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【第10話】聖者も交わるカボチャパーティー
【10-21】
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◇
朝食の席にはジルは出て来ず、カミュが食事を届けに行った。心配だったけれど、あまり心配しないでほしいと言われてしまった以上、僕が気に病んでいると彼らに余計な気遣いをさせてしまうだろうから、あえて考えないように努めることにする。
余計なことを考えないようにしたいとき、料理というのはとても便利だ。便利という言い方も変かもしれないけれど、黙々と没頭できるし、手を動かしていると気が紛れる。
それに、今日はアシスタント的な存在として、ノヴァユエとセレーナさんがいてくれる。火を扱うのはカミュが適任ということで、ジルの様子を見に行っている彼が戻るまでの間に、加熱前の処理を進めることにした。
といっても、昨日のうちに大体の下拵えは済ませてしまったので、やることはそんなに多くない。クッキーの型抜きや、パイ生地の装飾など、簡単なものばかりだ。それでも、二人の悪魔は楽しそうに取り組んでくれた。
「ミカ様、これは何の形でしょうぅぅ?」
カミュに頼んで作ってもらった型でクッキー生地を抜いていたセレーナさんが、星形を指して首を傾げる。
「それは、星の形なんだけど……、そっか、この世界では星はこういう形で描かないもんね。カミュもビックリしてたっけ」
「ふぇぇぇ……! ミカ様がいらした世界では、これが星を示す形だったのですねぇぇぇ。可愛いかったり、美味しかったり、それぞれ違う世界ごとに色々とあるのですねぇぇぇ」
嬉しそうに言うセレーナさんに、僕も笑って同意した。
「本当にね。見たことがないものでも、馴染みのないものでも、可愛いとか格好いいとか心を動かされたり、美味しいって思ったり、そういうのってなんだか嬉しいよね」
「はひぃぃぃ! アタクシたち、種族も違いますのにぃぃぃ、こうしてお話しできて、一緒に同じものを楽しめるのって幸せですよねぇぇぇ」
「幸せだよねぇ」
「あー! ふたりで盛り上がっててずるーい! ボクだって、今、めちゃくちゃ楽しいんだからねー!」
「あっ、ノヴァユエ! パイ生地をくちゃくちゃにしちゃダメだよ」
わいわいと騒いでいると、心が塞ぎ込んでいる暇が無い。寝ていたセレーナさんは知らないだろうけど、ノヴァユエは今朝の出来事を知っているから、あえてはしゃいでくれている気がしてならない。「ミカに怒られちゃった★」と舌を出しながら、ノヴァユエは皺が寄っていたパイ生地を綺麗に伸ばしてくれた。
「うん、後はカミュを待って焼いたり蒸したりするだけかなー。ありがとう、ノヴァユエ、セレーナさん。助かったよ」
「いいえいいえぇぇ。アタクシもとっても楽しかったですぅぅぅ! 甘いのがいっぱい出来るのですかぁぁぁ?」
「そうだね。甘いのもいっぱいだし、それだけだと飽きると思うから、しょっぱいのもあるよ」
ガボン──というかカボチャづくしのお菓子祭りということで、クッキー、パイ、シフォンケーキ、ミニパン、マフィン、後は変わり種として和風の味付けをした焼き団子も用意している。
焼き団子は、小麦粉と潰したカボチャを練り合わせて寝かせたものを食べやすい大きさに切って焼いて、焦がし醤油風味のタレを掛けるものだ。中水上のおじさんがおやつとして作ってくれて、ミルク粥の次くらいに印象に残っているメニューだったりする。
「どれも美味しいと思うけど、ノヴァユエには刺激が足りないかな?」
「そんなことないー! もー、今のボクはミカが作ったもんなら何でも美味しく食うって知ってるでしょー? 他の人間の食いもんはいらねーけどー!」
ノヴァユエが地団太を踏んだところで、ふっと空気が揺れて、赤い悪魔が姿を現した。足をジタバタさせているノヴァユエを呆れた目で見た後、カミュは僕を見つめてきた。
「あ……、」
つい、言葉に詰まってしまった。おかえりと言うだけでいいはずなのに、ジルのことを尋ねたら駄目かなとか、逆に何も触れないのも不自然なのかなとか、余計なことを考えてしまって、口ごもってしまう。
そんな僕の思考を見抜いたのか、カミュは申し訳なさそうに苦笑した。
「すみません、ミカさん。私が気にしないでほしいと言ったがばかりに、悩ませてしまいましたね。……ジル様のご様子でしたら、もうだいぶ落ち着かれておりますよ。顔色もすっかり良くなられて、オピテル殿がいらっしゃる頃には姿を見せにいらっしゃると思いますよ」
「そっか、良かった。教えてくれてありがとう。……おかえり、カミュ」
「ただいま戻りました」
優しい顔で軽く頭を下げてから、カミュは調理台の上に載っている生地たちを眺める。
「あとはもう加熱するだけでしょうか? 綺麗に下拵えが出来ておりますね」
「うん、ノヴァユエとセレーナさんにたくさん手伝ってもらったから、早く終わったんだ」
「おやおや。それでは、私がお待たせしてしまっていたのですね。申し訳ありません。──では、早速、火を使ってまいりましょうか」
美しい悪魔が優雅に指を振ると、調理に必要な箇所へ次々と火が灯っていった。
朝食の席にはジルは出て来ず、カミュが食事を届けに行った。心配だったけれど、あまり心配しないでほしいと言われてしまった以上、僕が気に病んでいると彼らに余計な気遣いをさせてしまうだろうから、あえて考えないように努めることにする。
余計なことを考えないようにしたいとき、料理というのはとても便利だ。便利という言い方も変かもしれないけれど、黙々と没頭できるし、手を動かしていると気が紛れる。
それに、今日はアシスタント的な存在として、ノヴァユエとセレーナさんがいてくれる。火を扱うのはカミュが適任ということで、ジルの様子を見に行っている彼が戻るまでの間に、加熱前の処理を進めることにした。
といっても、昨日のうちに大体の下拵えは済ませてしまったので、やることはそんなに多くない。クッキーの型抜きや、パイ生地の装飾など、簡単なものばかりだ。それでも、二人の悪魔は楽しそうに取り組んでくれた。
「ミカ様、これは何の形でしょうぅぅ?」
カミュに頼んで作ってもらった型でクッキー生地を抜いていたセレーナさんが、星形を指して首を傾げる。
「それは、星の形なんだけど……、そっか、この世界では星はこういう形で描かないもんね。カミュもビックリしてたっけ」
「ふぇぇぇ……! ミカ様がいらした世界では、これが星を示す形だったのですねぇぇぇ。可愛いかったり、美味しかったり、それぞれ違う世界ごとに色々とあるのですねぇぇぇ」
嬉しそうに言うセレーナさんに、僕も笑って同意した。
「本当にね。見たことがないものでも、馴染みのないものでも、可愛いとか格好いいとか心を動かされたり、美味しいって思ったり、そういうのってなんだか嬉しいよね」
「はひぃぃぃ! アタクシたち、種族も違いますのにぃぃぃ、こうしてお話しできて、一緒に同じものを楽しめるのって幸せですよねぇぇぇ」
「幸せだよねぇ」
「あー! ふたりで盛り上がっててずるーい! ボクだって、今、めちゃくちゃ楽しいんだからねー!」
「あっ、ノヴァユエ! パイ生地をくちゃくちゃにしちゃダメだよ」
わいわいと騒いでいると、心が塞ぎ込んでいる暇が無い。寝ていたセレーナさんは知らないだろうけど、ノヴァユエは今朝の出来事を知っているから、あえてはしゃいでくれている気がしてならない。「ミカに怒られちゃった★」と舌を出しながら、ノヴァユエは皺が寄っていたパイ生地を綺麗に伸ばしてくれた。
「うん、後はカミュを待って焼いたり蒸したりするだけかなー。ありがとう、ノヴァユエ、セレーナさん。助かったよ」
「いいえいいえぇぇ。アタクシもとっても楽しかったですぅぅぅ! 甘いのがいっぱい出来るのですかぁぁぁ?」
「そうだね。甘いのもいっぱいだし、それだけだと飽きると思うから、しょっぱいのもあるよ」
ガボン──というかカボチャづくしのお菓子祭りということで、クッキー、パイ、シフォンケーキ、ミニパン、マフィン、後は変わり種として和風の味付けをした焼き団子も用意している。
焼き団子は、小麦粉と潰したカボチャを練り合わせて寝かせたものを食べやすい大きさに切って焼いて、焦がし醤油風味のタレを掛けるものだ。中水上のおじさんがおやつとして作ってくれて、ミルク粥の次くらいに印象に残っているメニューだったりする。
「どれも美味しいと思うけど、ノヴァユエには刺激が足りないかな?」
「そんなことないー! もー、今のボクはミカが作ったもんなら何でも美味しく食うって知ってるでしょー? 他の人間の食いもんはいらねーけどー!」
ノヴァユエが地団太を踏んだところで、ふっと空気が揺れて、赤い悪魔が姿を現した。足をジタバタさせているノヴァユエを呆れた目で見た後、カミュは僕を見つめてきた。
「あ……、」
つい、言葉に詰まってしまった。おかえりと言うだけでいいはずなのに、ジルのことを尋ねたら駄目かなとか、逆に何も触れないのも不自然なのかなとか、余計なことを考えてしまって、口ごもってしまう。
そんな僕の思考を見抜いたのか、カミュは申し訳なさそうに苦笑した。
「すみません、ミカさん。私が気にしないでほしいと言ったがばかりに、悩ませてしまいましたね。……ジル様のご様子でしたら、もうだいぶ落ち着かれておりますよ。顔色もすっかり良くなられて、オピテル殿がいらっしゃる頃には姿を見せにいらっしゃると思いますよ」
「そっか、良かった。教えてくれてありがとう。……おかえり、カミュ」
「ただいま戻りました」
優しい顔で軽く頭を下げてから、カミュは調理台の上に載っている生地たちを眺める。
「あとはもう加熱するだけでしょうか? 綺麗に下拵えが出来ておりますね」
「うん、ノヴァユエとセレーナさんにたくさん手伝ってもらったから、早く終わったんだ」
「おやおや。それでは、私がお待たせしてしまっていたのですね。申し訳ありません。──では、早速、火を使ってまいりましょうか」
美しい悪魔が優雅に指を振ると、調理に必要な箇所へ次々と火が灯っていった。
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