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【第8話】優しさが溶け込むフルーツフラッペ
【8-8】
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ジルベールが匙を口元へ運ぶ度に、ミカはそれを素直に食べ続け、少なめによそってきたとはいえ完食する。無理をして食べさせようとは思っていなかった魔王は、病人に限界が見えたら食事を中断するつもりだったが、ミカに気持ち悪さを堪えている様子は無かった。
「ごちそうさまでした。ジル、ありがとう。美味しかったよ」
「そうか、それはよかった」
「ジルもカミュも朝ごはん、まだでしょ? クックもポッポもそうだし……、みんなお腹空いちゃったんじゃない?」
「大丈夫、心配するな。俺たちもきちんと食事をする。……ほら、水を飲め」
「うん」
相変わらず自分の周りの者たちのことばかり心配しているミカに水を飲ませ、ジルベールは相手の額に手を宛がう。やはり熱は上がり続けているようだ。簡単に快癒するとは思えないことを憂いながら、魔王はミカの頭を撫でる。
「この後は、温かくし、水をしっかりと飲んで、ゆっくりと休むんだ。昼食に何か食べたいものはあるか? ……といっても、俺に作れるものには限りがあるが」
「ありがとう。……もしできれば、あれが食べてみたいな」
「あれ?」
「うん、ほら、ジルの故郷では、熱が出た子どもにミルク粥のようなものを作ってあげるって言ってたでしょ? 僕も食べてみたくて……」
意外な要望を受けて、ジルベールは黒目を瞬かせた。リクエストされた料理がというよりも、故郷にまつわる話題をごく自然に出してきたことに驚いたのだ。
ジルベールが魔王になった経緯を気にしてか、ミカはジルベールの過去や故郷に関しての話題を避けるようにしているようだった。既に過去への折り合いをつけていたジルベールとしては、そんなに気にしなくてもいいのにと思っていたが、せっかくの気遣いに水を差すのも悪いと考えて黙っていたのだ。
しかし、ミカは今、自然な調子でジルベールの故郷のことを話題に出した。高熱のせいで正常な思考能力ではない可能性もあるが、余計な気を回さず屈託なく話してくれたと捉えたほうが嬉しい。
「ああ、分かった。だが、今作ったものとは違って、甘い風味のものだぞ?」
「うん、それが食べてみたいんだ」
「よし、上手く作れるかは分からないがやってみよう」
「楽しみにしているね」
嬉しそうな顔をしているミカを見下ろし、ジルベールも静かに笑い返した。その様子を微笑ましく見守っていたカマルティユは、清潔な布巾を持った手を伸ばし、ミカの額に滲む汗を拭う。気持ちよさそうに目を細めてから、ミカは不意に不安そうに尋ねてきた。
「ねぇ、本当にジルもカミュも風邪はうつらないんだよね? クックとポッポも大丈夫なんだよね?」
「ああ、本当だ。この城で風邪をひくのはミカだけだ」
「私たちがこうして一緒にいても、何ともありませんからね。安心して、頼ってください」
「クッ!」
「ポッ!」
「うん、みんなありがとう」
魔王も悪魔も魔鳥も、人間の病気には罹らない。それを改めて確認したミカは、安心したように深く息をつく。だいぶ身体が辛そうだ。カマルティユもそれを察したのか、「そろそろ横になりましょうね」と声を掛けながら、優しい仕草でミカの身体を横たえた。クックとポッポは布団の中に潜り込み、ミカに寄り添っているようだ。
「食べた直後だが、横になって苦しくないか?」
「うん、大丈夫」
「寒くはありませんか?」
「寒気はするけど、クックとポッポがあったかいから大丈夫」
「とにかく、まずは熱を下げないとな。栄養も摂って、しっかり休まなければ。……そのうち、マティアスから果物が届けられるはずだ。この辺では採れないもののはずだから、ミカも新鮮に食べられるだろう。届いたら、冷やして食べさせてやる」
「マティ様が? お中元みたいな感じなのかなぁ……?」
「……オチュー?」
「ぁ……、ううん、なんでもない。たのしみだね」
ぐったりしながらも気丈に微笑むミカの頭を撫でながら、彼が風邪をひいたことはとてもじゃないがマティアスには報告できない、と考える。見舞いの品を送り付けてくる可能性も高いが、下手をすると本人がここへやって来かねない。──ただ、病人の栄養となる果物の差し入れは今はありがたい。ジルベールの料理にも限度があり、ましてや栄養を重視したものを作ることは難しい。
「そろそろ、キカさんもいらっしゃる頃合いのような気もしますが、今いらっしゃってもミカさんにはお会いできないかもしれないですね」
「うん……、風邪をうつしちゃいけないもんね。キカさんが来る前に治したいなぁ」
「ええ、そうですね。早めに元気になれるよう、たくさん休んで、しっかり食べましょう」
「うん」
カマルティユとミカの会話に耳を傾けながら、確かにそろそろマレシスカが行商に訪れる頃だとジルベールは考える。ミカがマレシスカに懐いているのは分かっているが、今は少しでも早く彼女から食材を得たいと考えてしまう。それに、マレシスカであれば、看病食について助言もくれるだろう。
勿論、彼女の訪問までにミカが順調に回復してくれるなら、それに越したことは無いのだが。そんなことをあれこれ考えながら、ジルベールは密かに溜息を零した。
「ごちそうさまでした。ジル、ありがとう。美味しかったよ」
「そうか、それはよかった」
「ジルもカミュも朝ごはん、まだでしょ? クックもポッポもそうだし……、みんなお腹空いちゃったんじゃない?」
「大丈夫、心配するな。俺たちもきちんと食事をする。……ほら、水を飲め」
「うん」
相変わらず自分の周りの者たちのことばかり心配しているミカに水を飲ませ、ジルベールは相手の額に手を宛がう。やはり熱は上がり続けているようだ。簡単に快癒するとは思えないことを憂いながら、魔王はミカの頭を撫でる。
「この後は、温かくし、水をしっかりと飲んで、ゆっくりと休むんだ。昼食に何か食べたいものはあるか? ……といっても、俺に作れるものには限りがあるが」
「ありがとう。……もしできれば、あれが食べてみたいな」
「あれ?」
「うん、ほら、ジルの故郷では、熱が出た子どもにミルク粥のようなものを作ってあげるって言ってたでしょ? 僕も食べてみたくて……」
意外な要望を受けて、ジルベールは黒目を瞬かせた。リクエストされた料理がというよりも、故郷にまつわる話題をごく自然に出してきたことに驚いたのだ。
ジルベールが魔王になった経緯を気にしてか、ミカはジルベールの過去や故郷に関しての話題を避けるようにしているようだった。既に過去への折り合いをつけていたジルベールとしては、そんなに気にしなくてもいいのにと思っていたが、せっかくの気遣いに水を差すのも悪いと考えて黙っていたのだ。
しかし、ミカは今、自然な調子でジルベールの故郷のことを話題に出した。高熱のせいで正常な思考能力ではない可能性もあるが、余計な気を回さず屈託なく話してくれたと捉えたほうが嬉しい。
「ああ、分かった。だが、今作ったものとは違って、甘い風味のものだぞ?」
「うん、それが食べてみたいんだ」
「よし、上手く作れるかは分からないがやってみよう」
「楽しみにしているね」
嬉しそうな顔をしているミカを見下ろし、ジルベールも静かに笑い返した。その様子を微笑ましく見守っていたカマルティユは、清潔な布巾を持った手を伸ばし、ミカの額に滲む汗を拭う。気持ちよさそうに目を細めてから、ミカは不意に不安そうに尋ねてきた。
「ねぇ、本当にジルもカミュも風邪はうつらないんだよね? クックとポッポも大丈夫なんだよね?」
「ああ、本当だ。この城で風邪をひくのはミカだけだ」
「私たちがこうして一緒にいても、何ともありませんからね。安心して、頼ってください」
「クッ!」
「ポッ!」
「うん、みんなありがとう」
魔王も悪魔も魔鳥も、人間の病気には罹らない。それを改めて確認したミカは、安心したように深く息をつく。だいぶ身体が辛そうだ。カマルティユもそれを察したのか、「そろそろ横になりましょうね」と声を掛けながら、優しい仕草でミカの身体を横たえた。クックとポッポは布団の中に潜り込み、ミカに寄り添っているようだ。
「食べた直後だが、横になって苦しくないか?」
「うん、大丈夫」
「寒くはありませんか?」
「寒気はするけど、クックとポッポがあったかいから大丈夫」
「とにかく、まずは熱を下げないとな。栄養も摂って、しっかり休まなければ。……そのうち、マティアスから果物が届けられるはずだ。この辺では採れないもののはずだから、ミカも新鮮に食べられるだろう。届いたら、冷やして食べさせてやる」
「マティ様が? お中元みたいな感じなのかなぁ……?」
「……オチュー?」
「ぁ……、ううん、なんでもない。たのしみだね」
ぐったりしながらも気丈に微笑むミカの頭を撫でながら、彼が風邪をひいたことはとてもじゃないがマティアスには報告できない、と考える。見舞いの品を送り付けてくる可能性も高いが、下手をすると本人がここへやって来かねない。──ただ、病人の栄養となる果物の差し入れは今はありがたい。ジルベールの料理にも限度があり、ましてや栄養を重視したものを作ることは難しい。
「そろそろ、キカさんもいらっしゃる頃合いのような気もしますが、今いらっしゃってもミカさんにはお会いできないかもしれないですね」
「うん……、風邪をうつしちゃいけないもんね。キカさんが来る前に治したいなぁ」
「ええ、そうですね。早めに元気になれるよう、たくさん休んで、しっかり食べましょう」
「うん」
カマルティユとミカの会話に耳を傾けながら、確かにそろそろマレシスカが行商に訪れる頃だとジルベールは考える。ミカがマレシスカに懐いているのは分かっているが、今は少しでも早く彼女から食材を得たいと考えてしまう。それに、マレシスカであれば、看病食について助言もくれるだろう。
勿論、彼女の訪問までにミカが順調に回復してくれるなら、それに越したことは無いのだが。そんなことをあれこれ考えながら、ジルベールは密かに溜息を零した。
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