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【第7話】悪魔をもてなす夏野菜たっぷり辛口ピッツァ
【7-15】
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「あれれ~? なんでミカが悲しそうにしてんの?」
僕の表情の変化に気付いたのか、ノヴァユエが驚いたように声を掛けてくる。
「言っとくけど、うちの魔王って、この魔王とは全っっ然ちがうからね? 今までのヤツも、この前死んだヤツも、たぶんこれから来るヤツも同じで、領地内にのこのこ来た人間を片っ端から弄んだり嬲ったりしてたしさぁ! 暴走化してからの暴れっぷりなんて、ボクですら『うわぁ……やべぇなコイツ……』って思うくらいだし! 下僕の異世界人の扱いも酷かったし、人間的には早く死ねェェェって心境になるが普通だと思うよっ★」
ノヴァユエがきっと彼なりに僕を励まそうとして語ってくれた内容は、たぶん、この世界の常識でもあるのだろう。僕だって、一歩間違えれば他国の魔王に召喚されて恐ろしい目に遭っていたかもしれないし、そうなれば魔王の死を願う日々を送っていたかもしれないし、早々に殺されていた可能性もある。
──でも、ジルは違うから。ジルは魔王ではあるけれど、残虐な行いを望んでいないし、僕のことをとても大切にして見守ってくれている。だから、他国のことだと分かっていても、「魔王の死」について聞いてしまうと、どうしてもうちの魔王のことを重ねて切なくなるのは、もうどうしようもないのかもしれない。
「父への報告業務はきちんと済ませたんでしょうね?」
ノヴァユエへ言葉を返せずにいる僕の様子から何かを察してくれたのか、カミュが緑の悪魔の興味の矛先を逸らすように話題を変えてくれた。
父というのは、魔の者の頭領のことだろう。生殖機能が無い魔の者は全て頭領が生み出しているようだし、まさしく魔の者みんなにとってのお父さんなんだろうな。
「もっちろん★ お父様への報告を終わらせたからココに来たんだもーん☆」
「新しい魔王の情報の確認は?」
「してないっ★ だって、どーせ似たよーなのが来るだけじゃん?」
「……城内のお掃除や敷地内の手入れは?」
「するわけねーじゃん★ だって、それはそのうち来る異世界人の仕事でしょ☆ 下僕の仕事を奪うなんて可哀想★」
大好きな先輩に話し掛けられて嬉しそうなノヴァユエに対し、カミュは呆れたような面持ちで溜息を零す。
「はぁ……。明日、新しい魔王がいらっしゃるんでしょう? 早く帰ってお出迎えの支度をしなさい」
「えぇぇーっ!? やだやだ! ボク、そんなんしたことねーもん!」
「はぁ……、貴方も、私も、あくまでも魔王の『補佐役』でしょう? 主を迎え入れるのだという意識をもう少し持ったらどうです?」
「えー、やだよー! あくまでも悪魔だもん! 魔王の家来になったつもりねーもん! 尽くしてやる気なんか無いし、今のところ、お父様からのお小言もそんなにねぇし!」
「そんなに、ということは、全く無いわけではないでしょう? 父は、この星の人間たちの古の王たちと約束を交わしているのですよ。我々魔の者にとって、約束は絶対的なものです。父が約束を反故にしたとされないような振る舞いを、我々も心掛けなければ」
「うー……、でも、先輩みたいになんて無理だよぅ」
「私は魔の者の中でも異質な存在ですから。同じように考えろとも、同じようにしろとも言いません。ただ、迎え入れる最初くらいはきちんとしなさいと言いたいだけです。父のお小言もその程度でしょう?」
納得できる部分もあったのか、ノヴァユエはそれ以上反論せず、拗ねた顔で唇を尖らせた。おそらく彼は、そろそろ帰るように再度促されるのだろう。
姿を現した当初は、正直なところ怖かったし早く帰ってほしかったけれど、いざ腹を割って話してみると、彼の人懐こくて素直な性格に癒される部分もあったりするので、このまま帰られるとそれはそれで少し寂しい。
不思議な名残惜しさを感じているうちに、悪魔たちは想像通りのやり取りを始めた。
「さぁ、ノヴァユエ。皆さんに許していただけたことですし、もう帰りなさい」
「ええー! もっといたいよぅ!」
「我儘を言うんじゃありません。貴方が急に現れたから、ジル様やミカさんもご自分のやらねばならないことを出来ずにいるんですよ」
「いや、俺は別に……、」
「ジル様、ノヴァユエを甘やかさないでください。すぐ調子に乗って、可愛げが無くなるんですから」
「そんなことないもん! ボク、いい子に仲良くするもん!」
「我儘を言わない! すぐに帰りなさい!」
聞き分けのない子を叱っているお母さんみたいなカミュが語気を荒らげると、ノヴァユエは顔中をしわくちゃにしてションボリする。今にも泣き出しそうだ。
すっかり心を許しているらしい緑の悪魔は、下心など無く、ただただもう少しこの城で過ごしたいだけなんだろう。城主であるジルが追い出したがっているわけでもないのだし、強引に帰してしまうのは、ちょっと可哀想な気もする。
少し悩んでから、僕はノヴァユエへおずおずと問い掛けた。
「……ねぇ、一緒にお昼ごはんを食べてから帰る?」
僕の表情の変化に気付いたのか、ノヴァユエが驚いたように声を掛けてくる。
「言っとくけど、うちの魔王って、この魔王とは全っっ然ちがうからね? 今までのヤツも、この前死んだヤツも、たぶんこれから来るヤツも同じで、領地内にのこのこ来た人間を片っ端から弄んだり嬲ったりしてたしさぁ! 暴走化してからの暴れっぷりなんて、ボクですら『うわぁ……やべぇなコイツ……』って思うくらいだし! 下僕の異世界人の扱いも酷かったし、人間的には早く死ねェェェって心境になるが普通だと思うよっ★」
ノヴァユエがきっと彼なりに僕を励まそうとして語ってくれた内容は、たぶん、この世界の常識でもあるのだろう。僕だって、一歩間違えれば他国の魔王に召喚されて恐ろしい目に遭っていたかもしれないし、そうなれば魔王の死を願う日々を送っていたかもしれないし、早々に殺されていた可能性もある。
──でも、ジルは違うから。ジルは魔王ではあるけれど、残虐な行いを望んでいないし、僕のことをとても大切にして見守ってくれている。だから、他国のことだと分かっていても、「魔王の死」について聞いてしまうと、どうしてもうちの魔王のことを重ねて切なくなるのは、もうどうしようもないのかもしれない。
「父への報告業務はきちんと済ませたんでしょうね?」
ノヴァユエへ言葉を返せずにいる僕の様子から何かを察してくれたのか、カミュが緑の悪魔の興味の矛先を逸らすように話題を変えてくれた。
父というのは、魔の者の頭領のことだろう。生殖機能が無い魔の者は全て頭領が生み出しているようだし、まさしく魔の者みんなにとってのお父さんなんだろうな。
「もっちろん★ お父様への報告を終わらせたからココに来たんだもーん☆」
「新しい魔王の情報の確認は?」
「してないっ★ だって、どーせ似たよーなのが来るだけじゃん?」
「……城内のお掃除や敷地内の手入れは?」
「するわけねーじゃん★ だって、それはそのうち来る異世界人の仕事でしょ☆ 下僕の仕事を奪うなんて可哀想★」
大好きな先輩に話し掛けられて嬉しそうなノヴァユエに対し、カミュは呆れたような面持ちで溜息を零す。
「はぁ……。明日、新しい魔王がいらっしゃるんでしょう? 早く帰ってお出迎えの支度をしなさい」
「えぇぇーっ!? やだやだ! ボク、そんなんしたことねーもん!」
「はぁ……、貴方も、私も、あくまでも魔王の『補佐役』でしょう? 主を迎え入れるのだという意識をもう少し持ったらどうです?」
「えー、やだよー! あくまでも悪魔だもん! 魔王の家来になったつもりねーもん! 尽くしてやる気なんか無いし、今のところ、お父様からのお小言もそんなにねぇし!」
「そんなに、ということは、全く無いわけではないでしょう? 父は、この星の人間たちの古の王たちと約束を交わしているのですよ。我々魔の者にとって、約束は絶対的なものです。父が約束を反故にしたとされないような振る舞いを、我々も心掛けなければ」
「うー……、でも、先輩みたいになんて無理だよぅ」
「私は魔の者の中でも異質な存在ですから。同じように考えろとも、同じようにしろとも言いません。ただ、迎え入れる最初くらいはきちんとしなさいと言いたいだけです。父のお小言もその程度でしょう?」
納得できる部分もあったのか、ノヴァユエはそれ以上反論せず、拗ねた顔で唇を尖らせた。おそらく彼は、そろそろ帰るように再度促されるのだろう。
姿を現した当初は、正直なところ怖かったし早く帰ってほしかったけれど、いざ腹を割って話してみると、彼の人懐こくて素直な性格に癒される部分もあったりするので、このまま帰られるとそれはそれで少し寂しい。
不思議な名残惜しさを感じているうちに、悪魔たちは想像通りのやり取りを始めた。
「さぁ、ノヴァユエ。皆さんに許していただけたことですし、もう帰りなさい」
「ええー! もっといたいよぅ!」
「我儘を言うんじゃありません。貴方が急に現れたから、ジル様やミカさんもご自分のやらねばならないことを出来ずにいるんですよ」
「いや、俺は別に……、」
「ジル様、ノヴァユエを甘やかさないでください。すぐ調子に乗って、可愛げが無くなるんですから」
「そんなことないもん! ボク、いい子に仲良くするもん!」
「我儘を言わない! すぐに帰りなさい!」
聞き分けのない子を叱っているお母さんみたいなカミュが語気を荒らげると、ノヴァユエは顔中をしわくちゃにしてションボリする。今にも泣き出しそうだ。
すっかり心を許しているらしい緑の悪魔は、下心など無く、ただただもう少しこの城で過ごしたいだけなんだろう。城主であるジルが追い出したがっているわけでもないのだし、強引に帰してしまうのは、ちょっと可哀想な気もする。
少し悩んでから、僕はノヴァユエへおずおずと問い掛けた。
「……ねぇ、一緒にお昼ごはんを食べてから帰る?」
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