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【第7話】悪魔をもてなす夏野菜たっぷり辛口ピッツァ
【7-6】
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「こ、こんにちは……」
とりあえず挨拶をされたのだから返すのが礼儀かと思って、どもりながらも応答すると、緑の悪魔はニンマリと笑う。──けれど、眼鏡の奥の目がちっとも笑っていない。
「えらいえらーい★ ちゃんとご挨拶もできない子なら、うっかり殺しちゃうかもしれなかったよ☆ よかったね★」
そう言って心のこもっていない拍手をしている目の前の相手に、底知れぬ恐怖を感じる。それは、僕を背中に庇ってくれているジルが珍しく焦った顔をして、緊張感を高めているからかもしれない。クックとポッポも、見たことがないくらい羽を毛羽立たせて警戒していた。
「ね、魔王も察知できないくらい気配を消してたのに、どうしてボクのことを見つけちゃったの? 教えて★ 教えて☆」
「え、っと……、羽の一部が、窓の外に、見えていたので……」
「そっかー★ ウッカリしてたなー☆ といっても、実はわざとチラチラ見せてたんだけどねっ★」
「は、はぁ……、そ、そうなんですね」
得体の知れない相手だけれど、彼の言葉を無視してはいけないと本能的に感じて、なんとか会話を繋ごうと頑張ってみる。こんなに怪しい人を前にしたら、普段のジルであれば「こんな奴の相手をする必要は無い」くらいのことを言って僕の言葉を遮りそうなものなのに、今の彼は渋い面持ちで成り行きを見守るばかりだ。
「ね、ね、この羽がチラチラって見えたとき、どう思った?」
「どう、とは……?」
「誰かに似てるなー★ ……とか、思った?」
「ぁ、えっと……、カミュみたいだなぁと、思いました」
「──あ? 今なんて言ったお前?」
一瞬にして、部屋の中が真冬になったのかと思った。
そのくらい瞬時に周囲の空気が凍り、目の前の緑の悪魔の雰囲気も一転する。胡散臭い笑顔を引っ込めた悪魔は、妙に血走った目で僕を睨みつけてきた。
「なんなんだよ、その馴れ馴れしい呼び方はよォ! まさかとは思うが、カマルティユ先輩のことじゃねぇよなァ!? あァ!?」
「えっ……、そ、その……」
「なんとか言えよブチ殺すぞテメェ!」
そう喚くやいなや、緑の悪魔が素早く手を翳し、細長い光を矢のように放ってくる。ジルも瞬時に反応して半透明の薄い壁のようなものを作り出したけれど、それより早く、クックとポッポが光の矢の前に飛び出た。彼らは自身の体に光を纏って羽ばたきながら対抗していたけれど、じきに押し負けて弾き飛ばされてしまった。
愛鳥たちの小さな身体は勢いよく飛ばされ、調理場の隅の壁際へ叩きつけられる。そのままポテッと床に落ちた鳥たちの全身は、小さく痙攣していた。
「クック! ポッポ!」
「ミカ! 動くな!」
「でも! クックとポッポが! あのままじゃ死んじゃう!」
「大丈夫だ! あいつらはそう簡単には死なない!」
「そうだよねー★ 魔鳥って簡単には死なないよね☆ クソ人間とは違ってなァ!」
愛鳥たちの元へ駆け寄りたい僕と、それを必死に止めるジルの攻防の狭間で、緑の悪魔も二つの顔を交互に覗かせる。再び繰り出された攻撃を、今度はジルが防いでくれたけれど、悪魔が放った光は魔王の護りを掻い潜り、蒼白い腕を傷つけた。
「ジル……!」
「大丈夫だ」
「でも、血が……っ」
「平気だ。俺は何ともない。……だが、ミカがくらったら、この程度では済まない」
ジルの腕を一筋流れる赤い血を見ているうちに、やろうと思えばカミュはジルを殺せるのではないかという可能性が脳裏を掠める。カミュに出来るということは、彼と同等の力を持つ魔の者にも可能というわけで、もし目の前にいる緑の悪魔がそうだったとしたら──、
「おい、人間! オレ様の質問にまだ答えてねェぞ! 無視してんじゃねぇよオラァ!」
「しっ……、質問って、何でしたっけ……」
とにかく無視をしてはいけないと思って咄嗟に言葉を返したら、アァ? と威嚇される。
「オレ様が敬愛してやまねぇカマルティユ先輩のお名前をクソ人間ごときがクッソダセェ愛称で呼んでやがるんじゃねぇよ死にてェのか!? そうなのか!? って訊いてんだろーがよォ! さっきからよォ!」
さっきからも何も、そんな質問内容は初耳なんだけど。
頭の片隅で冷静に突っ込む一方、パニックで上手く打開策を見つけられない。この緑の悪魔はどうやらカミュの知り合いで、カミュがカミュって呼ばれてることが気に入らないみたいで、でもカミュからカミュって呼んでほしいと言われたからそう呼び始めたわけで、えーっと、えーっと、
「はーい、時間切れー★ 正解を答えられなかった悪い子はぁ☆ 死に晒せやクソガァァァァァッ」
緑の悪魔の手に、さっきとは比べ物にならない強さの光が宿る。あの力をそのままぶつけられたら、僕どころかジルがどうなるか分からない。無意識にジルと距離を取ろうとした僕を、慌てて魔王の腕が引き戻してくる。
「ジル、離して! このままじゃ君まで……っ」
「馬鹿を言うな! お前を喪うわけにはいかない!」
「クソ魔王もクソ人間も死んじまえよクソガァァァァァッ」
ああ、もう、駄目だ。
観念して、ジルの腕に縋りつきながら強く目を瞑った瞬間、
「死ぬのは貴方ですよ、ノヴァユエ」
静かな声が響いたと思いきや、唐突に緑の悪魔の身体が思い切り吹き飛んで、天井へと頭から突っ込んでいった。
とりあえず挨拶をされたのだから返すのが礼儀かと思って、どもりながらも応答すると、緑の悪魔はニンマリと笑う。──けれど、眼鏡の奥の目がちっとも笑っていない。
「えらいえらーい★ ちゃんとご挨拶もできない子なら、うっかり殺しちゃうかもしれなかったよ☆ よかったね★」
そう言って心のこもっていない拍手をしている目の前の相手に、底知れぬ恐怖を感じる。それは、僕を背中に庇ってくれているジルが珍しく焦った顔をして、緊張感を高めているからかもしれない。クックとポッポも、見たことがないくらい羽を毛羽立たせて警戒していた。
「ね、魔王も察知できないくらい気配を消してたのに、どうしてボクのことを見つけちゃったの? 教えて★ 教えて☆」
「え、っと……、羽の一部が、窓の外に、見えていたので……」
「そっかー★ ウッカリしてたなー☆ といっても、実はわざとチラチラ見せてたんだけどねっ★」
「は、はぁ……、そ、そうなんですね」
得体の知れない相手だけれど、彼の言葉を無視してはいけないと本能的に感じて、なんとか会話を繋ごうと頑張ってみる。こんなに怪しい人を前にしたら、普段のジルであれば「こんな奴の相手をする必要は無い」くらいのことを言って僕の言葉を遮りそうなものなのに、今の彼は渋い面持ちで成り行きを見守るばかりだ。
「ね、ね、この羽がチラチラって見えたとき、どう思った?」
「どう、とは……?」
「誰かに似てるなー★ ……とか、思った?」
「ぁ、えっと……、カミュみたいだなぁと、思いました」
「──あ? 今なんて言ったお前?」
一瞬にして、部屋の中が真冬になったのかと思った。
そのくらい瞬時に周囲の空気が凍り、目の前の緑の悪魔の雰囲気も一転する。胡散臭い笑顔を引っ込めた悪魔は、妙に血走った目で僕を睨みつけてきた。
「なんなんだよ、その馴れ馴れしい呼び方はよォ! まさかとは思うが、カマルティユ先輩のことじゃねぇよなァ!? あァ!?」
「えっ……、そ、その……」
「なんとか言えよブチ殺すぞテメェ!」
そう喚くやいなや、緑の悪魔が素早く手を翳し、細長い光を矢のように放ってくる。ジルも瞬時に反応して半透明の薄い壁のようなものを作り出したけれど、それより早く、クックとポッポが光の矢の前に飛び出た。彼らは自身の体に光を纏って羽ばたきながら対抗していたけれど、じきに押し負けて弾き飛ばされてしまった。
愛鳥たちの小さな身体は勢いよく飛ばされ、調理場の隅の壁際へ叩きつけられる。そのままポテッと床に落ちた鳥たちの全身は、小さく痙攣していた。
「クック! ポッポ!」
「ミカ! 動くな!」
「でも! クックとポッポが! あのままじゃ死んじゃう!」
「大丈夫だ! あいつらはそう簡単には死なない!」
「そうだよねー★ 魔鳥って簡単には死なないよね☆ クソ人間とは違ってなァ!」
愛鳥たちの元へ駆け寄りたい僕と、それを必死に止めるジルの攻防の狭間で、緑の悪魔も二つの顔を交互に覗かせる。再び繰り出された攻撃を、今度はジルが防いでくれたけれど、悪魔が放った光は魔王の護りを掻い潜り、蒼白い腕を傷つけた。
「ジル……!」
「大丈夫だ」
「でも、血が……っ」
「平気だ。俺は何ともない。……だが、ミカがくらったら、この程度では済まない」
ジルの腕を一筋流れる赤い血を見ているうちに、やろうと思えばカミュはジルを殺せるのではないかという可能性が脳裏を掠める。カミュに出来るということは、彼と同等の力を持つ魔の者にも可能というわけで、もし目の前にいる緑の悪魔がそうだったとしたら──、
「おい、人間! オレ様の質問にまだ答えてねェぞ! 無視してんじゃねぇよオラァ!」
「しっ……、質問って、何でしたっけ……」
とにかく無視をしてはいけないと思って咄嗟に言葉を返したら、アァ? と威嚇される。
「オレ様が敬愛してやまねぇカマルティユ先輩のお名前をクソ人間ごときがクッソダセェ愛称で呼んでやがるんじゃねぇよ死にてェのか!? そうなのか!? って訊いてんだろーがよォ! さっきからよォ!」
さっきからも何も、そんな質問内容は初耳なんだけど。
頭の片隅で冷静に突っ込む一方、パニックで上手く打開策を見つけられない。この緑の悪魔はどうやらカミュの知り合いで、カミュがカミュって呼ばれてることが気に入らないみたいで、でもカミュからカミュって呼んでほしいと言われたからそう呼び始めたわけで、えーっと、えーっと、
「はーい、時間切れー★ 正解を答えられなかった悪い子はぁ☆ 死に晒せやクソガァァァァァッ」
緑の悪魔の手に、さっきとは比べ物にならない強さの光が宿る。あの力をそのままぶつけられたら、僕どころかジルがどうなるか分からない。無意識にジルと距離を取ろうとした僕を、慌てて魔王の腕が引き戻してくる。
「ジル、離して! このままじゃ君まで……っ」
「馬鹿を言うな! お前を喪うわけにはいかない!」
「クソ魔王もクソ人間も死んじまえよクソガァァァァァッ」
ああ、もう、駄目だ。
観念して、ジルの腕に縋りつきながら強く目を瞑った瞬間、
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