はない。ポトトは、一個一個が割と大きい。日本でよく見るジャガイモよりも大きくて、片手いっぱいサイズでずっしりと重い。それが十個分となると、相当な量だ。
「フライドポトトはね、意外と量が食べられちゃうんだよ。ついつい手が伸びて、気がついたらたくさん食べてて、お腹いっぱいになっちゃうんだ」
「ちなみに、先日作っていただいたときはポトト五個分だったのですが、まだまだ食べられそうだなと思いました」
「えっ……」
僕たちの話を聞いて真顔で絶句しているフィラスも、しれっとした表情と口調で「この前の量では物足りなかった」とさりげなくアピールしてくるカミュも、なんだかシュールで面白い。
「ふふっ。ジルもカミュも、たくさん食べてくれたもんね。あのときは、僕もついつい食べすぎちゃったよ。……でも、そのくらい美味しいってこと。フィラスも気持ちのいい食べっぷりだし、きっとモリモリ食べてもらえると思うな」
「そ、そうか……、じゃあ、とりあえず、十個取るぞ」
半信半疑といった面持ちながらも、フィラスは素直にポトトを十個数えて籠に入れ、流し台へと運んでくる。
僕だけが料理をしているときは、こういう作業も全てカミュが魔法でやってくれるけれど、魔法が苦手で自分の手でこなすことに拘りを持っているフィラスに配慮しているのか、彼が一緒に調理場にいるときには黙って見守ってくれていた。相変わらず悪魔らしくない繊細な気遣いをしていて、他者との交流が苦手な人間である僕は感心してしまう。
「ミカ、次はどうするんだ?」
「じゃあ、皮を洗おうか。収穫するときに土汚れは洗い流しているから、ザザッと雑に擦れば大丈夫だよ」
「分かった!」
手を洗ったときに残った水が入っている手桶へポトトを移し、雑に揉み洗いをしたら、今度は芽を取る作業だ。僕とフィラスは各々が小さなナイフを手に、ひとつひとつ丁寧に芽を取ってゆく。カミュはにこやかに見守っていた。
「フィラス、ナイフの使い方上手だね」
「そうか? 工作には慣れているからな」
鼻歌交じりにポトトの芽をくり抜いていくフィラスの手つきには、全く迷いが無い。器用だというのも勿論あるけれど、刃物への恐怖心や躊躇いが無い証でもある。彼の故郷では工作は男の仕事だと割り振られているという話を思い出し、なるほどなぁと納得した。
ジャガイモと同様にポトトの芽には毒性があるようで、少量でも胃の中に入れてしまうと数日間は吐き気に悩まされるらしい。ほんの小さなものでも見逃さないように気を付けて、慎重に芽を取っていった。
芽取りが済んだポトトたちを籠に移すと、それはフィラスが持ってくれる。調理台へ運んでもらって、その中のひとつを清潔な布巾で包んで水気を取り、まな板へ載せた。
「芽を取ったら、今みたいに水分を拭き取って、皮は剥かずにこのまま切り分けるよ。どのポトトの欠片も皮付きの状態にするようにね。ひとつ切ってみるから、見てて」
お手本として見せるために、通常よりもゆっくりと、櫛形に切り分けてゆく。カミュが魔法で研いでお手入れしてくれているから、包丁はいつでも気持ちのいい切れ味だ。今日もスパスパッと切れる快感を味わえて、ありがたいし心地よい。
切り分けられたポトトを見て、フィラスは金色の瞳をキラキラと輝かせた。一等星のような眩さだ。
「すごいなぁ! 面白い形だ! それに、ちゃんと全部に皮が付いている!」
「でも、簡単でしょ? フィラスにも出来るよ」
「やってみる!」
場所を譲ると、まな板の前に立ったフィラスは包丁を握り、器用に櫛形へと切ってゆく。やっぱり、上手い。故郷に戻れば料理とは縁が無くなってしまうのが勿体ないくらい、筋が良いと思う。
フィラスはあっという間に九個分のポトトを櫛切りし終えて、僕とカミュは並んで拍手して褒め讃えた。
「フィラスさん、素晴らしいお仕事でした! 見事な仕上がりです!」
「とっても上手だよ、フィラス! よくできました!」
「そ、そんなに褒められては、照れてしまう」
照れて鼻の頭を掻いている姿が、子どものようでなんだか可愛い。ほのぼのとした気持ちになりながら、僕は下準備の終了を宣言した。
「さて。下準備は、これでおしまい。あとは、あっためた油でこれをじっくりと揚げて、塩を振ったら完成だからね」
揚げる、という言葉に反応したのか、フィラスの一等星の瞳は、更に煌めきを増していった。
みんなでひとしきり泣き、もう一度手を洗い、改めてフライドポテトもといフライドポトト作りを始めることにした。フィラスは気合いを入れ直し、クックとポッポは戸棚の上からおとなしく観察し、カミュはニコニコと微笑ましそうに眺めている。実に平和な光景だ。
「揚げたポトト、とても美味しいのですよ。サリハ様もフィラスさんもお気に召すと思います」
「そうか、そうか! 楽しみだ!」
「たくさん作って、みんなで食べようね」
「はい、たくさん作りましょう」
大量に作ることを提案してきているカミュは、自分も食べたくてそわそわしているんだろう。食いしん坊で可愛らしい彼のこういう一面が、僕はけっこう好きだったりする。
「それで、ミカ。ポトトは何個くらい使うんだ?」
「そうだね……、うん、十個くらい使おうかな」
「そんなに使うのか!?」
フィラスが驚くのも無理はない。ポトトは、一個一個が割と大きい。日本でよく見るジャガイモよりも大きくて、片手いっぱいサイズでずっしりと重い。それが十個分となると、相当な量だ。
「フライドポトトはね、意外と量が食べられちゃうんだよ。ついつい手が伸びて、気がついたらたくさん食べてて、お腹いっぱいになっちゃうんだ」
「ちなみに、先日作っていただいたときはポトト五個分だったのですが、まだまだ食べられそうだなと思いました」
「えっ……」
僕たちの話を聞いて真顔で絶句しているフィラスも、しれっとした表情と口調で「この前の量では物足りなかった」とさりげなくアピールしてくるカミュも、なんだかシュールで面白い。
「ふふっ。ジルもカミュも、たくさん食べてくれたもんね。あのときは、僕もついつい食べすぎちゃったよ。……でも、そのくらい美味しいってこと。フィラスも気持ちのいい食べっぷりだし、きっとモリモリ食べてもらえると思うな」
「そ、そうか……、じゃあ、とりあえず、十個取るぞ」
半信半疑といった面持ちながらも、フィラスは素直にポトトを十個数えて籠に入れ、流し台へと運んでくる。
僕だけが料理をしているときは、こういう作業も全てカミュが魔法でやってくれるけれど、魔法が苦手で自分の手でこなすことに拘りを持っているフィラスに配慮しているのか、彼が一緒に調理場にいるときには黙って見守ってくれていた。相変わらず悪魔らしくない繊細な気遣いをしていて、他者との交流が苦手な人間である僕は感心してしまう。
「ミカ、次はどうするんだ?」
「じゃあ、皮を洗おうか。収穫するときに土汚れは洗い流しているから、ザザッと雑に擦れば大丈夫だよ」
「分かった!」
手を洗ったときに残った水が入っている手桶へポトトを移し、雑に揉み洗いをしたら、今度は芽を取る作業だ。僕とフィラスは各々が小さなナイフを手に、ひとつひとつ丁寧に芽を取ってゆく。カミュはにこやかに見守っていた。
「フィラス、ナイフの使い方上手だね」
「そうか? 工作には慣れているからな」
鼻歌交じりにポトトの芽をくり抜いていくフィラスの手つきには、全く迷いが無い。器用だというのも勿論あるけれど、刃物への恐怖心や躊躇いが無い証でもある。彼の故郷では工作は男の仕事だと割り振られているという話を思い出し、なるほどなぁと納得した。
ジャガイモと同様にポトトの芽には毒性があるようで、少量でも胃の中に入れてしまうと数日間は吐き気に悩まされるらしい。ほんの小さなものでも見逃さないように気を付けて、慎重に芽を取っていった。
芽取りが済んだポトトたちを籠に移すと、それはフィラスが持ってくれる。調理台へ運んでもらって、その中のひとつを清潔な布巾で包んで水気を取り、まな板へ載せた。
「芽を取ったら、今みたいに水分を拭き取って、皮は剥かずにこのまま切り分けるよ。どのポトトの欠片も皮付きの状態にするようにね。ひとつ切ってみるから、見てて」
お手本として見せるために、通常よりもゆっくりと、櫛形に切り分けてゆく。カミュが魔法で研いでお手入れしてくれているから、包丁はいつでも気持ちのいい切れ味だ。今日もスパスパッと切れる快感を味わえて、ありがたいし心地よい。
切り分けられたポトトを見て、フィラスは金色の瞳をキラキラと輝かせた。一等星のような眩さだ。
「すごいなぁ! 面白い形だ! それに、ちゃんと全部に皮が付いている!」
「でも、簡単でしょ? フィラスにも出来るよ」
「やってみる!」
場所を譲ると、まな板の前に立ったフィラスは包丁を握り、器用に櫛形へと切ってゆく。やっぱり、上手い。故郷に戻れば料理とは縁が無くなってしまうのが勿体ないくらい、筋が良いと思う。
フィラスはあっという間に九個分のポトトを櫛切りし終えて、僕とカミュは並んで拍手して褒め讃えた。
「フィラスさん、素晴らしいお仕事でした! 見事な仕上がりです!」
「とっても上手だよ、フィラス! よくできました!」
「そ、そんなに褒められては、照れてしまう」
照れて鼻の頭を掻いている姿が、子どものようでなんだか可愛い。ほのぼのとした気持ちになりながら、僕は下準備の終了を宣言した。
「さて。下準備は、これでおしまい。あとは、あっためた油でこれをじっくりと揚げて、塩を振ったら完成だからね」
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