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【第11話】秋と冬の狭間で屋台料理を君たちと
【11-7】
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「ジル様の当初の計画では、王都の大正門に程近い場所までミカさんを送る予定でしたよね。感謝祭用の黒い外衣を纏えば、ジル様が魔王であると分かりづらいから、と」
「ああ、そうだな。俺は角だけ隠せれば、普通の人間と大差ないから、王都の近くまで行っても問題無いと考えていた」
王都の出入口としていくつか門があるようだけれど、角を隠したジルであれば人混みにも上手く紛れられるだろうからということで、マティ様が楽に迎えに来てもらえるように大正門の近くの森で落ち合おう──という話になっていた。
「それに関してですが、もう少し王都から離れた……、もしくは、感謝祭の主会場からは遠ざかるかもしれませんが裏手のほうから落ち合えないでしょうか。私の羽も祭の衣装に隠そうと思えば隠せますが、人目が多かったり照明が眩しい場所ですと誤魔化しが効かないかもしれません」
「……つまり、マティアスの負担を増やさざるをえないというわけか」
「ええ。平たく言えば、そうなります。……ですが、今回のミカさんはあくまでも『マティアス様が逢瀬を心待ちにしている相手』という設定の存在です。恋仲だと誤解させるのも吝かではないのなら、マティアス様がはるばるお迎えに参上したところで不自然ではないでしょう」
確かに、流石に僕一人で王都へ向かうのは色々な意味で無理がある。暴走化を考慮してジルに城に残ってもらうのであれば、必然的にカミュに送迎を頼むことになるんだ。その場合、彼が「悪魔」だと分からないようにしなければならない。マティ様の協力を仰ぐことは必然だろう。
渋い面持ちで少し考えていたジルも同じ結論に辿り着いたのか、溜息を吐き出しながら頷いた。
「そうだな。元はあちら側からの依頼で向かうわけだし、マティアスはミカを大事に思っているから、事情を話せば協力してくれるだろう。アイツだって、王都で問題を起こされたくはないはずだしな」
「マティ様は、ジルのことだってすごく心配して大事に思ってくれてるよ。だから協力してくれるって部分はあると思う」
「……ああ、そうだな。アイツにも感謝はしている」
サラリと口に出されたそれは、ジルの本音なんだろう。でも、それを素直にマティ様に伝えることは、魔王の立場的に難しいのかもしれない。
──もしも、いつかジルが魔王の魂から解放されたとして、もし、人間として生きる未来が少しでも残されていたとしたら。ジルとマティ様はきっと、心置きなく笑い合える親友になるに違いない。そんな日が来てくれるように願い、祈りながら、これからの日々を慎重に乗り越えていかなければ。
僕が胸の内で改めて決意を固めている間に、カミュは更なる計画を語り始めた。
「感謝祭当日は、念のために、ノヴァユエにこの城に待機してもらいます。既に話はつけてありますし、今のあの子はもう、ジル様と二人きりにしても危険な言動はしないはずです。それに、万が一、ノヴァユエが何か問題行動を起こすようでしたら、私が一瞬にして戻り、一瞬で叱り飛ばし、一瞬でまた王都の側まで戻れますから」
カミュは冗談ではなく真面目に言っているし、実際、特級悪魔である彼は、その程度のことは難なくこなせるのだろう。ノヴァユエが彼の持ち場を離れてもいいのか尋ねようとしたけれど、そういえば今は彼の下に見習いの魔の者がついているため一日程度は不在にしても大丈夫だった、と思い出した。
「ジル様に異変があれば、私はミカさんを王都に残して城へ戻らねばなりません。その間、ミカさんをマティアス様の元へ置き去りにしなくてはなりませんが、あの王子様は何としてもミカさんを守ろうとなさるでしょうし、クックとポッポもいますから大丈夫でしょう。──その後のことは、ジル様次第になってしまいますが」
カミュが気遣いの視線をジルに向けると、魔王はその眼差しをしっかりと受け止めつつ、穏やかに頷く。
「分かっている。……俺は、最後まで諦めない。もしものときは、ミカがまたここへ『ただいま』と戻って来られるように、それを『おかえり』と迎え入れられるように、全力で抗おう」
僕たち三人は覚悟を込めた視線を交わし合い、二羽の魔鳥も何かを察したのか窓辺でキュイッと声を合わせて高らかに鳴いていた。
「ああ、そうだな。俺は角だけ隠せれば、普通の人間と大差ないから、王都の近くまで行っても問題無いと考えていた」
王都の出入口としていくつか門があるようだけれど、角を隠したジルであれば人混みにも上手く紛れられるだろうからということで、マティ様が楽に迎えに来てもらえるように大正門の近くの森で落ち合おう──という話になっていた。
「それに関してですが、もう少し王都から離れた……、もしくは、感謝祭の主会場からは遠ざかるかもしれませんが裏手のほうから落ち合えないでしょうか。私の羽も祭の衣装に隠そうと思えば隠せますが、人目が多かったり照明が眩しい場所ですと誤魔化しが効かないかもしれません」
「……つまり、マティアスの負担を増やさざるをえないというわけか」
「ええ。平たく言えば、そうなります。……ですが、今回のミカさんはあくまでも『マティアス様が逢瀬を心待ちにしている相手』という設定の存在です。恋仲だと誤解させるのも吝かではないのなら、マティアス様がはるばるお迎えに参上したところで不自然ではないでしょう」
確かに、流石に僕一人で王都へ向かうのは色々な意味で無理がある。暴走化を考慮してジルに城に残ってもらうのであれば、必然的にカミュに送迎を頼むことになるんだ。その場合、彼が「悪魔」だと分からないようにしなければならない。マティ様の協力を仰ぐことは必然だろう。
渋い面持ちで少し考えていたジルも同じ結論に辿り着いたのか、溜息を吐き出しながら頷いた。
「そうだな。元はあちら側からの依頼で向かうわけだし、マティアスはミカを大事に思っているから、事情を話せば協力してくれるだろう。アイツだって、王都で問題を起こされたくはないはずだしな」
「マティ様は、ジルのことだってすごく心配して大事に思ってくれてるよ。だから協力してくれるって部分はあると思う」
「……ああ、そうだな。アイツにも感謝はしている」
サラリと口に出されたそれは、ジルの本音なんだろう。でも、それを素直にマティ様に伝えることは、魔王の立場的に難しいのかもしれない。
──もしも、いつかジルが魔王の魂から解放されたとして、もし、人間として生きる未来が少しでも残されていたとしたら。ジルとマティ様はきっと、心置きなく笑い合える親友になるに違いない。そんな日が来てくれるように願い、祈りながら、これからの日々を慎重に乗り越えていかなければ。
僕が胸の内で改めて決意を固めている間に、カミュは更なる計画を語り始めた。
「感謝祭当日は、念のために、ノヴァユエにこの城に待機してもらいます。既に話はつけてありますし、今のあの子はもう、ジル様と二人きりにしても危険な言動はしないはずです。それに、万が一、ノヴァユエが何か問題行動を起こすようでしたら、私が一瞬にして戻り、一瞬で叱り飛ばし、一瞬でまた王都の側まで戻れますから」
カミュは冗談ではなく真面目に言っているし、実際、特級悪魔である彼は、その程度のことは難なくこなせるのだろう。ノヴァユエが彼の持ち場を離れてもいいのか尋ねようとしたけれど、そういえば今は彼の下に見習いの魔の者がついているため一日程度は不在にしても大丈夫だった、と思い出した。
「ジル様に異変があれば、私はミカさんを王都に残して城へ戻らねばなりません。その間、ミカさんをマティアス様の元へ置き去りにしなくてはなりませんが、あの王子様は何としてもミカさんを守ろうとなさるでしょうし、クックとポッポもいますから大丈夫でしょう。──その後のことは、ジル様次第になってしまいますが」
カミュが気遣いの視線をジルに向けると、魔王はその眼差しをしっかりと受け止めつつ、穏やかに頷く。
「分かっている。……俺は、最後まで諦めない。もしものときは、ミカがまたここへ『ただいま』と戻って来られるように、それを『おかえり』と迎え入れられるように、全力で抗おう」
僕たち三人は覚悟を込めた視線を交わし合い、二羽の魔鳥も何かを察したのか窓辺でキュイッと声を合わせて高らかに鳴いていた。
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