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【第7話】悪魔をもてなす夏野菜たっぷり辛口ピッツァ
【7-8】
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「事前連絡もお土産もいりません。貴方が奔放な性格なのは分かっておりますし、私が魔の者として異端である自覚もあります。貴方がたから見れば私は、変わり者であり、軟弱者であり、頭がおかしいのでしょうね。私から見た貴方がたがそうであるように。それを否定する気も議論する気もありません。──問題はそこではないのですよ、ノヴァユエ」
淡々と言い放ったカミュは、蹲っている緑の悪魔の元へ歩み寄り、その腹部に再び鋭い蹴りを入れる。魔の者って頑丈なんだろうけど、あんな風に一方的に痛めつけて大丈夫なものだろうか。ましてや、カミュはかなり苛立っている。
止めたほうがいいのかと迷っていると、ジルが僕の背を撫でて首を振った。やめておけ、ということだろう。──確かに、魔の者同士だからこその交流方法というか、文化というか、そういうものもあるのかもしれない。カミュも手加減しているというようなことを言っていたし、様子を見ていたほうがいいのかな。
「此処は、プレカシオン王国に置かれた魔王の城。つまり、私の領域です。魔の者の領域を他の魔の者が侵すことは『父』が禁じていると、貴方も知っているでしょう? ノヴァユエ。貴方は、私の領域内の、私が大切にしている存在に手を出して傷つけた。そこに謝罪を要求しています。──これが正解です」
凛と言い放ったカミュの言葉をどう受け止めたのか、床に手足を伸ばして寝ころんだままの翠の悪魔はヒヒヒッと嗤った。そして、両手両足をバタつかせながら、小馬鹿にしたような口調で言う。
「なーるほどねー★ 確かに、カマルティユ先輩の領域の物に手ぇ出したかもしんないけどさー、そんなオオゴトじゃなくね? 『お父様』はさぁ、領域を酷く侵した同士なら殺してもいいよって言ってたけど、今回のボクちんってそこまで酷くないじゃん? 『お父様』は同士での殺し合いを禁じてるのに、カマルティユ先輩はボクちんをおしおきで殺すのー?」
「殺しませんよ」
カミュはうっすらと微笑んだ。思わずゾッとしてしまうくらい美しくて、氷のように冷たい微笑だった。
「殺したりしたら、おしおきにならないじゃないですか。それは、ノヴァユエにとってはご褒美でしょう?」
「えへへっ★ さっすが先輩、ボクのこと分かってくれてるぅ☆」
「そうでしょう? ですから、私は貴方に効果的な罰を与えます。──私の中から、ノヴァユエという存在を徹底的に排除しましょう」
「──は?」
ずっと小憎らしいくらいに飄々としていた緑の悪魔が、表情を消して蒼ざめる。それを満足そうに見下ろして、カミュはゆったりとした口調で宣言した。
「私は『ノヴァユエ』という悪魔なんて知りません。今後、その声が耳に入ることも、その姿が視界に入ることはないでしょう」
「なっ……、いや、いやだ……!」
「自分の悪事を認め、それを謝罪できないような後輩など、私には要りません。赦しを請いたいのであれば、私にではなく、貴方が口汚く罵った人間であるミカさんに跪いて詫びなさい」
「嫌だッ! そ、そんなん、どっちも嫌だぁッ」
「知りませんよ。……ちなみに、貴方がクッソダセェ愛称と言っていた『カミュ』という名は、私が尊敬するご婦人から与えられたもので、とても気に入っておりますし、だからこそミカさんにもそう呼んでほしいと私からお願いしたのですよ」
「あ、あう……、せ、せんぱぁい……」
緑の悪魔が情けない声を上げているけれど、カミュはもうそれを一瞥すらせず、僕たちのほうへ歩いて来た。そして、呆けて突っ立っている僕へ一礼したカミュは、柔らかい笑顔を向けてくれる。
「ミカさん、改めて、お久しぶりです。しばらく顔を見せていなかったご無礼、お許しくださいね」
「う、ううん、そんなこと……、でも、身体の調子が悪いんだよね? 僕とも顔を合わせたら辛いんでしょ? 早めに休んだほうが……」
「先輩! ごめんなさい、先輩ィ!」
「いいえ、もう大丈夫です。不思議ですね、燻っていた怒りを上手く発散できたようです。そんなに怒ったことなんて、あの一件以降無かったはずですのに」
「えっ? いや、でも、今……」
「先輩! 無視しないで! カマルティユ先輩!」
「今? なんのことでしょう。ああ、きっと、怖い夢を見てしまったのですね、ミカさん。お可哀想に。では、一緒に少し休みましょうか」
「えっ? えっ?」
「先輩! 無視はやだよぉ! ボクを無視しないでェ!」
緑の悪魔は、僕たちの間近まで這い寄って来て、必死にアピールしている。大泣きしている姿は小さな子どもみたいで、なんだかこちらの胸が痛んできた。彼がどれだけ泣き喚いても、カミュは何ひとつ反応せず、チラリとも見ない。クックとポッポはそんな様子を気まずそうに眺めていて、ジルも少し呆れた顔で静観している。
おそらくノヴァユエという名前の、この緑の悪魔は、自分の存在を無視されるのが何よりも辛いんだ。色々と言っていたけれど、彼はきっと本当にカミュを尊敬している。そんな相手から存在しないものとして扱われるのが悲しいんだ。
ここにいるのに認識されない、いないものとして扱われるというのは、僕も経験したことがある。母からそう接されていた遠い日を思い出して、心が苦しくなってきた。
「ねぇ、カミュ。無視はしないであげて」
「何のことでしょう?」
カミュはにこにこと笑っていて、少しも動じていない。それだけ深い怒りを抱いているんだろうし、僕だって緑の悪魔に対して思うところはあるけれど、それでも、なんだか……。
どうしたものかとオロオロしていると、涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃの緑の悪魔が、僕の足元に蹲って頭を下げてきた。
「ごめんなざい……、ゆるしてくださいぃ……」
淡々と言い放ったカミュは、蹲っている緑の悪魔の元へ歩み寄り、その腹部に再び鋭い蹴りを入れる。魔の者って頑丈なんだろうけど、あんな風に一方的に痛めつけて大丈夫なものだろうか。ましてや、カミュはかなり苛立っている。
止めたほうがいいのかと迷っていると、ジルが僕の背を撫でて首を振った。やめておけ、ということだろう。──確かに、魔の者同士だからこその交流方法というか、文化というか、そういうものもあるのかもしれない。カミュも手加減しているというようなことを言っていたし、様子を見ていたほうがいいのかな。
「此処は、プレカシオン王国に置かれた魔王の城。つまり、私の領域です。魔の者の領域を他の魔の者が侵すことは『父』が禁じていると、貴方も知っているでしょう? ノヴァユエ。貴方は、私の領域内の、私が大切にしている存在に手を出して傷つけた。そこに謝罪を要求しています。──これが正解です」
凛と言い放ったカミュの言葉をどう受け止めたのか、床に手足を伸ばして寝ころんだままの翠の悪魔はヒヒヒッと嗤った。そして、両手両足をバタつかせながら、小馬鹿にしたような口調で言う。
「なーるほどねー★ 確かに、カマルティユ先輩の領域の物に手ぇ出したかもしんないけどさー、そんなオオゴトじゃなくね? 『お父様』はさぁ、領域を酷く侵した同士なら殺してもいいよって言ってたけど、今回のボクちんってそこまで酷くないじゃん? 『お父様』は同士での殺し合いを禁じてるのに、カマルティユ先輩はボクちんをおしおきで殺すのー?」
「殺しませんよ」
カミュはうっすらと微笑んだ。思わずゾッとしてしまうくらい美しくて、氷のように冷たい微笑だった。
「殺したりしたら、おしおきにならないじゃないですか。それは、ノヴァユエにとってはご褒美でしょう?」
「えへへっ★ さっすが先輩、ボクのこと分かってくれてるぅ☆」
「そうでしょう? ですから、私は貴方に効果的な罰を与えます。──私の中から、ノヴァユエという存在を徹底的に排除しましょう」
「──は?」
ずっと小憎らしいくらいに飄々としていた緑の悪魔が、表情を消して蒼ざめる。それを満足そうに見下ろして、カミュはゆったりとした口調で宣言した。
「私は『ノヴァユエ』という悪魔なんて知りません。今後、その声が耳に入ることも、その姿が視界に入ることはないでしょう」
「なっ……、いや、いやだ……!」
「自分の悪事を認め、それを謝罪できないような後輩など、私には要りません。赦しを請いたいのであれば、私にではなく、貴方が口汚く罵った人間であるミカさんに跪いて詫びなさい」
「嫌だッ! そ、そんなん、どっちも嫌だぁッ」
「知りませんよ。……ちなみに、貴方がクッソダセェ愛称と言っていた『カミュ』という名は、私が尊敬するご婦人から与えられたもので、とても気に入っておりますし、だからこそミカさんにもそう呼んでほしいと私からお願いしたのですよ」
「あ、あう……、せ、せんぱぁい……」
緑の悪魔が情けない声を上げているけれど、カミュはもうそれを一瞥すらせず、僕たちのほうへ歩いて来た。そして、呆けて突っ立っている僕へ一礼したカミュは、柔らかい笑顔を向けてくれる。
「ミカさん、改めて、お久しぶりです。しばらく顔を見せていなかったご無礼、お許しくださいね」
「う、ううん、そんなこと……、でも、身体の調子が悪いんだよね? 僕とも顔を合わせたら辛いんでしょ? 早めに休んだほうが……」
「先輩! ごめんなさい、先輩ィ!」
「いいえ、もう大丈夫です。不思議ですね、燻っていた怒りを上手く発散できたようです。そんなに怒ったことなんて、あの一件以降無かったはずですのに」
「えっ? いや、でも、今……」
「先輩! 無視しないで! カマルティユ先輩!」
「今? なんのことでしょう。ああ、きっと、怖い夢を見てしまったのですね、ミカさん。お可哀想に。では、一緒に少し休みましょうか」
「えっ? えっ?」
「先輩! 無視はやだよぉ! ボクを無視しないでェ!」
緑の悪魔は、僕たちの間近まで這い寄って来て、必死にアピールしている。大泣きしている姿は小さな子どもみたいで、なんだかこちらの胸が痛んできた。彼がどれだけ泣き喚いても、カミュは何ひとつ反応せず、チラリとも見ない。クックとポッポはそんな様子を気まずそうに眺めていて、ジルも少し呆れた顔で静観している。
おそらくノヴァユエという名前の、この緑の悪魔は、自分の存在を無視されるのが何よりも辛いんだ。色々と言っていたけれど、彼はきっと本当にカミュを尊敬している。そんな相手から存在しないものとして扱われるのが悲しいんだ。
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「ねぇ、カミュ。無視はしないであげて」
「何のことでしょう?」
カミュはにこにこと笑っていて、少しも動じていない。それだけ深い怒りを抱いているんだろうし、僕だって緑の悪魔に対して思うところはあるけれど、それでも、なんだか……。
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「ごめんなざい……、ゆるしてくださいぃ……」
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