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【第9話】父と息子と豚汁と
【9-23】
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おやつを食べた後、アマネくんにはクックとポッポにおやつをあげてもらって、僕はその間に食材の準備を始めた。マティ様が運んで来てくれた物資は、いつの間にか調理場に積まれている。カミュが魔法で転送してくれたのかな。
「ミカー、クックとポッポが食べ終わるまで皿持ってたほうがいいのかー?」
「ううん、窓辺に置いてくれたら、その子たちはちゃんと自分で食べるから大丈夫だよ」
「つっついて皿落としたりしない? へーき?」
「大丈夫。その子たちは賢いから、お皿を落とさないように上手に食べられるよ」
僕の言葉を聞いて安心したのか、アマネくんが窓辺の定位置におやつの皿を置くと、クックとポッポは窓枠に立って器用に啄み始めた。自家製のドライフルーツと木の実を砕いて混ぜたものが今日の彼らのおやつなんだけど、気に入ってくれたのか、愛鳥たちは食べる合間にキュルキュルと喉を鳴らしている。
「ほんとだ。上手に食ってる」
「そうでしょ? どのくらいつついたらお皿が落ちちゃうとか、そういうのがよく分かっているんだよ」
「頭いいんだなー! ……あっ、オレも手伝うよ」
「ありがとう。じゃあ……、この僕の隣の箱の上に乗れるかな? これに乗ったら、洗い場に手が届くようになると思うんだけど」
「うん! 乗るっ」
アマネくんは元気よく駆け寄ってきて、木箱によじ登った。そして、洗い場の中にある籠に詰められている食材を見て、大きな金眼を瞬かせる。
「いろんな種類があるー」
「そうでしょ? 僕は隣で先にお肉を切ったりお魚の下処理をしたりするから、アマネくんはこの野菜の皮を洗ってくれるかな? 水はここに汲んであるし、足りなかったら追加するからね」
「わかった。まかせろ!」
「ありがとう。ゆっくりで大丈夫だからね」
アマネくんが小さな手で一生懸命に野菜を洗ってくれているのを見守りながら、僕も自分の手元の食材を処理し始める。カミュが来たらすぐに火を使う工程にスムーズに移れるように、しっかりと下準備しておきたい。
アマネくんは、野菜の汚れを丁寧に取って洗ってくれている。思っていたよりも手際がよくて、やり慣れているのかなと感じた。
「上手だね、アマネくん。家でもよくお手伝いしてるの?」
「まーな。母さんが泣いて調子が悪いと、なかなか料理できないから。野菜を洗っておくと、泣き終わった母さんがすぐにごはんを作ってくれるからさ、そうしてんの」
「そっかぁ。アマネくんは優しいね」
アマネくんの場合、僕が小さい頃とは違って、それなりにきちんと面倒はみてもらえているみたいだ。アマネくんのお母さんは、問題を抱えていないわけじゃないけれども、息子の世話をしようとしているんだろうなというのは何となく伝わってくる。
アマネくんは小柄だけど、栄養不足という感じはしないし、衣服がちょっと傷んでいるのは虐待とかではなく家の経済事情によるものなのではないかと思う。変な言い方かもしれないけれども、ちょっと安心していたりする。この子が歩んでいく道は、大変だとは思うけど、僕より暗いものじゃないはずだ。
「アマネくんは普段、どういうごはんを食べているのかな? お肉とお魚だったらどっちのほうが多い、とかある?」
「うーん……、魚は毎日食ってる。肉はあんまり。オレだけじゃなくて、周りの家もそんな感じだと思う。野菜と果物はいっぱい食ってるよ」
「そっか。アマネくんは湖の側に住んでるんだもんね。美味しいお魚がたくさん食べられそう」
「うん、美味いよー! 母さんがでっかい魚を捌いてさ、燻製を作ってくれるんだけど、オレはそれが一番好き!」
「魚の燻製かぁ! 美味しそうだね」
にこにこと話してくれるアマネくんを見ていると、微笑ましいと同時に、こちらが元気を貰える気がする。食材を触っているから頭を撫でることが出来ないのが、ちょっとはがゆい。
気持ちが和んだところで、不意にバサッと大きな羽音が響いた。僕とアマネくんが見上げた先には、黒い蝙蝠羽を広げて宙に浮いているカミュがいる。転移魔法で慌てて移動してきたと思われる彼は、僕たちを見下ろしてほっとした顔をした。
「ああ、よかった。まだお料理はさほど進んでいらっしゃいませんね? 私は間に合いましたか?」
「うん、大丈夫。まだ火を使う作業まではいってないよ。お疲れ様、カミュ。そっちは大丈夫だった?」
「ええ、まぁ……、なかなかの修羅場でしたが、私は強引に抜けて参りました。キリがありませんからね。──おや、アマネがお手伝いをしてくれていたのですね」
ふわりと舞い降りたカミュは、アマネくんの側に歩み寄って、水色の頭を優しく撫でる。カミュの顔に見とれていたアマネくんは、ちょっと恥ずかしそうにはにかんでいた。
「アマネ。続きは私がやりましょう。貴方はあちらで、クックとポッポの遊び相手をしてもらえますか? お腹いっぱいになったからか、遊んでほしそうにこちらを見ていますので」
「クッ!」
「ポッ!」
クックとポッポはカミュの気遣いの意図を汲んだのか、空気を読んで、アマネくんを誘うように可愛らしく鳴き声を上げる。こちらをチラリと見上げてくるアマネくんに、僕も笑いかけた。
「野菜を洗うのを手伝ってくれて、ありがとう。今度は、あの子たちと遊んでもらえるかな?」
「うんっ! まかせろ!」
手近な布巾で手を拭いて、アマネくんは元気よく魔鳥たちの元へ駆け寄っていく。それを見送りながら、今度はカミュが僕の隣に並び立ち、優しく目を細めた。
「ミカー、クックとポッポが食べ終わるまで皿持ってたほうがいいのかー?」
「ううん、窓辺に置いてくれたら、その子たちはちゃんと自分で食べるから大丈夫だよ」
「つっついて皿落としたりしない? へーき?」
「大丈夫。その子たちは賢いから、お皿を落とさないように上手に食べられるよ」
僕の言葉を聞いて安心したのか、アマネくんが窓辺の定位置におやつの皿を置くと、クックとポッポは窓枠に立って器用に啄み始めた。自家製のドライフルーツと木の実を砕いて混ぜたものが今日の彼らのおやつなんだけど、気に入ってくれたのか、愛鳥たちは食べる合間にキュルキュルと喉を鳴らしている。
「ほんとだ。上手に食ってる」
「そうでしょ? どのくらいつついたらお皿が落ちちゃうとか、そういうのがよく分かっているんだよ」
「頭いいんだなー! ……あっ、オレも手伝うよ」
「ありがとう。じゃあ……、この僕の隣の箱の上に乗れるかな? これに乗ったら、洗い場に手が届くようになると思うんだけど」
「うん! 乗るっ」
アマネくんは元気よく駆け寄ってきて、木箱によじ登った。そして、洗い場の中にある籠に詰められている食材を見て、大きな金眼を瞬かせる。
「いろんな種類があるー」
「そうでしょ? 僕は隣で先にお肉を切ったりお魚の下処理をしたりするから、アマネくんはこの野菜の皮を洗ってくれるかな? 水はここに汲んであるし、足りなかったら追加するからね」
「わかった。まかせろ!」
「ありがとう。ゆっくりで大丈夫だからね」
アマネくんが小さな手で一生懸命に野菜を洗ってくれているのを見守りながら、僕も自分の手元の食材を処理し始める。カミュが来たらすぐに火を使う工程にスムーズに移れるように、しっかりと下準備しておきたい。
アマネくんは、野菜の汚れを丁寧に取って洗ってくれている。思っていたよりも手際がよくて、やり慣れているのかなと感じた。
「上手だね、アマネくん。家でもよくお手伝いしてるの?」
「まーな。母さんが泣いて調子が悪いと、なかなか料理できないから。野菜を洗っておくと、泣き終わった母さんがすぐにごはんを作ってくれるからさ、そうしてんの」
「そっかぁ。アマネくんは優しいね」
アマネくんの場合、僕が小さい頃とは違って、それなりにきちんと面倒はみてもらえているみたいだ。アマネくんのお母さんは、問題を抱えていないわけじゃないけれども、息子の世話をしようとしているんだろうなというのは何となく伝わってくる。
アマネくんは小柄だけど、栄養不足という感じはしないし、衣服がちょっと傷んでいるのは虐待とかではなく家の経済事情によるものなのではないかと思う。変な言い方かもしれないけれども、ちょっと安心していたりする。この子が歩んでいく道は、大変だとは思うけど、僕より暗いものじゃないはずだ。
「アマネくんは普段、どういうごはんを食べているのかな? お肉とお魚だったらどっちのほうが多い、とかある?」
「うーん……、魚は毎日食ってる。肉はあんまり。オレだけじゃなくて、周りの家もそんな感じだと思う。野菜と果物はいっぱい食ってるよ」
「そっか。アマネくんは湖の側に住んでるんだもんね。美味しいお魚がたくさん食べられそう」
「うん、美味いよー! 母さんがでっかい魚を捌いてさ、燻製を作ってくれるんだけど、オレはそれが一番好き!」
「魚の燻製かぁ! 美味しそうだね」
にこにこと話してくれるアマネくんを見ていると、微笑ましいと同時に、こちらが元気を貰える気がする。食材を触っているから頭を撫でることが出来ないのが、ちょっとはがゆい。
気持ちが和んだところで、不意にバサッと大きな羽音が響いた。僕とアマネくんが見上げた先には、黒い蝙蝠羽を広げて宙に浮いているカミュがいる。転移魔法で慌てて移動してきたと思われる彼は、僕たちを見下ろしてほっとした顔をした。
「ああ、よかった。まだお料理はさほど進んでいらっしゃいませんね? 私は間に合いましたか?」
「うん、大丈夫。まだ火を使う作業まではいってないよ。お疲れ様、カミュ。そっちは大丈夫だった?」
「ええ、まぁ……、なかなかの修羅場でしたが、私は強引に抜けて参りました。キリがありませんからね。──おや、アマネがお手伝いをしてくれていたのですね」
ふわりと舞い降りたカミュは、アマネくんの側に歩み寄って、水色の頭を優しく撫でる。カミュの顔に見とれていたアマネくんは、ちょっと恥ずかしそうにはにかんでいた。
「アマネ。続きは私がやりましょう。貴方はあちらで、クックとポッポの遊び相手をしてもらえますか? お腹いっぱいになったからか、遊んでほしそうにこちらを見ていますので」
「クッ!」
「ポッ!」
クックとポッポはカミュの気遣いの意図を汲んだのか、空気を読んで、アマネくんを誘うように可愛らしく鳴き声を上げる。こちらをチラリと見上げてくるアマネくんに、僕も笑いかけた。
「野菜を洗うのを手伝ってくれて、ありがとう。今度は、あの子たちと遊んでもらえるかな?」
「うんっ! まかせろ!」
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