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【第10話】聖者も交わるカボチャパーティー
【10-11】
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◇
「申し訳ありませんんんん……ご迷惑をお掛けしましてえええ」
倒れた後、ひとまず調理場の隣にある食堂に置かれている長椅子へと運ばれて寝かされたセレーナさんは、ほどなくして目を覚まし、ションボリしながら上半身を起こして謝ってきた。
僕が首を振る横で、ジルが静かに言う。
「別に迷惑では無いが……、カミュ、こいつは誰だ?」
「彼女はセレーナという名です」
「セレーナ? ……ああ、オピテルが探していたのがこいつか?」
オピテルさんの名前を聞くなり、セレーナさんは細い肩をわずかに震わせた。そして、不安そうな橙色の瞳で、おずおずとカミュを見上げる。
「もしかして、カマルティユ兄様はもう、オピテル様をご存知だったりしますかぁぁぁ……?」
「ええ。昨日、こちらを尋ねて来られたので。それよりも、セレーナ。まずはきちんとご挨拶をしなさい」
「ううう……、ううう……」
カミュに促されても、セレーナさんは何故か萎縮して──いや、というよりも困ったように唸り声のようなものを繰り返し発していた。
オピテルさんからの話を踏まえて考えれば、彼女は彼から家族になろうと言われて動揺して逃げ出したんだっけ。逃げた後にノヴァユエに会いに行って相談した結果、カミュにも話したほうがいいと結論づけて、ここにやって来たのかもしれない。
「セレーナ、いい加減にしなさい。私が大切に想っている方々への無礼は、例え同胞といえども許しませんよ」
「カミュ、待って。怒らないで」
カミュが段々と苛立ちを募らせているのを感じ取って、僕は慌てて彼の袖を引く。
常日頃から慎ましやかで控えめな性格のカミュは、普段は魔の者の特性を封じ込めている反動で、怒りをトリガーにして正気を失ってしまうことがあるんだ。その結果、後でカミュが苦しい思いをすることになると、僕は痛いほど知っている。あんな風に悲しんで落ち込む彼の姿は、もう二度と見たくない。
僕が何を心配しているのか察したのか、カミュは優しく目を細めた。
「大丈夫ですよ、ミカさん。我を忘れて暴れたりなどいたしません。ただ、年長者として、同胞の無礼を見逃せないだけです」
「うん、うん、カミュの気持ちも分かるけど、でもさ、たぶん、セレーナさんは今、精神的にいっぱいいっぱいなんじゃないかな。失礼な態度を取りたいわけじゃなくて、気持ちと言葉が溢れそうで、どう言いたいのか分からないんじゃないかなって感じるよ」
「ううう……! ううう……!」
そうだと言わんばかりに、セレーナさんが涙目で何度もコクコクと頷く。離れた場所で並んで座っているクックとポッポも、やっぱり真似をしてカクカクと首を振っていた。
「気持ちが落ち着けば、セレーナさんも順番に話してくれるんじゃないかと思うんだよね。だから、とりあえずお茶でも飲んで一息つかない?」
僕の提案にジルがすぐ頷いてくれて、続いてカミュも何か言いたげに唇を開いたけれど、それを遮るようにノヴァユエが元気よく挙手して大声を出す。
「わー! すげー! ミカってばやっさしー! すっげぇいい提案じゃーん! ボクちん賛成! 大賛成ー!」
「う、うるさいですよ、ノヴァユエ、貴方は、」
「ボクがミカの手伝いをするからー! カマルティユ先輩は魔王とセレーナと一緒に待っててー!」
「……は?」
「ボクがミカの手伝いをするからー! カマルティユ先輩は魔王とセレーナと一緒に待っててー!」
眉を顰める美しい悪魔に睨まれても、眼鏡の悪魔は全く怯まず、めげずに同じ言葉を繰り返した。だからといってカミュもすぐに折れるわけではなく、溜息と共に窘め始める。
「ノヴァユエには、お茶の淹れ方なんて分からないでしょう?いえ、私も把握しているわけではないですし、ミカさんはいつも丁寧に指示を出してくださいますが。でも、貴方には料理の火加減なんて分からないでしょう。死体を焼いたり街を滅ぼしたりするように炎を扱うわけではないのですよ」
「えーっ! ボク、生きた小鳥を上手にこんがり丸焼きにするの上手いんだよー!? 火加減なんて大丈夫だよー!」
……なんか、恐ろしい言葉が聞こえたような?
いや、それはともかくとして、ノヴァユエはさっき、カミュに話す前に僕に相談したいことがあるというような言っていたよね。だから、お茶の用意を手伝うついでに、その話をしたいんじゃないかな?
初対面のときとは違って、今のノヴァユエなら、僕と二人きりになっても襲ってきたりはしないだろうし、味方してあげたほうがいいかもしれない。そう考えた僕は、カミュへ言葉を掛けた。
「カミュ、大丈夫だよ。あったかいお茶じゃなくて、作り置きしてある冷たいマッ茶を出すから。大した手間じゃないと思うし、せっかく申し出てくれてるノヴァユエの手を借りたいんだけど……、ダメかな?」
「……ミカさんからそんな風にお願いされてしまったら、駄目だなんて言えるはずないじゃないですか」
柔らかな苦笑を浮かべて許可してくれたカミュは、くれぐれも良い子にするようにとノヴァユエに何度も繰り返し念押しし、その度に緑の悪魔は「はぁい★」と良い返事をするのだった。
「申し訳ありませんんんん……ご迷惑をお掛けしましてえええ」
倒れた後、ひとまず調理場の隣にある食堂に置かれている長椅子へと運ばれて寝かされたセレーナさんは、ほどなくして目を覚まし、ションボリしながら上半身を起こして謝ってきた。
僕が首を振る横で、ジルが静かに言う。
「別に迷惑では無いが……、カミュ、こいつは誰だ?」
「彼女はセレーナという名です」
「セレーナ? ……ああ、オピテルが探していたのがこいつか?」
オピテルさんの名前を聞くなり、セレーナさんは細い肩をわずかに震わせた。そして、不安そうな橙色の瞳で、おずおずとカミュを見上げる。
「もしかして、カマルティユ兄様はもう、オピテル様をご存知だったりしますかぁぁぁ……?」
「ええ。昨日、こちらを尋ねて来られたので。それよりも、セレーナ。まずはきちんとご挨拶をしなさい」
「ううう……、ううう……」
カミュに促されても、セレーナさんは何故か萎縮して──いや、というよりも困ったように唸り声のようなものを繰り返し発していた。
オピテルさんからの話を踏まえて考えれば、彼女は彼から家族になろうと言われて動揺して逃げ出したんだっけ。逃げた後にノヴァユエに会いに行って相談した結果、カミュにも話したほうがいいと結論づけて、ここにやって来たのかもしれない。
「セレーナ、いい加減にしなさい。私が大切に想っている方々への無礼は、例え同胞といえども許しませんよ」
「カミュ、待って。怒らないで」
カミュが段々と苛立ちを募らせているのを感じ取って、僕は慌てて彼の袖を引く。
常日頃から慎ましやかで控えめな性格のカミュは、普段は魔の者の特性を封じ込めている反動で、怒りをトリガーにして正気を失ってしまうことがあるんだ。その結果、後でカミュが苦しい思いをすることになると、僕は痛いほど知っている。あんな風に悲しんで落ち込む彼の姿は、もう二度と見たくない。
僕が何を心配しているのか察したのか、カミュは優しく目を細めた。
「大丈夫ですよ、ミカさん。我を忘れて暴れたりなどいたしません。ただ、年長者として、同胞の無礼を見逃せないだけです」
「うん、うん、カミュの気持ちも分かるけど、でもさ、たぶん、セレーナさんは今、精神的にいっぱいいっぱいなんじゃないかな。失礼な態度を取りたいわけじゃなくて、気持ちと言葉が溢れそうで、どう言いたいのか分からないんじゃないかなって感じるよ」
「ううう……! ううう……!」
そうだと言わんばかりに、セレーナさんが涙目で何度もコクコクと頷く。離れた場所で並んで座っているクックとポッポも、やっぱり真似をしてカクカクと首を振っていた。
「気持ちが落ち着けば、セレーナさんも順番に話してくれるんじゃないかと思うんだよね。だから、とりあえずお茶でも飲んで一息つかない?」
僕の提案にジルがすぐ頷いてくれて、続いてカミュも何か言いたげに唇を開いたけれど、それを遮るようにノヴァユエが元気よく挙手して大声を出す。
「わー! すげー! ミカってばやっさしー! すっげぇいい提案じゃーん! ボクちん賛成! 大賛成ー!」
「う、うるさいですよ、ノヴァユエ、貴方は、」
「ボクがミカの手伝いをするからー! カマルティユ先輩は魔王とセレーナと一緒に待っててー!」
「……は?」
「ボクがミカの手伝いをするからー! カマルティユ先輩は魔王とセレーナと一緒に待っててー!」
眉を顰める美しい悪魔に睨まれても、眼鏡の悪魔は全く怯まず、めげずに同じ言葉を繰り返した。だからといってカミュもすぐに折れるわけではなく、溜息と共に窘め始める。
「ノヴァユエには、お茶の淹れ方なんて分からないでしょう?いえ、私も把握しているわけではないですし、ミカさんはいつも丁寧に指示を出してくださいますが。でも、貴方には料理の火加減なんて分からないでしょう。死体を焼いたり街を滅ぼしたりするように炎を扱うわけではないのですよ」
「えーっ! ボク、生きた小鳥を上手にこんがり丸焼きにするの上手いんだよー!? 火加減なんて大丈夫だよー!」
……なんか、恐ろしい言葉が聞こえたような?
いや、それはともかくとして、ノヴァユエはさっき、カミュに話す前に僕に相談したいことがあるというような言っていたよね。だから、お茶の用意を手伝うついでに、その話をしたいんじゃないかな?
初対面のときとは違って、今のノヴァユエなら、僕と二人きりになっても襲ってきたりはしないだろうし、味方してあげたほうがいいかもしれない。そう考えた僕は、カミュへ言葉を掛けた。
「カミュ、大丈夫だよ。あったかいお茶じゃなくて、作り置きしてある冷たいマッ茶を出すから。大した手間じゃないと思うし、せっかく申し出てくれてるノヴァユエの手を借りたいんだけど……、ダメかな?」
「……ミカさんからそんな風にお願いされてしまったら、駄目だなんて言えるはずないじゃないですか」
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