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第三章
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母さんが死んだのは俺が五歳の時だった
あまり覚えていない
病気で死んだと思ってた
そう聞いてた
父さんが死んだのは俺が中学の時だった
調理師の父さんは身体を悪くして仕事をやめなければならなくなった
病院に通いながら俺の食事の準備だけはきちんとしてくれた
あっけなかった
病気になって半年
入院や手術をすればもっと長生きできたのか?
父さんが亡くなってから、ばあさんが母さんの悪口を言うようになった
叔母さん…父さんの妹と一緒になって母さんの悪口を言う
ある日、叔母さんが家の金を持ち出すのを見た
「あんた何、睨んでんだよ。ここは私の実家なんだから良いんだよ」
別に睨んでなんかない
後ろめたさからくる暴言か?
ばあさんが叔母さんに金を渡してるのも見た
俺の分の食事はなかった
おじいちゃんが元気ならばあさんを叱ったかもしれないけど、二年前から寝たきりだ
別に良かった
これで買ってこいと金を渡される
自分の分だけ米を炊き、おかずを作る
自分の部屋で食べた
おじいちゃんが心配だったけど、ばあさんもおじいちゃんの世話だけはきちんとしているみたいだった
邪魔くさい時はパンを買う
高校に入るとバイトをした
途端に俺に金を渡すのが惜しくなったのか自分で稼いでるならいらないなと言う
高校には通わせてやってるんだと言う
大人は誰も俺を気にしない
誰も俺を見ない
◇◇◇◇◇
俊一さんのマンションで一緒に朝食を食べるようになって二週間がたった。
土日は流石に迷惑かと思いやめた。
続けて朝に突撃した日、別れ際に呼び止められた。
「これで、買って来い」
見ると、一万円札だった。
「こんなの要らない」
お金を出してもらいたくてここに来ている訳じゃない。俊一さんは朝ごはんを食べる習慣がなかったのか少し食べるだけだった。
「いいから。俺を高校生に奢らせるような奴にしないでくれよ」
そう言って、受け取るまで引いてはくれなかった。
お茶やコーヒーは俊一さんが買ってるものを飲んでる。
最初の日に缶コーヒーも買ってたんだ。けど、温かい方が良いだろうし、何より一緒に食べるのを認めてもらえたみたいで嬉しくって、俊一さんが着替えに寝室に入った隙にカバンに押し込んだ。
少しずつ俺の物が増える。
最初の日の歯ブラシ。
百均で買ったマグカップとお箸。
夜はバイトが22時まである。それから一緒に晩御飯を食べるより朝の方が良いと思ったんだ。
迷惑じゃないかな?
そんなことは考えない。
嫌なら鍵なんか渡してくれない。
突撃二週目の朝、テーブルに鍵が置いてあった。食べてる時に何も言ってくれない。気になるけど、聞けなかった。
歯を磨き一緒に玄関に立つ。スーツ姿の俊一さんはかっこいい。私服は見たことなかったけど、きっとおしゃれなんだろう。
「これ」
差し出された物はさっき気になった鍵だった。
「開けるの邪魔くさいからさ…」
少し照れてる俊一さんは頭をぽりぽりと掻きながら俺の手に鍵を押し付けた。
あまり覚えていない
病気で死んだと思ってた
そう聞いてた
父さんが死んだのは俺が中学の時だった
調理師の父さんは身体を悪くして仕事をやめなければならなくなった
病院に通いながら俺の食事の準備だけはきちんとしてくれた
あっけなかった
病気になって半年
入院や手術をすればもっと長生きできたのか?
父さんが亡くなってから、ばあさんが母さんの悪口を言うようになった
叔母さん…父さんの妹と一緒になって母さんの悪口を言う
ある日、叔母さんが家の金を持ち出すのを見た
「あんた何、睨んでんだよ。ここは私の実家なんだから良いんだよ」
別に睨んでなんかない
後ろめたさからくる暴言か?
ばあさんが叔母さんに金を渡してるのも見た
俺の分の食事はなかった
おじいちゃんが元気ならばあさんを叱ったかもしれないけど、二年前から寝たきりだ
別に良かった
これで買ってこいと金を渡される
自分の分だけ米を炊き、おかずを作る
自分の部屋で食べた
おじいちゃんが心配だったけど、ばあさんもおじいちゃんの世話だけはきちんとしているみたいだった
邪魔くさい時はパンを買う
高校に入るとバイトをした
途端に俺に金を渡すのが惜しくなったのか自分で稼いでるならいらないなと言う
高校には通わせてやってるんだと言う
大人は誰も俺を気にしない
誰も俺を見ない
◇◇◇◇◇
俊一さんのマンションで一緒に朝食を食べるようになって二週間がたった。
土日は流石に迷惑かと思いやめた。
続けて朝に突撃した日、別れ際に呼び止められた。
「これで、買って来い」
見ると、一万円札だった。
「こんなの要らない」
お金を出してもらいたくてここに来ている訳じゃない。俊一さんは朝ごはんを食べる習慣がなかったのか少し食べるだけだった。
「いいから。俺を高校生に奢らせるような奴にしないでくれよ」
そう言って、受け取るまで引いてはくれなかった。
お茶やコーヒーは俊一さんが買ってるものを飲んでる。
最初の日に缶コーヒーも買ってたんだ。けど、温かい方が良いだろうし、何より一緒に食べるのを認めてもらえたみたいで嬉しくって、俊一さんが着替えに寝室に入った隙にカバンに押し込んだ。
少しずつ俺の物が増える。
最初の日の歯ブラシ。
百均で買ったマグカップとお箸。
夜はバイトが22時まである。それから一緒に晩御飯を食べるより朝の方が良いと思ったんだ。
迷惑じゃないかな?
そんなことは考えない。
嫌なら鍵なんか渡してくれない。
突撃二週目の朝、テーブルに鍵が置いてあった。食べてる時に何も言ってくれない。気になるけど、聞けなかった。
歯を磨き一緒に玄関に立つ。スーツ姿の俊一さんはかっこいい。私服は見たことなかったけど、きっとおしゃれなんだろう。
「これ」
差し出された物はさっき気になった鍵だった。
「開けるの邪魔くさいからさ…」
少し照れてる俊一さんは頭をぽりぽりと掻きながら俺の手に鍵を押し付けた。
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