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【第7話】悪魔をもてなす夏野菜たっぷり辛口ピッツァ
【7-17】
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「僕はいいけど……、でも、カミュ、休んでいなくて大丈夫なの?」
ノヴァユエの襲来に気付いて慌てて駆けつけてくれたときと比べたら、今はもう顔も青くないし、言動も普段通りに見えるけれど、もう無理をしないほうがいいんじゃないかな。
でも、カミュは落ち着いた顔で首を振る。
「いいえ、大丈夫です。ノヴァユエを叱ったことで、良い感じに怒りの衝動を発散できたようです。ご心配をおかけしてしまい、すみません。もう平気ですよ」
「そう……? でも、無理はしないでね」
「ありがとうございます。我々が調理場で昼食の用意を進めている間に、ジル様にはご自分のことをしていていただきましょう」
そう言ったカミュがジルへ視線を投げ掛けると、漆黒の瞳は心配そうにじっと見つめ返していた。
「……本当に、もう大丈夫なのか?」
「はい、もうすっかり。お任せください。仮にノヴァユエが気まぐれを起こしたとしても、ミカさんには一切の手出しをさせません。同じ特級とはいえ、私のほうが力は上ですから」
自信を持って答えるカミュの姿に安心したのか、ジルは納得したように「分かった」と答えて立ち上がる。そして、僕の傍へ歩み寄って来て、そっと頭を撫でてきた。
「ミカ、鈴はきちんとあるな?」
「うん、ちゃんと掛けてるよ」
そう答えながら、僕はシャツの襟元を広げて、首から下げている守護鈴を見せる。イラさんの一件があって以降、ジルの守護鈴は首飾りにして常に身に着けるようにしていた。ジルはわずかに微笑んで頷く。
「カミュがいれば何も心配は無いだろうが、もしも何かあれば、遠慮なく呼んでくれ。俺が魔の者に敵うわけではないが、一人で心細いよりはマシだろう」
「うん、心強いよ。ありがとう、ジル」
「ああ」
ジルはもう一度、僕の頭を撫でてから、静かに食堂を出て行った。カミュの勧めに従って、私室に戻って仕事をするつもりなんだろう。
ジルが退室した後、残った僕たちもカミュに促されて調理場へと移動した。
◇
「──それで、ミカさん。何をお作りになるのでしょう?」
三人とも手を洗い終えてから、カミュがわくわくしながら尋ねてくる。
「ピザを作るよ! この前収穫した夏野菜をたっぷり使うんだ。僕たちはピリ辛、ノヴァユエは刺激たっぷりの激辛にしてね」
「わぁ、美味しそうですね! 私、あのピッザというもの、大好きです。マリオさんも、よく作ってくださいました」
やっぱりピザともピッツァとも発音できてないながらも、カミュは本当に嬉しそうに笑ってくれた。マリオさんが作るピザには敵わないだろうけど、その頃の優しい思い出を記憶から取り出して懐かしむきっかけになれたら、僕も嬉しい。
笑い合う僕たちを見て、ノヴァユエは不思議そうに首を傾げている。
「カマルティユ先輩、ほんとに人間の食べ物が好きなんだねー★ めずらしー☆」
「人間の食べ物が好き、と言われると、自分でも違和感がありますね。ただ、この城で、食事係の方々からいただく料理は大好きですよ。美味しい、と心から思っています」
「ふーん……? ミカが作るから、じゃなくて、食事係が作るから、なんだ?」
「ええ、まぁ、その言い方もなんだか嫌ですが……、ジル様の代になってからいらっしゃった食事係の皆さんが作ってくださるごはんやおやつは、どれも美味しくいただいていますよ」
「ふーん……?」
ノヴァユエは本当に不思議そうにしているから、魔の者にとって、人間と同じものを日常的に食べているというのはだいぶ珍しいことなんだろうな。食事を必要としない身体みたいだし、食べるとしても人間そのものをって感じみたいだし、それが常識の種族としては理解しがたくても無理はない。
そもそも、カミュだってそういう認識だったはず。自分が朝から晩までしっかりと食事をとることになるなんて、ジルが魔王になるまで思いもしなかったんじゃないかな。
「カミュがごはんを食べるようになったのって、アビーさんがきっかけだったんだっけ?」
前にそんなようなことを言っていた気がする。魔王ジルベールの初代食事係であるアビゲールおばあちゃんに叱られたとか、なんとか。
思い出しながら問い掛けた僕へ頷きながら、カミュは懐かしそうに目を細める。
「ええ、そうです。アビーさんに怒られてから、私も食事をいただくようになりました」
「人間に怒られて人間のものを食べ始めるって、なんかもー、全然わっかんねぇなぁ……」
「ふふっ、そうでしょうね。私も、初めて『アンタもアタシのメシを食いな!』なんて言われたときには驚きましたし、正直なところ抵抗感も大きかったのですよ」
怪訝そうなノヴァユエの頭を軽く撫でてから、カミュは続きを話し始めた。
「ジル様が魔王になられてすぐに召喚されてきたアビーさんが初めて料理を作られたとき、私は魔法で様々な補助をした後、食堂の端に立ってジル様を見守るつもりでした。ですが、アビーさんは『何してんだい! アンタもコッチに座りな!』といきなり怒鳴ってこられたのですよ」
ノヴァユエの襲来に気付いて慌てて駆けつけてくれたときと比べたら、今はもう顔も青くないし、言動も普段通りに見えるけれど、もう無理をしないほうがいいんじゃないかな。
でも、カミュは落ち着いた顔で首を振る。
「いいえ、大丈夫です。ノヴァユエを叱ったことで、良い感じに怒りの衝動を発散できたようです。ご心配をおかけしてしまい、すみません。もう平気ですよ」
「そう……? でも、無理はしないでね」
「ありがとうございます。我々が調理場で昼食の用意を進めている間に、ジル様にはご自分のことをしていていただきましょう」
そう言ったカミュがジルへ視線を投げ掛けると、漆黒の瞳は心配そうにじっと見つめ返していた。
「……本当に、もう大丈夫なのか?」
「はい、もうすっかり。お任せください。仮にノヴァユエが気まぐれを起こしたとしても、ミカさんには一切の手出しをさせません。同じ特級とはいえ、私のほうが力は上ですから」
自信を持って答えるカミュの姿に安心したのか、ジルは納得したように「分かった」と答えて立ち上がる。そして、僕の傍へ歩み寄って来て、そっと頭を撫でてきた。
「ミカ、鈴はきちんとあるな?」
「うん、ちゃんと掛けてるよ」
そう答えながら、僕はシャツの襟元を広げて、首から下げている守護鈴を見せる。イラさんの一件があって以降、ジルの守護鈴は首飾りにして常に身に着けるようにしていた。ジルはわずかに微笑んで頷く。
「カミュがいれば何も心配は無いだろうが、もしも何かあれば、遠慮なく呼んでくれ。俺が魔の者に敵うわけではないが、一人で心細いよりはマシだろう」
「うん、心強いよ。ありがとう、ジル」
「ああ」
ジルはもう一度、僕の頭を撫でてから、静かに食堂を出て行った。カミュの勧めに従って、私室に戻って仕事をするつもりなんだろう。
ジルが退室した後、残った僕たちもカミュに促されて調理場へと移動した。
◇
「──それで、ミカさん。何をお作りになるのでしょう?」
三人とも手を洗い終えてから、カミュがわくわくしながら尋ねてくる。
「ピザを作るよ! この前収穫した夏野菜をたっぷり使うんだ。僕たちはピリ辛、ノヴァユエは刺激たっぷりの激辛にしてね」
「わぁ、美味しそうですね! 私、あのピッザというもの、大好きです。マリオさんも、よく作ってくださいました」
やっぱりピザともピッツァとも発音できてないながらも、カミュは本当に嬉しそうに笑ってくれた。マリオさんが作るピザには敵わないだろうけど、その頃の優しい思い出を記憶から取り出して懐かしむきっかけになれたら、僕も嬉しい。
笑い合う僕たちを見て、ノヴァユエは不思議そうに首を傾げている。
「カマルティユ先輩、ほんとに人間の食べ物が好きなんだねー★ めずらしー☆」
「人間の食べ物が好き、と言われると、自分でも違和感がありますね。ただ、この城で、食事係の方々からいただく料理は大好きですよ。美味しい、と心から思っています」
「ふーん……? ミカが作るから、じゃなくて、食事係が作るから、なんだ?」
「ええ、まぁ、その言い方もなんだか嫌ですが……、ジル様の代になってからいらっしゃった食事係の皆さんが作ってくださるごはんやおやつは、どれも美味しくいただいていますよ」
「ふーん……?」
ノヴァユエは本当に不思議そうにしているから、魔の者にとって、人間と同じものを日常的に食べているというのはだいぶ珍しいことなんだろうな。食事を必要としない身体みたいだし、食べるとしても人間そのものをって感じみたいだし、それが常識の種族としては理解しがたくても無理はない。
そもそも、カミュだってそういう認識だったはず。自分が朝から晩までしっかりと食事をとることになるなんて、ジルが魔王になるまで思いもしなかったんじゃないかな。
「カミュがごはんを食べるようになったのって、アビーさんがきっかけだったんだっけ?」
前にそんなようなことを言っていた気がする。魔王ジルベールの初代食事係であるアビゲールおばあちゃんに叱られたとか、なんとか。
思い出しながら問い掛けた僕へ頷きながら、カミュは懐かしそうに目を細める。
「ええ、そうです。アビーさんに怒られてから、私も食事をいただくようになりました」
「人間に怒られて人間のものを食べ始めるって、なんかもー、全然わっかんねぇなぁ……」
「ふふっ、そうでしょうね。私も、初めて『アンタもアタシのメシを食いな!』なんて言われたときには驚きましたし、正直なところ抵抗感も大きかったのですよ」
怪訝そうなノヴァユエの頭を軽く撫でてから、カミュは続きを話し始めた。
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