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第一章 朝日奈馨
フリーダム
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ここに来てから見慣れたものは一つとして見たことがない。美術館の入口には僕の身長の倍はある彫刻が出迎えてくれた。右の男は矛を。左の男は楯を持っていた。矛楯といった簡単な対比だろうとあまり深く考えず通り過ぎた。ただ両端にシンメトリーに配置されたそれらはどことなく来訪者に強い威圧感を与えている気もしたが気のせいだろう。僕は屈強な大男たちに臆することなくフロントまで一直線に歩いていった。
「入場券はどこで購入できるのですか?」
と尋ねるとフロントマンは隣にある券売機を指差し
「あちらで購入できますよ。今は朝日奈馨さんの作品が飾られてるのでおすすめですよ。」
とニコニコと愛想よく答えた。僕が口コミ評価をネット上に書く人間なら間違いなく星五と店員の対応が良すぎるとコメントまで残していただろう。でも俺はそんな面倒なことはしたくないので今回は店員からしたらせっかくいい接客をしたのに残念だったと言えるだろう。
「っと学生はと...二千円か」
内心ちょっと驚いている自分がいた。田舎の美術館なんて五百円だったのに!!いや、僕が行っていたのは美術館ではなく公民館か。。。美術館ならこの値段は納得だな。券売機に僕のなけなしの二千円が飲まれていく。これから得れる新しいインスピレーションの投資だと思えば安いもんか。いやそれでも二千円は......と葛藤していると機会が一枚の紙をはき出した。紙を手に取り僕は美術館の内部へと進んでいった。
中は薄暗く少し冷たい空気を纏っている。壁一面に並んだ無数の作品。その上からミニライトで照らし、絵のみが強調されるようになっている。BGMも落ち着いたスローテンポで鑑賞にとても向いている。なんといっても飾られている作品どれもが有名なものばかりだ。伊藤茂雄の「群れ」人間、動物、植物、荒廃した建造物すべてが同じ画角に收まっているまさに楽園のような場所。彼自身、宇宙に生かされているものは皆平等でなければならないという強い思想を持っており絵の中に自分の理想像として書き写したと述べている。
だがやはり僕はどこか気に入らない。この絵が茂雄さんを真に表現しているのか強くは言えないが何かに縛られているように見える。単なる僕の勘違いかもしれないけど「フリーダム」ではないと思うんだ。どこか何かを気にして描いているようなそんな気がしてしまう。もちろんこの作品も凡人では思いつかないだろう感性を持っている。と素人目でもわかるほどの素晴らしい作品だ。
けれども朝日奈馨以上の感動をここで覚えることは出来なかった。
一通りこの部屋の作品には目を通したが僕のビーナスはここにはいないらしい。奥の方に漆で塗られた真っ黒な扉がある。この扉の先には何があるんだろう。
そんな好奇心が僕の全身を操った。
「入場券はどこで購入できるのですか?」
と尋ねるとフロントマンは隣にある券売機を指差し
「あちらで購入できますよ。今は朝日奈馨さんの作品が飾られてるのでおすすめですよ。」
とニコニコと愛想よく答えた。僕が口コミ評価をネット上に書く人間なら間違いなく星五と店員の対応が良すぎるとコメントまで残していただろう。でも俺はそんな面倒なことはしたくないので今回は店員からしたらせっかくいい接客をしたのに残念だったと言えるだろう。
「っと学生はと...二千円か」
内心ちょっと驚いている自分がいた。田舎の美術館なんて五百円だったのに!!いや、僕が行っていたのは美術館ではなく公民館か。。。美術館ならこの値段は納得だな。券売機に僕のなけなしの二千円が飲まれていく。これから得れる新しいインスピレーションの投資だと思えば安いもんか。いやそれでも二千円は......と葛藤していると機会が一枚の紙をはき出した。紙を手に取り僕は美術館の内部へと進んでいった。
中は薄暗く少し冷たい空気を纏っている。壁一面に並んだ無数の作品。その上からミニライトで照らし、絵のみが強調されるようになっている。BGMも落ち着いたスローテンポで鑑賞にとても向いている。なんといっても飾られている作品どれもが有名なものばかりだ。伊藤茂雄の「群れ」人間、動物、植物、荒廃した建造物すべてが同じ画角に收まっているまさに楽園のような場所。彼自身、宇宙に生かされているものは皆平等でなければならないという強い思想を持っており絵の中に自分の理想像として書き写したと述べている。
だがやはり僕はどこか気に入らない。この絵が茂雄さんを真に表現しているのか強くは言えないが何かに縛られているように見える。単なる僕の勘違いかもしれないけど「フリーダム」ではないと思うんだ。どこか何かを気にして描いているようなそんな気がしてしまう。もちろんこの作品も凡人では思いつかないだろう感性を持っている。と素人目でもわかるほどの素晴らしい作品だ。
けれども朝日奈馨以上の感動をここで覚えることは出来なかった。
一通りこの部屋の作品には目を通したが僕のビーナスはここにはいないらしい。奥の方に漆で塗られた真っ黒な扉がある。この扉の先には何があるんだろう。
そんな好奇心が僕の全身を操った。
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