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【第9話】父と息子と豚汁と
【9-13】
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「どうやら、クックとポッポが甘えん坊になるお時間となったようです」
「……えっ?」
「ほぅ?」
「クッ!?」
「ポッ!?」
美しい顔で微笑みながら、何をワケの分からないことを言ってるんだ!?クックとポッポもビックリしたように、ただでさえ丸い目を更にまんまるにしている。マティ様もポカンとしていた。
でも、カミュは驚いている僕たちのほうがおかしいとでも言わんばかりの落ち着きっぷりのまま、にこやかに先を続ける。
「マティアス様もご存知かと思いますが、クックとポッポはミカさんが大好きでして、他の方と楽しそうにされているのを見ているうちにヤキモチを妬いてしまうことがあるのです。そうなると、ミカさんに甘えたくて騒ぎ始めるのですよ」
「そうなのか? 確かに、今しがたの魔鳥たちは随分と鳴き騒いでおったが……」
「王子様の相手ばかりでなく自分たちも構ってほしい、と駄々をこね始めたのです。……ね、クック、ポッポ。そうですよね?」
「ク、クゥ……」
「ポ、ポー……」
カミュの笑顔から圧力を感じたのか、彼の話に合わせるために、クックとポッポは僕の肩へと飛び移ってきて、頬擦りをしてくれた。なんて健気で可愛いんだろう。ふくふくな羽毛の感触が、とても気持ちいい。二羽を交互に指先で撫でると、愛鳥たちはキュルキュルと喉を鳴らした。
「本当に甘えん坊なのだな。魔鳥とは誇り高く、時には気難しい生き物だと思っていたが、彼らはなんとも人懐っこい」
「ミカさんが愛情を注がれている賜物でしょう。……マティアス様、いかがでしょう?ミカさんに甘やかしてもらう時間を、クックとポッポに少し与えてあげるというのは」
「うぅむ……、だが、しかし……」
マティ様は、僕のほうをチラチラと見ながら返事を渋る。優しい王子様はおそらく、僕を取り残したままこの場を去ってよいものかと悩んでいるのだろう。
そんなマティ様に対し、少し身を屈めたカミュが「失礼いたします」と一言断ってから、何か内緒話を囁きかけた。すると、みるみるうちに王子様のアイスブルーの瞳が煌めき始める。
「なんと……! た、確かに、それは何としても見ておきたい……!」
「そうでしょう? マティアス様のご意見も取り入れさせていただきたいのです」
ああ、たぶん、秋の感謝祭へ向けてカミュが製作中だという僕の衣装について話したのかな? マティ様はかなり興味を惹かれている様子だ。
「見に行きたいが、ミカを一人残しておくだなどと……」
「よく分かりませんが、僕は一人じゃないですよ。クックとポッポが一緒にいますし」
「クッ!」
「ポッ!」
マティ様には申し訳ないけれど、すっとぼけてカミュの援護をする。クックとポッポも上手い具合に乗っかってきて、任せておけとばかりにドヤ顔を披露してくれた。
「この場を離れるのもそんなに長時間ではないですし、私の転移魔法でマティアス様をお連れしたら更に時間を短縮できます。そもそも、ここは魔王の城の敷地内です。ジル様も、ミカさんの安全に関しては常に目を光らせておりますから」
「うむ、そうだな……、魔鳥たちもミカに甘えたがっているようだし、互いに利点はあるか。少しなら、この場を離れてもよかろう」
カミュが優しい声音で巧みに誘い込むと、マティ様はすっかりその気になったようだ。──そういえば、カミュの種族「魔の者」は、人間を誘惑して操るのが得意なんだっけ。カミュは勿論、悪事に誘ったりしないけれど、こういうときに、彼の生まれもっての才能が垣間見える気がした。悪い意味ではなく、良い意味で。
「ミカさん、少しお待ちいただいても大丈夫ですか? 危険な気配があれば、すぐに参上いたしますので」
「大丈夫だよ。マティ様も、カミュとゆっくり楽しんできてくださいね」
「すまない、ミカ。すぐに戻るからな」
「お気遣いありがとうございます。でも、本当に大丈夫ですよ」
どこかウキウキしているマティ様の手を取りながら、カミュが僕に向かってこっそりとウインクしてくる。少し緊張している僕の様子に気が付いて、励ましてくれたのかもしれない。頷きを返すと、すぐに二人の姿が消えた。転移魔法で移動していったのだろう。
──とりあえず、これで当初の予定通りの布陣になったかな。予定とは違う形とはいえ、ジルと賢者、カミュと王子、僕と来訪者という組み合わせでの対峙となる。
「クック、ポッポ。話を合わせてくれて、ありがとう。ふたりともいい子だね」
「クッ!」
「ポッ!」
彼らは鳥だから本当は「二羽」だけど、語り掛けるときは、つい「ふたり」と言ってしまう。ご機嫌なクックとポッポは、可愛らしく胸を張った。
「さて。君たちが騒がないってことは、お客様──もといお子様は、危険な子じゃないってことだよね。ここで待っていれば会えるのかな?」
僕の質問にクックとポッポが首をカクカク振って答えてくれたところで、荷馬車の影になっている辺りから小さな足音が聞こえてきた。
「……えっ?」
「ほぅ?」
「クッ!?」
「ポッ!?」
美しい顔で微笑みながら、何をワケの分からないことを言ってるんだ!?クックとポッポもビックリしたように、ただでさえ丸い目を更にまんまるにしている。マティ様もポカンとしていた。
でも、カミュは驚いている僕たちのほうがおかしいとでも言わんばかりの落ち着きっぷりのまま、にこやかに先を続ける。
「マティアス様もご存知かと思いますが、クックとポッポはミカさんが大好きでして、他の方と楽しそうにされているのを見ているうちにヤキモチを妬いてしまうことがあるのです。そうなると、ミカさんに甘えたくて騒ぎ始めるのですよ」
「そうなのか? 確かに、今しがたの魔鳥たちは随分と鳴き騒いでおったが……」
「王子様の相手ばかりでなく自分たちも構ってほしい、と駄々をこね始めたのです。……ね、クック、ポッポ。そうですよね?」
「ク、クゥ……」
「ポ、ポー……」
カミュの笑顔から圧力を感じたのか、彼の話に合わせるために、クックとポッポは僕の肩へと飛び移ってきて、頬擦りをしてくれた。なんて健気で可愛いんだろう。ふくふくな羽毛の感触が、とても気持ちいい。二羽を交互に指先で撫でると、愛鳥たちはキュルキュルと喉を鳴らした。
「本当に甘えん坊なのだな。魔鳥とは誇り高く、時には気難しい生き物だと思っていたが、彼らはなんとも人懐っこい」
「ミカさんが愛情を注がれている賜物でしょう。……マティアス様、いかがでしょう?ミカさんに甘やかしてもらう時間を、クックとポッポに少し与えてあげるというのは」
「うぅむ……、だが、しかし……」
マティ様は、僕のほうをチラチラと見ながら返事を渋る。優しい王子様はおそらく、僕を取り残したままこの場を去ってよいものかと悩んでいるのだろう。
そんなマティ様に対し、少し身を屈めたカミュが「失礼いたします」と一言断ってから、何か内緒話を囁きかけた。すると、みるみるうちに王子様のアイスブルーの瞳が煌めき始める。
「なんと……! た、確かに、それは何としても見ておきたい……!」
「そうでしょう? マティアス様のご意見も取り入れさせていただきたいのです」
ああ、たぶん、秋の感謝祭へ向けてカミュが製作中だという僕の衣装について話したのかな? マティ様はかなり興味を惹かれている様子だ。
「見に行きたいが、ミカを一人残しておくだなどと……」
「よく分かりませんが、僕は一人じゃないですよ。クックとポッポが一緒にいますし」
「クッ!」
「ポッ!」
マティ様には申し訳ないけれど、すっとぼけてカミュの援護をする。クックとポッポも上手い具合に乗っかってきて、任せておけとばかりにドヤ顔を披露してくれた。
「この場を離れるのもそんなに長時間ではないですし、私の転移魔法でマティアス様をお連れしたら更に時間を短縮できます。そもそも、ここは魔王の城の敷地内です。ジル様も、ミカさんの安全に関しては常に目を光らせておりますから」
「うむ、そうだな……、魔鳥たちもミカに甘えたがっているようだし、互いに利点はあるか。少しなら、この場を離れてもよかろう」
カミュが優しい声音で巧みに誘い込むと、マティ様はすっかりその気になったようだ。──そういえば、カミュの種族「魔の者」は、人間を誘惑して操るのが得意なんだっけ。カミュは勿論、悪事に誘ったりしないけれど、こういうときに、彼の生まれもっての才能が垣間見える気がした。悪い意味ではなく、良い意味で。
「ミカさん、少しお待ちいただいても大丈夫ですか? 危険な気配があれば、すぐに参上いたしますので」
「大丈夫だよ。マティ様も、カミュとゆっくり楽しんできてくださいね」
「すまない、ミカ。すぐに戻るからな」
「お気遣いありがとうございます。でも、本当に大丈夫ですよ」
どこかウキウキしているマティ様の手を取りながら、カミュが僕に向かってこっそりとウインクしてくる。少し緊張している僕の様子に気が付いて、励ましてくれたのかもしれない。頷きを返すと、すぐに二人の姿が消えた。転移魔法で移動していったのだろう。
──とりあえず、これで当初の予定通りの布陣になったかな。予定とは違う形とはいえ、ジルと賢者、カミュと王子、僕と来訪者という組み合わせでの対峙となる。
「クック、ポッポ。話を合わせてくれて、ありがとう。ふたりともいい子だね」
「クッ!」
「ポッ!」
彼らは鳥だから本当は「二羽」だけど、語り掛けるときは、つい「ふたり」と言ってしまう。ご機嫌なクックとポッポは、可愛らしく胸を張った。
「さて。君たちが騒がないってことは、お客様──もといお子様は、危険な子じゃないってことだよね。ここで待っていれば会えるのかな?」
僕の質問にクックとポッポが首をカクカク振って答えてくれたところで、荷馬車の影になっている辺りから小さな足音が聞こえてきた。
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