魔王と僕≪しもべ≫のしあわせごはん

羽鳥くらら

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【第10話】聖者も交わるカボチャパーティー

【10-10】

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「まったく、何をしているんですか、貴方たちは。ミカさんを困らせてはいけませんよ」
「カミュ……!」

 背後から聞こえた声がいつも以上に頼もしく思えて振り向くと、カミュは僕を見下ろして、安心させるように微笑んでくれた。

「困った同胞たちばかりで申し訳ありません、ミカさん」
「いや、そんなことは……、で、でも、この人が急に土下座してきたからビックリしちゃって……」
「ドゲザ? というのはよく分かりませんが……、とにかく、セレーナ。いい加減にしなさい」
「ひいいい! 申し訳ありませんんんん! アタクシなんぞが魔王閣下の下僕様を困らせるなんてえええ! あってはならないことでしたあああ!」

 カミュが声を掛けると、セレーナさんはますます縮こまってしまう。土下座の体勢が悪化してしまった。
 美しい赤い悪魔は溜息をつき、身を屈めて片膝をついて、紫の悪魔の肩をポンポンと叩く。緑の悪魔と僕は揃って固唾を飲んで、その様子を見守った。

「下僕様という言い方は、蔑んでいるのか敬っているのか不明ですし、良い言葉ではないですね。この方は、」
「申し訳ありませんんんん!」
「無駄に謝らなくてよろしい。ですから、この方は、」
「ひっ……、申し訳ありませんカマルティユ兄様あああ! 無駄に謝らないのでお許しくださいごめんなさいいい!」
「……」

 途方に暮れたように、カミュは再び深い溜息を零す。横で聞いているだけでも、なかなかにツッコミどころが多くて大変そうだなぁと感じた。横目でノヴァユエを見てみると、なんとも居心地悪そうにしている。

「セレーナ。まずは黙って私の話を聞きなさい。私が許可するまで、一言も話さないように。言いつけを破ったら、ノヴァユエに罰を与えます」
「えーっ!? なんでボク!? カマルティユ先輩ってば自由すぎっ★」

 カミュの冷ややかな一言を受けて、ノヴァユエは冗談混じりのヘラヘラした顔で笑ったけれど、セレーナさんは顔を真っ青にして必死に何度も首を縦に振った。
 たぶん彼女は、自身に罰を与えられるよりも、親しい存在が巻き添えになるほうが堪えるのだろう。カミュ自身はセレーナさんと直接的な関わりは殆ど無かったと言っていたけれど、そうは見えないやり取りだ。魔の者同士の関係というか関わり方というか、そういうのはちょっと独特に感じる。

 ──というか、セレーナさん、瞳は橙色なんだなぁ。カミュもノヴァユエも、髪と目の色が同系統だから、彼女もそうなのかと思っていたけれど、よく見ると温かみのあるオレンジ色だった。色の組み合わせ的に、またなんとなくハロウィンを思い浮かべてしまう。

「いいですか、セレーナ。貴方には尋ねたいこと、確認したいことがあります。ノヴァユエを連れているということは、貴方にも心当たりはあるでしょう?」

 セレーナさんは口を両手で押さえたまま、こくこくと頷く。それが面白く感じたのか、窓辺で並んでいるクックとポッポも真似をしてカクカクと頷いていた。

「我々が話をするにあたり、この城で場所をお借りしなければなりません。ご迷惑を掛けるのですから、きちんとご挨拶をしなくてはいけませんね。一方的に振舞って困惑させるなど、もってのほかです。分かりますね?」

 セレーナさんがコクコク。クックとポッポがカクカク。

「そもそも、何故こんな調理場の窓から侵入するような真似をしたのか……。きちんと玄関から訪問するべきでしょう」
「あっ、それはボクの考えが甘かったからー★ カマルティユ先輩に見つかる前にさぁ、ミカの意見を聞いておきたかったんだもん☆ 結局はボクの気配隠しじゃ無理だったんだけどー★」
「当たり前ですよ。夏のあのときとは違って、今の私は万全の状態なのですから。ノヴァユエ程度の気配隠しなど、お見通しです」

 甘えた声のノヴァユエの言葉をカミュが一蹴したところで、僕の真後ろに温かな気配が現れ、そっと背を撫でられた。その触れ方で、誰が転移してきたのかすぐに分かる。

「ジル」

 振り返りながら名前を呼ぶと、予想通りそこに立っていた魔王は穏やかな眼差しを返してくれた。

「急にカミュがいなくなったと思ったら、妙に騒がしいようだから様子を見に来たんだが……、やたらと悪魔率が高いな」
「ああ、ジル様、お騒がせして申し訳ありません。仕事も途中でしたのに……」

 ジルの登場に気付いて、カミュがセリーナさんの傍を離れてこちらへ寄って来る。紫悪魔の彼女は、口元を手で押さえたままジルを見て紅くなったり蒼くなったりしていた。

「いや、俺のことはどうでもいい。作業も、別に今日でなくとも構わないことだからな。何か気になることがあれば、咄嗟にミカの元へ駆けつけてくれたほうが、俺としても有難い。──それはいいんだが、そこの魔の者の女、今にも気絶しそうだが大丈夫なのか?」

 そう言ってジルがセレーナさんを指差したのとほぼ同時に、紫悪魔は意識を飛ばしてしまったのだった。
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