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【第7話】悪魔をもてなす夏野菜たっぷり辛口ピッツァ
【7-7】
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緑の悪魔は死んで──はいないみたいだ。頭部は天井にめり込んでいるから見えないけれど、首から下が全体的にピクピクと痙攣している。
何が起こったか分からないながらも、聞き覚えのある声がしたほうを振り返ると、そこには久しぶりに姿を見る赤い悪魔が立っていた。見るからに顔色が悪いし体調も悪そうだけれど、彼はそれ以上に相当憤っているようだ。怒りがきっかけで反動の苦しみを味わっていたはずなのに、またそんなに怒ってしまったら余計に辛くなってしまうのではないかと心配になる。
「カミュ……」
つい名前を呼んでしまってから、ハッと口元を押さえて、恐る恐る緑の悪魔の様子を窺う。緑の悪魔は、まだ天井に刺さったまま宙ぶらりんになっていた。
「ミカさん。彼に何かを言われましたか?」
久しぶりという挨拶を交わす隙も無く、カミュは眉間に皺を寄せながら尋ねてくる。僕に対して怒っているわけじゃないのは分かるけれど、それでもちょっと怖い。
「え、っと……、僕がカミュをカミュって呼ぶのが気に入らないみたいで……」
「──は? 彼がですか?」
「オレ様が敬愛してやまねぇカマルティユ先輩のお名前をクソ人間ごときがクッソダセェ愛称で呼んでやがるんじゃねぇよ死にてェのか、……と言っていたな」
ジルがとても正確に緑の悪魔の発言を伝えると、カミュの紅い瞳に宿る怒りの焔が激しくなった。白手袋を嵌めている手を固く握り締めて、ワナワナと震わせている。その憤怒を込めた言葉を緑の悪魔へ投げつけようと唇を開きかけたカミュは、そこで何かに気付いたように目を瞠った。
「ジル様。お怪我を……?」
「かすり傷だ。ミカは無傷だし、クックとポッポもそのうち回復するだろう。落ち着いたら回復魔法を掛けてやるさ」
「いえ、回復処置は最優先事項でしょう」
そう言ったカミュが軽く指を動かすと、ジルの怪我がみるみる治ってゆく。魔鳥たちにも回復魔法が届けられたのか、二羽は愛らしい声で鳴きながらまっすぐ僕の元へ飛んできた。僕の両肩それぞれに止まって、頬擦りをしてくれる。
「クック、ポッポ、良かった。庇ってくれてありがとう。ジルも守ってくれてありがとう。でも、みんな無理をしちゃダメだよ」
「クーッ」
「ポッ、ポッ」
「……ああ」
「カミュも、ありがとう。助けに来てくれたんだよね?」
「いえ、そんな……、もっと早く参上するべきでした。不調だったとはいえ、彼程度の気配隠しに目を眩まされるとは不覚です」
心底悔しそうに言いながら、僕たちに怪我がないことを視線で確認したカミュは、改めて天井に突き刺さっている緑の悪魔を睨み上げた。
「ノヴァユエ! 降りて来なさい!」
「……」
「気絶した振りをしても無駄ですよ! どの程度加減したのか、私はきちんと把握しているのですから!」
「……」
「ノヴァユエ! おしおきされたいんですか!?」
おしおき、という単語を聞いた途端、緑の悪魔は天井に四肢を張り付かせるようにして踏ん張り、ズボッと頭を引き抜いた。そして、頭部の数箇所から血を流しつつ、勢いよく降りて来てカミュの前で膝立ちになる。両手を組み、目をキラキラさせて、カミュに心酔しているように恍惚とした表情だ。
「先輩っ★ おしおきしてくれるのっ!?」
「その前に、貴方は謝罪するべきでしょう?」
「何をー?」
「自分で考えなさい」
静かな怒りを滾らせているカミュの迫力を前にしているというのに、緑の悪魔は舌をペロリと出して明後日の方向へ視線を放り投げた。ひしゃげた眼鏡も相まって、コメディじみた顔をしている。カミュは馬鹿にするなと怒鳴りはしないまでも、その一歩手前あたりまで苛立ちを募らせていそうだ。
しばらく変顔を維持したまま考え込んでいた緑の悪魔は、唐突に「ぅひょっ」と奇声を発する。
「わーかった★ カマルティユ先輩が具合悪いときに事前連絡なしに来ちゃった上にお見舞いのお土産も無いから怒っちゃってるー?」
「……」
「でもさーぁ、先輩の不調はさーぁ、自業自得じゃん? クソ人間なんかに情を持ったりするからさー、変に我慢したりしてさー、自分が辛くなっちゃってんじゃん? もともと先輩はクソ人間を食ったり殺したりはしてなかったけどさー、他の仲間が何してても気にしなくてさー、クソ人間がどうなっても我関せずでさー、めっっっちゃかっけぇぇぇぇッて感じだったのにさー、今はそんなゴミみたいな奴のご機嫌とったりしてるんでしょー? ねーわ、だっせーわー、萎えるわー、ってなるじゃん? そりゃお土産なんか用意しないってー! だってボクちん怒ってるんだもーん★ ……って答えはどお?」
「不正解です」
カミュは表情ひとつ変えることなく、緑の悪魔の顔を思い切り蹴り飛ばした。
何が起こったか分からないながらも、聞き覚えのある声がしたほうを振り返ると、そこには久しぶりに姿を見る赤い悪魔が立っていた。見るからに顔色が悪いし体調も悪そうだけれど、彼はそれ以上に相当憤っているようだ。怒りがきっかけで反動の苦しみを味わっていたはずなのに、またそんなに怒ってしまったら余計に辛くなってしまうのではないかと心配になる。
「カミュ……」
つい名前を呼んでしまってから、ハッと口元を押さえて、恐る恐る緑の悪魔の様子を窺う。緑の悪魔は、まだ天井に刺さったまま宙ぶらりんになっていた。
「ミカさん。彼に何かを言われましたか?」
久しぶりという挨拶を交わす隙も無く、カミュは眉間に皺を寄せながら尋ねてくる。僕に対して怒っているわけじゃないのは分かるけれど、それでもちょっと怖い。
「え、っと……、僕がカミュをカミュって呼ぶのが気に入らないみたいで……」
「──は? 彼がですか?」
「オレ様が敬愛してやまねぇカマルティユ先輩のお名前をクソ人間ごときがクッソダセェ愛称で呼んでやがるんじゃねぇよ死にてェのか、……と言っていたな」
ジルがとても正確に緑の悪魔の発言を伝えると、カミュの紅い瞳に宿る怒りの焔が激しくなった。白手袋を嵌めている手を固く握り締めて、ワナワナと震わせている。その憤怒を込めた言葉を緑の悪魔へ投げつけようと唇を開きかけたカミュは、そこで何かに気付いたように目を瞠った。
「ジル様。お怪我を……?」
「かすり傷だ。ミカは無傷だし、クックとポッポもそのうち回復するだろう。落ち着いたら回復魔法を掛けてやるさ」
「いえ、回復処置は最優先事項でしょう」
そう言ったカミュが軽く指を動かすと、ジルの怪我がみるみる治ってゆく。魔鳥たちにも回復魔法が届けられたのか、二羽は愛らしい声で鳴きながらまっすぐ僕の元へ飛んできた。僕の両肩それぞれに止まって、頬擦りをしてくれる。
「クック、ポッポ、良かった。庇ってくれてありがとう。ジルも守ってくれてありがとう。でも、みんな無理をしちゃダメだよ」
「クーッ」
「ポッ、ポッ」
「……ああ」
「カミュも、ありがとう。助けに来てくれたんだよね?」
「いえ、そんな……、もっと早く参上するべきでした。不調だったとはいえ、彼程度の気配隠しに目を眩まされるとは不覚です」
心底悔しそうに言いながら、僕たちに怪我がないことを視線で確認したカミュは、改めて天井に突き刺さっている緑の悪魔を睨み上げた。
「ノヴァユエ! 降りて来なさい!」
「……」
「気絶した振りをしても無駄ですよ! どの程度加減したのか、私はきちんと把握しているのですから!」
「……」
「ノヴァユエ! おしおきされたいんですか!?」
おしおき、という単語を聞いた途端、緑の悪魔は天井に四肢を張り付かせるようにして踏ん張り、ズボッと頭を引き抜いた。そして、頭部の数箇所から血を流しつつ、勢いよく降りて来てカミュの前で膝立ちになる。両手を組み、目をキラキラさせて、カミュに心酔しているように恍惚とした表情だ。
「先輩っ★ おしおきしてくれるのっ!?」
「その前に、貴方は謝罪するべきでしょう?」
「何をー?」
「自分で考えなさい」
静かな怒りを滾らせているカミュの迫力を前にしているというのに、緑の悪魔は舌をペロリと出して明後日の方向へ視線を放り投げた。ひしゃげた眼鏡も相まって、コメディじみた顔をしている。カミュは馬鹿にするなと怒鳴りはしないまでも、その一歩手前あたりまで苛立ちを募らせていそうだ。
しばらく変顔を維持したまま考え込んでいた緑の悪魔は、唐突に「ぅひょっ」と奇声を発する。
「わーかった★ カマルティユ先輩が具合悪いときに事前連絡なしに来ちゃった上にお見舞いのお土産も無いから怒っちゃってるー?」
「……」
「でもさーぁ、先輩の不調はさーぁ、自業自得じゃん? クソ人間なんかに情を持ったりするからさー、変に我慢したりしてさー、自分が辛くなっちゃってんじゃん? もともと先輩はクソ人間を食ったり殺したりはしてなかったけどさー、他の仲間が何してても気にしなくてさー、クソ人間がどうなっても我関せずでさー、めっっっちゃかっけぇぇぇぇッて感じだったのにさー、今はそんなゴミみたいな奴のご機嫌とったりしてるんでしょー? ねーわ、だっせーわー、萎えるわー、ってなるじゃん? そりゃお土産なんか用意しないってー! だってボクちん怒ってるんだもーん★ ……って答えはどお?」
「不正解です」
カミュは表情ひとつ変えることなく、緑の悪魔の顔を思い切り蹴り飛ばした。
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