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第二章
04
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ひとひら、はらりと落ちて波紋を描くのがわかった。
「無視するなら教えたりしないだろう?」
『そか…そうだよな』
ふふっと笑う電話の向こうはザワザワしている。
「郁己?もう、家出てるのか?」
『そうだけど?』
「もう、学校か?」
まだ七時前だ。
出かけるには早すぎるだろ?部活でもしてるのか?朝練とか?あんな時間に公園にいてたから部活なんか入ってないんじゃないか?バイトもしてるしな。
『今、マンションの前にいるんだけど…入っていい…?』
「ここに?」
『うん…昨日のとこにいるんだけど…』
お邪魔しますと小さな声で言いながら入って来た。
不思議な感じがした。昨日の夜はイレギュラーだったからカウントに入れないとして、恋人も自宅に入れたことはなかった。
昨夜のをカウントしても郁己だけになる。
「俊一さん、いつもつまみと酒しか買ってないだろ?朝は食べないの?」
制服を着て、制カバンとレジ袋をガサガサ言わせながらリビングでキョロキョロ部屋を見回す。
「そうだな、食べたくない訳じゃないけど、邪魔くさい」
「買ってきたんだ…一緒に食べよ?」
「俺の分も?」
「うん…迷惑だった?」
「何時にここを出れば間に合う?」
「えっ?」
「学校だよ」
「七時半…」
「そか…コーヒーで良いのか?何買ってきた?お茶か?」
「一緒に食べてくれるの?」
「ああ、だけど遅刻したらダメだからな」
「うん」
俺も七時半で間に合う。
あまりゆっくりはしてられない。今日は起きるのが遅かった。あの電話がなければ久しぶりに寝過ごすところだった。
「俺がするよ」
コーヒーを淹れようとすると豆を取り上げる。
「着替えてきてよ」
リビングから追い出された。
ワイシャツとスラックスを身に付け、ネクタイと上着を持ってリビングに戻った。通り越して、洗面所へ行きうがいをする。水道水で二回。
新しい歯ブラシを用意して、再びリビングに戻った。
お皿にサンドイッチを並べ、プラスチック容器に入ったサラダとマグカップにコーヒーが湯気を立てる。
「いただきます」
郁己が両手を合わせ目を瞑る。
小さな頃から一人での食事が多かったし一人暮らしも長いせいか、手を合わせていただきますなんて言ったのはいつぶりだろうか?
郁己に倣って手を合わす。
「いただきます」
俺をじっと見つめる郁己を見返すとクスクスと笑う。
「早く食べないと間に合わないぞ?」
「うん」
手を合わせた左の手首に包帯はなかった。絆創膏が二重に貼られている。その周りにかすかに火傷の痕が見えた。昨日今日の火傷ではなさそうだ。この痕を隠すために包帯を巻いていたのだろうか?
昨夜はベッドで寝ている時も、送って行った時も気にならなかったな…。包帯は巻いてなかった。
牛乳もましてやコーヒーフレッシュなんて置いてない。砂糖も料理に使うものしかない。その砂糖を少し多い目に入れてこれなら飲めると笑顔を見せる。
サンドイッチを美味しそうに食べる郁己は幸せに育ったように見える。暗さは感じられなかった。じゃあ、なぜおばあさんと一緒に住んでるのに俺と一緒に朝食を食べるのか?
「ご馳走様でした」
「歯を磨けよ。歯ブラシ、置いといたから」
「う、うん。ありがと」
郁己の後で歯を磨き、髭を剃って一緒に部屋を出た。
「じゃあな」
「うん…。行ってらっしゃい」
「ああ、行ってきます。…郁己、行ってらっしゃい。勉強頑張れよ」
「…うん。行ってきます」
返事する顔は笑ってた。
「無視するなら教えたりしないだろう?」
『そか…そうだよな』
ふふっと笑う電話の向こうはザワザワしている。
「郁己?もう、家出てるのか?」
『そうだけど?』
「もう、学校か?」
まだ七時前だ。
出かけるには早すぎるだろ?部活でもしてるのか?朝練とか?あんな時間に公園にいてたから部活なんか入ってないんじゃないか?バイトもしてるしな。
『今、マンションの前にいるんだけど…入っていい…?』
「ここに?」
『うん…昨日のとこにいるんだけど…』
お邪魔しますと小さな声で言いながら入って来た。
不思議な感じがした。昨日の夜はイレギュラーだったからカウントに入れないとして、恋人も自宅に入れたことはなかった。
昨夜のをカウントしても郁己だけになる。
「俊一さん、いつもつまみと酒しか買ってないだろ?朝は食べないの?」
制服を着て、制カバンとレジ袋をガサガサ言わせながらリビングでキョロキョロ部屋を見回す。
「そうだな、食べたくない訳じゃないけど、邪魔くさい」
「買ってきたんだ…一緒に食べよ?」
「俺の分も?」
「うん…迷惑だった?」
「何時にここを出れば間に合う?」
「えっ?」
「学校だよ」
「七時半…」
「そか…コーヒーで良いのか?何買ってきた?お茶か?」
「一緒に食べてくれるの?」
「ああ、だけど遅刻したらダメだからな」
「うん」
俺も七時半で間に合う。
あまりゆっくりはしてられない。今日は起きるのが遅かった。あの電話がなければ久しぶりに寝過ごすところだった。
「俺がするよ」
コーヒーを淹れようとすると豆を取り上げる。
「着替えてきてよ」
リビングから追い出された。
ワイシャツとスラックスを身に付け、ネクタイと上着を持ってリビングに戻った。通り越して、洗面所へ行きうがいをする。水道水で二回。
新しい歯ブラシを用意して、再びリビングに戻った。
お皿にサンドイッチを並べ、プラスチック容器に入ったサラダとマグカップにコーヒーが湯気を立てる。
「いただきます」
郁己が両手を合わせ目を瞑る。
小さな頃から一人での食事が多かったし一人暮らしも長いせいか、手を合わせていただきますなんて言ったのはいつぶりだろうか?
郁己に倣って手を合わす。
「いただきます」
俺をじっと見つめる郁己を見返すとクスクスと笑う。
「早く食べないと間に合わないぞ?」
「うん」
手を合わせた左の手首に包帯はなかった。絆創膏が二重に貼られている。その周りにかすかに火傷の痕が見えた。昨日今日の火傷ではなさそうだ。この痕を隠すために包帯を巻いていたのだろうか?
昨夜はベッドで寝ている時も、送って行った時も気にならなかったな…。包帯は巻いてなかった。
牛乳もましてやコーヒーフレッシュなんて置いてない。砂糖も料理に使うものしかない。その砂糖を少し多い目に入れてこれなら飲めると笑顔を見せる。
サンドイッチを美味しそうに食べる郁己は幸せに育ったように見える。暗さは感じられなかった。じゃあ、なぜおばあさんと一緒に住んでるのに俺と一緒に朝食を食べるのか?
「ご馳走様でした」
「歯を磨けよ。歯ブラシ、置いといたから」
「う、うん。ありがと」
郁己の後で歯を磨き、髭を剃って一緒に部屋を出た。
「じゃあな」
「うん…。行ってらっしゃい」
「ああ、行ってきます。…郁己、行ってらっしゃい。勉強頑張れよ」
「…うん。行ってきます」
返事する顔は笑ってた。
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