見つけてよ。

茉莉花 香乃

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田丸の熱を思い出し、余計に顔が熱くなる。

「ほら、歩ける?」

僕の腰に手を回し、がっちりホールドしたまま歩き出した。姫抱きの次に恥ずかしいんじゃないか、これ!自習室の方ではザワザワと野次馬が騒いでいる。その視線がこちらに向かないように、抵抗はやめた。振りほどけないなら、人目のない場所に行きたかった。

田丸の部屋に着くと、迷わず寝室のドアを開けた。カチャリと鍵のかかる音がする。

「た、田丸?」
「朗」
「へ?」
「伊月、朗だよ。朗って呼んで」
「どうして?」

次に何か言う前に手を引かれ、肩を押され、ベッドに座ることになる。田丸は僕の前にひざまづき、両手で僕の手を包む。

「伊月、聞いて」
「な、何?」
「まず、謝らせて欲しい」
「う、うん」

真剣な表情で、有無を言わせない雰囲気がある。僕は言葉少なに、頷くことしかできなかった。

「一年の最初、強姦紛いの行為で伊月を傷付けたこと、ごめんなさい」

手を包んだまま、頭を下げる。

「うん。それは、もう、良いよ」
「良くない。あれが…森山が言ってた、ごじれる原因になったんだ」
「……うん、わかった。謝罪を受け入れます」

真剣な田丸には、こちらも真摯に向き合わないといけない気がした。

「ありがとう。……伊月、改めて……、好きなんだ」
「えっ……嘘…」

涙が一粒ポロリと溢れた。

「どうして嘘を言う必要がある?」
「だっ、て……好きな、子がいる、って…聞いたから。僕、もう、諦めなきゃって……どんどん、好きになるから、もう、ダメだって…」
「伊月、今の、ホント?」
「今の?……!あっ、嘘」
「いいや、ちゃんと聞いたからな。伊月、キス、しても良い?」

動揺している僕にも理解できるように、ゆっくり、はっきりと思いを口にする。

「でも…」
「伊月が嫌ならしない。ホントは今すぐにでもキスしたいし、抱きたい。でも、我慢する。伊月、好きなんだ。何度も言おうと思った。けど、言った途端、セフレを解消されるんじゃないかって思うと、なかなか言い出せなかった」
「うん」
「何度も、名前を呼びたいって、キスしたいって思ったよ。抱きしめるのは……良い?」
「うん…うん。朗、抱きしめて」

田丸の腕の中は温かい。胸に顔を埋めて、涙を吸わせた。汚れたって良いよね。一年間僕をもてあそんだ分だよ。自分から関係を持ちかけたことは……うん、忘れよう。

もっと近づきたくて背中に両腕を回した。すると田丸が僕を抱き上げ、自分がベッドに座り僕を膝の上に座らせた。胸と胸がぴたりと合わさり、嬉しすぎてまた泣けてくる。田丸の肩に頭を預け、離れてしまわないように再び両腕を背中に回した。髪を梳く優しい指先にうっとりする。

「伊月、あの時言っただろ?」

夢見心地で耳に直接入る愛しい田丸の声を聞く。

「『こんなことは、本命とシタ方が良いって』俺は伊月が本命だった。だから、そうだって言ったんだ。これはもう、伊月が好きだって言わなきゃって思った。何もしなくてもあの関係が終わってしまうなら、気持ちを伝えようって。でも、伊月は何も聞いてくれなかった」
「ご、ごめん…」
「伊月が謝らなくて言い。全部、俺が悪いんだから」
「で、でも…僕…、僕がセフレって」
「俺さ…伊月は、誰でも良いからって理由で俺にセフレを持ちかけたんじゃないって思ってた…いや、思いたかった。伊月はそんな軽い男じゃないって。最近森山と仲良かったし、頻繁に部屋に入って行くからさ、……ちょっと、心配してたんだけど…」
「あ、あれは、勉強、教えてって言われて…。でも、何で知って、る?」
「うん。最近の俺、伊月のストーカーだったから。ごめん…」
「じゃ、じゃあ、不自然にB組の前、通ってたのって…」
「ああ、やっぱりバレてた?」

カァッと顔に熱が集まる。どうしてストーカーだと言うこいつが恥ずかしげもなく堂々としているのに、された方の僕がこんなに恥ずかしいのか?

「そのことは森山からも聞いたし、さっきも言ってたから」
「さっき?」
「伊月が巻き込まれたんじゃないかって思った時」
「うん」
「俺さ、最初は投げやりな感じだったけど、でも、最初から伊月に惹かれてた。軽い奴って思う?」
「ううん…」
「伊月は優しいな。俺は自分が情けないよ…。何度も肌を合わせるうちに、どんどん好きになった。もともと、伊月の事は嫌いじゃなかった。どちらかと言えば好感は持ってた。だから、あの時…」
「もうその話はいいよ」
「そうか?そうだよな…ごめん、とにかく、ベッドの中の伊月と教室の伊月のギャップが凄いキタ。さっき、事件に巻き込まれたんじゃないかって思った時、焦ったよ。拒否されても、自分の気持ちはキチンと伝えとかないと、後悔すると思った。伊月、好きだよ」
「うん…ありがと。僕も…」
「一年間、こんな酷い俺を、嫌いにならずにいてくれて、ありがとう」
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