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【第10話】聖者も交わるカボチャパーティー
【10-12】
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心配そうなカミュの視線を振り切り、ノヴァユエを連れて調理場へ向かうと、彼は張り切った面持ちで眼鏡をクイッと押し上げた。
「さぁ★ ボクちんは何を手伝えばいいのかなッ!? なんでも言ってね~☆」
「うん、ありがとう。でも、難しいことは何もしないよ。ノヴァユエには、そうだなぁ……、このお菓子を、いい感じにこっちのお皿に載せていってもらえるかな? 全部使っていいから、五つのお皿に載っている量が均等になるようにね」
「はぁい★」
「まずは一緒に手を洗おうか」
「あー、人間ってそーゆーの気にするんだっけ★ めんどくせぇけどいいよー☆」
並んで手を洗った後、作り置きしてあったクッキーとフロランタン、塩サブレとマドレーヌを詰めてある大きな籠と、使い勝手の良い手頃な大きさの皿を五枚渡すと、ノヴァユエはいそいそと作業を始める。
前に一緒にピザを作ったときにも思ったけれども、彼は軽薄なようでいて、けっこう繊細な手つきで食べ物に触れている。人間の食べ物なんて、って馬鹿にしていたときからそうだったから、なんだかんだ優しいというか、思いやりのある性格なんだと思う。だからこそ、カミュも彼のことを目に掛けていたんじゃないかな。
僕が知っている魔の者の関係がなんだか微笑ましく感じて、つい口元が緩んでしまう。不必要ににやついてしまいそうな己を制して、僕は僕でお茶の用意をしようとすると、ノヴァユエが声を掛けてきた。
「なー、ミカ―! どーもありがとねー★」
「ん? 何が?」
「ボクがミカと話したがってるってゆーのを察してさー、カマルティユ先輩を説得してくれたんでしょー? 助かっちゃった★ ありがとっ☆」
「どういたしまして。余計なお世話にならなくて良かった。……僕の意見を聞きたい、みたいなことを言っていたよね?」
「うん、そーなんだよねぇ……」
ノヴァユエはそこで一度言葉を切って、何かを思い悩み始める。少し白目を剥いた感じというか、面白いというか、こういう剽軽な表情なのは、思考を巡らせているときの彼のクセのようなものなのかもしれない。黙って様子を見守っていると、程なくしてノヴァユエは再びお菓子の盛り付けをしながら口を開いた。
「あのさー、オピテルとかいう聖なる者が昨日ここに来たってのはほんとー?」
「うん、本当だよ。偶然みたいだけど、セレーナさんを探して訪ねてきたみたい。この星──ディデーレにセレーナさんが逃げ込んだっていうのはオピテルさんも分かっていたみたいで、魔の者の情報を得るには同族からが一番じゃないかって思って、魔王の城を順番に訪ねようとしていたみたいだよ」
「うげぇー! ってことはさぁ、そのうちボクんとこにも来ちゃうかもしれねぇってことじゃん! うわー! めんどくせぇぇぇぇ」
その言葉を聞いて、ハッとする。そういえば、ノヴァユエもワンダネロンド王国とかいうところの魔王に仕えている立場なんじゃなかったっけ。魔王の傍を離れてここに来ちゃってて大丈夫なのかな……?
「なぁに、ミカ? 変な顔してるじゃーん★」
「あ、えっと……、ノヴァユエはここに来てて大丈夫なの? 魔王の側から離れないほうがいいんでしょ? それに、ノヴァユエのところの魔王はまだ新人というか……、代替わりしたばっかりみたいだし……」
「あ、大丈夫大丈夫っ★ ウチにはさー、今、見習いみたいな悪魔がいんの☆ ちょっとしたことならソイツが対応してるしぃ、どーにもならないことならすぐ呼べって言ってあるしー★ その配属情報はお父様から届いてるはずだしー、だからカマルティユ先輩もボクがここにいても文句言わないんじゃね?」
確かに、ノヴァユエがここにいて問題があれば、真っ先にカミュが叱っているはずだ。新人魔王と見習い悪魔のコンビの間に漂う空気がどんな感じなのか気になるけど、まぁ、特級の魔の者たちが問題無いと判断しているからいいのかな。
「それはとりあえず一安心だから……、じゃあ、話を戻して。オピテルさんがここに来たことって、何か問題がある?」
「んー……、問題っつーかさぁ……、カマルティユ先輩、セレーナについて何か言ってた?」
「うーん……、カミュ自身はそんなにセレーナさんとは関わりが無かったって言ってたかな。ノヴァユエが可愛がっていたから、オピテルさんとの件を知ったら君が怒るんじゃないかって心配してたと思うよ」
「あー……、まぁ、ボクちんもイラついたけどさぁ……、セレーナのことを考えるとそれどころじゃないってゆーか。──カマルティユ先輩は、セレーナのことをお父様に告げ口したりしないとは思うけど、そのへんは大丈夫そお?」
「えっ? うん、そんなことは何も言っていなかったけど……」
カミュはたぶん、彼らが「父」と呼んでいる創造主を良く思っていない。だから、自ら進んで関わろうとはしないはずだ。セレーナさんについても、報告義務があるとは言ってなかったと思う。
そんなことを考えながら何度か頷くと、ノヴァユエは次の質問を投げ掛けてきた。
「とりあえずお父様の耳にはまだ入ってなさそうでよかったー。……セレーナの腹の中に聖なる者との子どもがいるなんて言えないもんなぁ。どんな罰が下されるか分かったもんじゃねーもん」
「さぁ★ ボクちんは何を手伝えばいいのかなッ!? なんでも言ってね~☆」
「うん、ありがとう。でも、難しいことは何もしないよ。ノヴァユエには、そうだなぁ……、このお菓子を、いい感じにこっちのお皿に載せていってもらえるかな? 全部使っていいから、五つのお皿に載っている量が均等になるようにね」
「はぁい★」
「まずは一緒に手を洗おうか」
「あー、人間ってそーゆーの気にするんだっけ★ めんどくせぇけどいいよー☆」
並んで手を洗った後、作り置きしてあったクッキーとフロランタン、塩サブレとマドレーヌを詰めてある大きな籠と、使い勝手の良い手頃な大きさの皿を五枚渡すと、ノヴァユエはいそいそと作業を始める。
前に一緒にピザを作ったときにも思ったけれども、彼は軽薄なようでいて、けっこう繊細な手つきで食べ物に触れている。人間の食べ物なんて、って馬鹿にしていたときからそうだったから、なんだかんだ優しいというか、思いやりのある性格なんだと思う。だからこそ、カミュも彼のことを目に掛けていたんじゃないかな。
僕が知っている魔の者の関係がなんだか微笑ましく感じて、つい口元が緩んでしまう。不必要ににやついてしまいそうな己を制して、僕は僕でお茶の用意をしようとすると、ノヴァユエが声を掛けてきた。
「なー、ミカ―! どーもありがとねー★」
「ん? 何が?」
「ボクがミカと話したがってるってゆーのを察してさー、カマルティユ先輩を説得してくれたんでしょー? 助かっちゃった★ ありがとっ☆」
「どういたしまして。余計なお世話にならなくて良かった。……僕の意見を聞きたい、みたいなことを言っていたよね?」
「うん、そーなんだよねぇ……」
ノヴァユエはそこで一度言葉を切って、何かを思い悩み始める。少し白目を剥いた感じというか、面白いというか、こういう剽軽な表情なのは、思考を巡らせているときの彼のクセのようなものなのかもしれない。黙って様子を見守っていると、程なくしてノヴァユエは再びお菓子の盛り付けをしながら口を開いた。
「あのさー、オピテルとかいう聖なる者が昨日ここに来たってのはほんとー?」
「うん、本当だよ。偶然みたいだけど、セレーナさんを探して訪ねてきたみたい。この星──ディデーレにセレーナさんが逃げ込んだっていうのはオピテルさんも分かっていたみたいで、魔の者の情報を得るには同族からが一番じゃないかって思って、魔王の城を順番に訪ねようとしていたみたいだよ」
「うげぇー! ってことはさぁ、そのうちボクんとこにも来ちゃうかもしれねぇってことじゃん! うわー! めんどくせぇぇぇぇ」
その言葉を聞いて、ハッとする。そういえば、ノヴァユエもワンダネロンド王国とかいうところの魔王に仕えている立場なんじゃなかったっけ。魔王の傍を離れてここに来ちゃってて大丈夫なのかな……?
「なぁに、ミカ? 変な顔してるじゃーん★」
「あ、えっと……、ノヴァユエはここに来てて大丈夫なの? 魔王の側から離れないほうがいいんでしょ? それに、ノヴァユエのところの魔王はまだ新人というか……、代替わりしたばっかりみたいだし……」
「あ、大丈夫大丈夫っ★ ウチにはさー、今、見習いみたいな悪魔がいんの☆ ちょっとしたことならソイツが対応してるしぃ、どーにもならないことならすぐ呼べって言ってあるしー★ その配属情報はお父様から届いてるはずだしー、だからカマルティユ先輩もボクがここにいても文句言わないんじゃね?」
確かに、ノヴァユエがここにいて問題があれば、真っ先にカミュが叱っているはずだ。新人魔王と見習い悪魔のコンビの間に漂う空気がどんな感じなのか気になるけど、まぁ、特級の魔の者たちが問題無いと判断しているからいいのかな。
「それはとりあえず一安心だから……、じゃあ、話を戻して。オピテルさんがここに来たことって、何か問題がある?」
「んー……、問題っつーかさぁ……、カマルティユ先輩、セレーナについて何か言ってた?」
「うーん……、カミュ自身はそんなにセレーナさんとは関わりが無かったって言ってたかな。ノヴァユエが可愛がっていたから、オピテルさんとの件を知ったら君が怒るんじゃないかって心配してたと思うよ」
「あー……、まぁ、ボクちんもイラついたけどさぁ……、セレーナのことを考えるとそれどころじゃないってゆーか。──カマルティユ先輩は、セレーナのことをお父様に告げ口したりしないとは思うけど、そのへんは大丈夫そお?」
「えっ? うん、そんなことは何も言っていなかったけど……」
カミュはたぶん、彼らが「父」と呼んでいる創造主を良く思っていない。だから、自ら進んで関わろうとはしないはずだ。セレーナさんについても、報告義務があるとは言ってなかったと思う。
そんなことを考えながら何度か頷くと、ノヴァユエは次の質問を投げ掛けてきた。
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