落ちこぼれ令嬢は王子に溺愛される

ニチカ

文字の大きさ
3 / 3

第三話

しおりを挟む
「うん。そう。一目惚れだよ」

 照れくさそうに笑いながらルークはそう言った。表情の筋肉は緩んで、茶髪にソバカスのために、かなり幼いように見える。
 舞踏会で少し会っただけなのに家までやってきて会いに来たり、会って歩いて少しであんなに心を許している様子に、その予感は感じていた。でもそれがまさか現実になることがあり、恋愛感情という物が自らに向いてくるなんてことがあるだなんてアンナは全く思っていなかった。
 思わずアンナは俯いて、白色の髪を耳にかけた。

「よく、分からないです。もっと恋愛感情というものは、段階を踏んで、場数があって、発生する事象だと思っていたので。そして私自身そういう体験を今までしたことがありませんので、それが本当に、その私で合っているというか、私なんかでよろしいのかというか」

 今までにない緊張と、高揚感によってか、アンナは今までになく饒舌になった。先ほどまでルークの様子を観察して、考えて物事を話していたために、ルークは驚いて目を丸くしている。

「いろいろ、すっとばしすぎたよね。なんかごめん」

 硬直したまま、両手を握りしめているアンナの横を通り過ぎてルークはアンナの家の方へと歩き出した。

「でも、ちょっと考えておいてくれると嬉しいんだよね」
「あれ?」

 先を歩いていても、中々アンナが背中を追いかけてくる気配がしないので、振り返ってみると、アンナは未知の真ん中で、膝を抱えて座り込んでいた。

「え!?ちょっと、大丈夫!?」

 急いで駆けつけて、肩を軽くゆすってみると、アンナはぐったりとルークの方へ寄りかかった。肩を上下させて息をして、頬や額は赤くなっている。

「久しぶりに外に出たので…めまいが」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 次に目を覚ました時アンナは、天井と右にはミランダの姿があった。ミランダはアンナが起きたことが分かると、読んでいた本を閉じて、大きくため息を吐いた。

「なんで貴方は、殿下におぶられて帰ってくるわけなのよ。お母様にバレなかったからよかったものを」

 そう言って頭を抱えるミランダを見て、アンナは申し訳なく思った。あの場にいたのはルークだけだったわけで、背負われて連れ帰られたのも何となくアンナの記憶の中に残っている。
 する唐突に部屋の扉がノックされた。ミランダが開けてみると、そこにはピンク色のワンピースを着たキャロルが立っていた。

「アンナちゃん、大丈夫ですか?」
「今起きたところよ」
「よかった。ちょっと話せますかね」

 ベッドから上半身を起こしてアンナは頷いた。

「どうぞ、入って」

 ミランダは、キャロルのことを部屋へ入れ、外へ出た。

「ゆっくりしていってね」
「はい!」

 部屋の扉が閉められて、ミランダの足音がどんどん遠ざかっていくと、キャロルは可愛らしいにっこりとした表情をする事をやめ、椅子に座った。
 しばらく沈黙が続いたのでアンナは、どんな言葉を掛ければいいのか分からなかった。
 
「どうしたの」

 異質なキャロルの雰囲気を察したアンナは布団を握りしめた。

「なんで、殿下と一緒だったの?」

 にっこりと笑ったままでキャロルはたずねた。
 その時、アッと分かってしまった。キャロルは今自分に嫉妬しているのだ。雰囲気だけで分かる。今までずっと感じてきたから。
 だから、返答の仕方は慎重でなくてはいけない。

「舞踏会で、イヤリングを落として、届けてくれた」
「じゃあ私もハンカチ一枚でも殿下の目の前で落としてくればよかったなぁ」

 そう口をとんがらせてキャロルは言ったのだけれども「なーんて」と声色を変えると、にっこりとした表情から一変し、アンナのことを冷ややかに見た。

「イヤリング落としたぐらいで、王族と関係持てるなら、苦労しないし。ほんと、意味わかんない。ていうかアンナって、アクセサリー付けないじゃんあの日だってつけてなかった。なんでそんなバレバレな嘘つくの?」

 前のめりになってキャロルは自慢の金髪を指に巻き付けた。

「ねえねえ、ちょっとは殿下と仲良くなったわけなんだよね?」
「え?」
「私も殿下と仲良くなりたいなあ」

 ニヤリとキャロルは笑った。

「アンナに王子なんて、釣り合わないし、絶対私の方が良いでしょ。それにアンナには気が重すぎるよ」

 はっきりと美少女にそう言われてしまうと、アンナもそんな気がしてきてしまう。キャロルは責め立てるように、アンナの手を握りしめた。

「それにさ、今まで舞踏会に居場所なんかなかったのに、優しくしてあげたのは私だけだよね?舞踏会で優しくした分の恩返しってことで、殿下と私のキューピットになって!」
「私、殿下とそんな関係じゃない。そんなことできないから」

 手を離そうと、キャロルから距離を取ろうとしたのだけれども、キャロルはアンナの手を強く握りしめて離さない。

「ただ私と殿下の間を取り持ってくれればいいだけだよ。他にしてほしい事なんてないんだから。だからね」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?

由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。 皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。 ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。 「誰が、お前を愛していないと言った」 守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。 これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...